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出世する働き方が学べる 資本の論理の会社で働く損得 20代から考える出世戦略(7)

2017/5/9

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 「給与分は働け」と思っている経営者はたくさんいます。そういう会社では、給与分以上に働いたからといって、給与を大きく増やす評価の仕組みを採用していることは稀です。残業していれば残業代が出るでしょうが、効率的に結果を出した人が給与分以上の報酬を受け取れる仕組みを用意している会社は意外なほど少ないのです。

 もしあなたの会社がそうだとしたら、どうすれば効率的に報酬を受け取れるでしょう。

■資本の論理だけでは経営者の器以上に会社が伸びない

 前回の「給与を増やさないベンチャー社長 その『論理』とは? 」で紹介したような、資本の論理「だけ」で考えることがあたりまえの経営者のもとでは、なかなか給与は増えません。まず先に「給与分以上に働くこと」が求められるからです。

 そうして給与分以上に働いた場合ですが、経営者からしてみれば「やっと利益を生んでくれるようになった」と思うだけです。そして利益は会社のものなので、あえて従業員に配分しようと思いません。というよりも、利益を従業員に配分するということを想像すらできない経営者もいるのです。

 そのタイプの経営者は、嫌ならやめればいい、と従業員に対して常に思っています。だからデキる人や結果を出す人ほどさっさとやめてしまうので、資本の論理だけで経営をしていると、経営者が見れる範囲以上には会社は伸びません。これを経営者の器と言ってもいいのかもしれませんね。

 器の大きな経営者は、自分が見れる範囲が小さいということを知っています。だから従業員たちが自ら頑張って、常に給与分以上に働きたくなるような仕組みを工夫します。その一つに利益を配分する仕組み=人事評価制度もあるのです。人事評価制度を導入することで、経営者の器はさらに大きくなってゆくのです。

 ただ、多くの資本の論理だけの経営者がそのことに気づくには、税務署からたくさんの追徴を受ける、などのきっかけが必要なようですが。

■給与を増やす仕組みの無い会社でどう働くべきか

 では、器がまだ個人の範囲にとどまっている資本の論理の経営者と働くことは、損なことなのでしょうか?

 いえ、彼らのもとで働くことは、普通に働いていては得難い、大きな学びを与えてくれます。もしその学びを働く目的にできるのなら、数年間というように期間を定めて、昇給や賞与を目的とせずに働くことは有効です。

 というのも、成功したほとんどの経営者は、まず最初に必ず資本の論理でものを見る癖がついているからです。一方で、給与をもらう働き方しかしていないと、まず最初に従業員の働きがいとか満足度とかを考えてしまいます。それだけでは、たちまち行き詰ってしまうのです。

 実は「給与分以上に働いてもらう」という考え方は、経営者としては必須の考え方です。だからこそ、今の会社で出世するにも、転職してから出世するにも、あるいは独立したり起業したりして出世するにも、経営者の考え方を身に着けなければいけません。そのためには、身近にそういう考え方と行動をしている人と働くことが一番なのです。

 たとえば、「給与分以上に働け」という経営者からの要求を、自分一人に対するものとして理解するのではなく、会社全体に対する要求として理解してみれば、ただ頑張ればよい、ということではないことがわかります。

 ではそもそも「給与分以上に働く」とはどういうことでしょう。

■目の前のことに注力するだけでは難しい

 給与分以上に働くということは、少なくとも、給与以上の売り上げを生み出さなければいけないということがわかります。その上で、自分の給与とその他のさまざまな経費を差し引いても利益が残らなければいけないということがわかります。では具体的にどう考えることが、給与分以上の働きにつながるのでしょうか。

 たとえばテレアポ営業の会社で1時間、電話帳を見ながらアポイントのための電話をかけるとします。すぐに切られることも多いので、休まずかけ続けて1時間で40本の電話がかけられるとしましょう。そのうち、3分以上話せる人が2件だとします。

 3分以上話せた人のうち、10人に1人の割合でアポイントが取れるとすれば、5時間電話をかけ続けて、1件のアポイントがとれるということになります。

 このような場合、給与分以上の働きをするということは以下のどれでしょうか?

(1) 1時間の間にかけられる電話の本数を増やす。そのために、見込みのなさそうな相手の電話をすぐに切るなどの工夫をする。
(2) とにかく3分以上話せるように、電話を切らせないように話す。
(3) 1日10時間電話をかけて、1日あたり2件のアポイントを目指す。

 真面目に頑張るタイプの人は、おそらくこれらすべてをしっかりと頑張ろうとするでしょう。(1)を徹底するために、とにかく集中して電話をかけ続けます。また、(2)のために勉強もしっかりとするでしょう。そして(3)のように長時間勤務をあたりまえにしていきます。

 けれども、これらをしっかりやったとしても、給与分以上の働きにはなりづらいのです。むしろ、やっと給与分くらいの働きになった、と思われるくらいです。

■仕組みを3段階で変革してみる

 給与分以上の働きとは、仕組みそのものを変えてしまうような取り組みです。とはいえ、根底からの変革はなかなか難しいのも事実です。そこで、3段階での変革を考えてみることをお勧めします。

 第1段階は、各プロセスのクオリティーをあげることです。

 第2段階は、各プロセス間の掛け率を常に見るようにすることです。

 第3段階で初めて、やらなくても良いことを探してみましょう。

 これらは実は、今やっている仕事のあたりまえ、に疑問を持つことです。

 第1段階のプロセスのクオリティーとは、たとえばアポイントにつながるような話し方を探すことです。実は、1時間にかける電話の本数と、アポイントにつながりやすい3分以上の会話が続く電話とは、相反する関係にあります。しっかり5分話せる人とだけ話していたら、1時間にかけられる電話の本数はせいぜい10本となってしまいます。ここで1時間にたくさんの電話をかける、ということを考えてしまうと、どうしても電話の話がおざなりになります。

 つまり重要なプロセスは、アポイントにつながる電話であるということを理解して、そのための話し方や受け答えのレベルを高めていくことです。実際に多くのテレアポの会社では、そのための教育訓練は徹底していますし、自分の会話を録音しておいて、あとから聞き直すような取り組みもされています。

 第2段階のプロセス間の掛け率とは、成果につながるプロセスを分解して、それぞれの間の関係性を数値化することです。テレアポの例で言えば、電話をかける⇒3分以上の会話ができる⇒アポイントにつながる、というステップごとに、その割合を数値化します。ただし第1段階でわかるように、1時間あたりの電話本数を意識すると逆にクオリティーが下がります。ですからこの場合、1時間あたりの3分以上の会話ができた件数、3分以上の会話ができた件数のうちアポイントにつながった割合、をそれぞれ数値化します。

 人は数値が示されるとその指標を意識するようになります。結果として、自分だけでなく、テレアポに関わる全員が、これらの数値を意識した活動を行うようになり、少しずつ効率がよくなってゆきます。

 そうして第3段階で、さらに抜本的な改善を考えてゆきます。たとえば第2段階で数値化した各指標について、1日の中での効率を確認してみます。そうすると、確率が高いのが9時~11時半と、14時~16時、19時~21時だとします。この場合、確率が高い時間以外は電話をせず、研修や営業活動の時間にあてるなどして、効率化が図れます。その際に、テレアポ要員であっても、営業活動を覚えたい人や、経理事務を覚えたい人などに、複数の業務を覚えてもらうことも可能になってゆきます。

 このような段階を経て業務の品質を高め、改善し、売り上げや利益を増やしてゆくことで、みんなの仕事を楽にしながら、あなた自身が出世できる道筋が得られてゆくのです。

平康慶浩
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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