「3.5合炊き」炊飯器、小さくおいしく 取り扱いも楽
これまで5.5合炊きが主流だった炊飯器の世界にダウンサイジングが起きている。3.5合タイプの高級機種が主流になりつつある。1世帯あたりの家族数が約2.5人に減ったことが大きな理由だ。高齢ユーザーの増加で、炊き加減の表示も従来の感覚より「やわらかめ」になっている。これら少量炊き炊飯器の特性と上手な活用法を探った。
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「米が主食」の日本だが、朝食はパンを食べる人が増えるなど、米へのニーズも時代で変化する。昔の代表銘柄米は「ササニシキ」。理由は比較的あっさりした味だったこと。炊き方はやや固め。
場所取らず 電気代も安く
その後「コシヒカリ」が市民権を得た。こちらは味がやや濃厚。洋食系のおかずにも負けない味だ。そして今、どの店でもコシヒカリはもとより「森のくまさん」等々、かなりの数の銘柄米が売られている。自分の好みの味をチョイスし、炊き方も銘柄や自分の好みに合わせるのが普通になった。現在の炊飯器は、多様な要望に応じられるようになっている。
家族構成も変わった。昔は両親と子ども2人の4人が標準。しかし今は1人世帯が増加。平均世帯人数は約2.5人。当然、食べる米の量も少なくなり、それに伴い、数年前まで5.5合炊きがメインだった炊飯器も状況が変わり、今では3.5合の炊飯器が脚光を浴び出した。
1日に1~2合食べる場合、3.5合炊きを使うメリットは大きい。スペースを取らないし、電気代が安く、しかもおいしい。5.5合炊きで1合炊くと、立ったお米3粒分の厚みしかない。それでもキレイに立たせて炊きあげるのはさすがだが、浅い水深で炊くわけで、ある程度の水深を確保できる3.5合炊きの方が同じ1合でも、より良い感じで炊ける。また米は1回食べきりがベストで、保温してもせいぜい24時間まで。少量の3.5合炊きは理にかなう。
そして今、高級炊飯器に使われている内釜と同じ素材が採用され始め、3.5合炊きの炊飯器のポジションが変わっているのだ。その方向性は「よりおいしく」である。
このメリットが一番大きいのは、内釜に鉄を選択しているメーカーだ。おいしいとされるお釜も鉄であり、熱伝導性、蓄熱性など炊飯に適した素材だが、5.5合サイズだと男手にも重いと感じることがあった。そうなると毎日使うのは厳しい。3.5合炊きであれば少し重いレベルですむ。
食卓や野外 持ち運び便利
これは米や水をセットする時だけではなく、使用後に内釜を洗う時もとても楽になる。また炊飯器を食卓に運んで米をよそう時にも便利だ。デザイン自体が優れている機種が多いので、食卓でも絵になりやすい。
当然、車での持ち出しも楽になる。野外バーベキューのしめの温かいご飯。これもかなり受ける。電気や水の配線があるオートキャンプ場が増えているので、昔と違って屋外炊飯は容易なのだ。
使い方のポイントは、最初にまず「ふつう」の炊き方で炊いてみて、ご飯のかたさを確認すること。今の時代、単身世帯はやはり高齢者が多い。このため昔でいう「やわらかめ」が実は「ふつう」のレベルになっていることが多い。固くするにはプログラムで「かため」を選んで炊いてみる。さらに固い方が望ましい人は、水を減らして調整するといい。
さて、こんなに良くなった炊飯器であるが、内釜のコーティングには気をつけたい。買い替え理由も内釜の破損が多いとのこと。洗う時にタワシなどでゴシゴシこするのはダメ。スポンジで対応するのがいい。
さて、新しく3.5合炊きを購入して余った5.5合炊きの炊飯器の使い道である。圧力鍋と同じとはならないが、豚の角煮他、結構いろいろな料理を作ることができる。ただこれはメーカーが想定した使い方ではないので、自己責任になるのを忘れずに。
(生活家電.com主宰 多賀一晃)
[日本経済新聞夕刊2017年4月22日付]
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