株式・投信

プロのポートフォリオ

仏選挙後もリスク 投資は長期で淡々と(窪田真之) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

2017/5/9

仏大統領選で当選を決め、勝利宣言するマクロン氏(7日、パリ)=浅原敬一郎撮影
「仏大統領選の結果によって、欧州連合(EU)崩壊の危機が遠のいたと考えるのは早計だ」

 仏大統領選は、マクロン氏勝利となりました。39歳という若さに加え、極右でも極左でもない「中道」の立ち位置が、フランス人にとって魅力的だったといえます。

 大統領選は、「国際協調」主義と「自国中心」主義の戦いだったともいえます。「フランス第一」を掲げ、「フランス版ドナルド・トランプ」といわれる国民戦線ルペン党首が敗れたのは、世界中に自国中心主義が広がる流れへの巻き返しとみることもできます。

 反欧州連合(EU)・反自由貿易・反移民を掲げるルペン氏が仏大統領に当選すれば、フレグジット(フランスのEU離脱)に向けて行動し、EU崩壊が加速する可能性がありました。世界経済が不安定化するリスクが回避されたことは金融市場にとって好材料といえます。

■EU崩壊の危機が遠のいたわけではない

 ただし、これでEU崩壊の危機が遠のいたと考えるのは早計です。EUにはなお解決不能の構造問題が多数残っており、反EU勢力が拡大する流れは簡単には止まらないと考えられます。EU加盟国の国民に広がる不満には2つの種類があります。

 一つは人の移動を自由にすることへの不満です。近年、欧州で移民によるテロが増加していることを受け、EU各国に反移民感情が広がっています。EUはシェンゲン協定によって、域内の人の移動を原則自由としています。EUに加盟しているせいで、移民難民が流入しやすくなっていると人々は不満を募らせているのです。

 もう一つはドイツやEU官僚に支配されていることへの不満です。EUではドイツが経済的に圧倒的に強く、他の諸国はみなドイツとEU官僚が決めたルールに支配されているとの不満を持っています。もっとも強い不満が、EUの命令によって緊縮財政を強制されることです。

 ギリシャでは、2015年1月に政権をとった急進左派連合のチプラス首相が「ギリシャ人の誇りを守るためにEUの求める緊縮策を拒絶する」と宣言しました。ところが、ギリシャは緊縮策をのまないとEUの金融支援が得られず、債務不履行(デフォルト)を起こしてEUから追い出されることになるので、最終的にチプラス首相は緊縮策を受け入れました。

 このため、ギリシャの債務危機はひとまず沈静化しました。ただし、緊縮財政による年金カットの受け入れなど、ギリシャ国民の不満は鬱積しています。ギリシャに限らず、スペイン、イタリア、ポルトガルなどドイツ以外のEU主要国は対外債務が過剰で、EUの指示によって緊縮財政を行っています。そうした国々で、反ドイツ・反EU感情が醸成されつつあります。

 出口の見えないEUの構造問題の元凶は何かと考えると、共通通貨ユーロに行き着きます。今になってみると、経済構造がまったく異なる欧州の国々が統一通貨を持つという構想には、無理があったといわざるを得ません。

■共通通貨ユーロに構造問題

 ギリシャの債務問題を悪化させたのはユーロです。ギリシャは01年に自国通貨ドラクマを廃止してユーロを採用しました。もしギリシャがEUに加盟せず、通貨ユーロを使用していなければ、通貨ドラクマは01年以降、経常赤字の拡大とともに対ユーロ・対ドルでじりじりと下落し続けたはずです。通貨が下落すれば、輸入インフレが引き起こされ、消費が抑えられます。一方、観光業、海運業など外貨を稼ぐ自国の産業は活性化します。経常赤字拡大→通貨下落→輸入減少・輸出活性化→経常赤字減少という「教科書的な為替調整機能」が働いていたはずでした。

 ところが、ドイツの信用で支えられた通貨ユーロは高止まりし、為替による調整機能が働きませんでした。ギリシャは経常赤字を拡大させても通貨安による輸入インフレに見舞われることがありませんでした。そのため、さらに経常赤字が拡大するという悪循環に陥りました。

株式・投信