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半導体にブームの兆し 周期は株価で読め(窪田真之) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

2017/4/25

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「今、世界の株式市場は久々の半導体ブームに沸いている。だが、半導体サイクルを予想することは難しい」

 今、世界の株式市場は久々の半導体ブームに沸いています。半導体関連株が、米国でも日本でも軒並み、大きく上昇しています。このブームはいつまで続くのでしょうか?

 4~5年周期で好不況を繰り返す半導体業界ですが、今回は18年ぶりの世界的なブームになる兆しがあります。前回の大ブームは、IT(情報技術)バブルといわれた1999年に起きました。半導体の主用途は当時はパソコンでしたが、今回はスマートフォン(スマホ)、自動車、産業機器などへと広がっています。さらには全ての電子機器がインターネットにつながる「IoT」の動きもあります。これらがブームが来ると見る根拠です。

 前回のブームを株式市場の動きとともに振り返ってみましょう。99年当時はインターネットの登場でパソコン市場の成長期待が高まり、株式市場でIT関連株や半導体関連株が異常な高値まで買われました。ところが、後になってわかるのですが、それはバブルでした。パソコン需要が拡大したのは事実ですが、株式市場の期待が実体経済を上回るほど膨らんだため、2000年に入るとバブルが破裂したのです。

 過剰な設備投資も重荷となり、その後半導体産業は長期停滞(不況)局面に入りました。08年にリーマン・ショックが起こると、さらに落ち込みました。ただ、後になって考えると、その頃から半導体業界の大復活は始まっていたのです。

■波が大きい半導体産業

 20世紀はパソコンの成長とともに半導体産業も成長した時代でした。今、半導体業界は高機能化したスマホやタブレット端末が世界中で売られるようになり、半導体需要の伸びをけん引しています。クラウドコンピューティングの利用が増えていることから、データセンターでの需要も拡大しています。

 他の分野でも半導体需要が急速に増えています。自動車の高機能化が加速しており、自動車は半導体需要をリードする存在となりつつあります。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の、産業用機器などでの普及も需要を増加させています。

 では、この先行きブームはどうなるのでしょう? 私は26歳だった1987年に、当時勤めていた住銀バンカース投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)で日本株ファンドマネジャー兼アナリストになりました。そのとき、アナリストとして最初に担当したのが、半導体産業でした。

 87年は円高不況、半導体不況のさなかでした。半導体関連のさまざまな企業を往訪して取材した結果、半導体産業の復活は近いと考えました。そこで世界的にも高い技術力を有していた東芝について、600万株(当時の株価は600円前後)の買い推奨レポートを社内向けに書きました。予想は当たり、株価は上昇。投資のタイミングとしては絶妙でした。その頃の東芝は輝いていました。

 その後通算して25年間、私は日本株のファンドマネジャー兼アナリストをやりました。いろいろな業種を担当しましたが、常に半導体業界はウオッチしてきました。半導体産業は波の大きい産業です。誰もが強気で半導体は絶好調がいつまでも続くと思っているときに突然ピークアウトし、半導体不況が始まります。もう半導体産業は永遠に復活しないと思われている半導体不況の大底から、突然、急回復が始まります。

 いわゆるシリコンサイクルです。周期のピークとボトムがわかれば、急騰・急落する半導体関連株の売買タイミングがわかるので、アナリストは一生懸命分析をします。しかし、これがなかなか難しいのです。私はアナリストとして、いろいろ考えましたが半導体産業のピークとボトムを当てることはできませんでした。

■チャートから周期を予測

 そこでファンドマネジャーとしては違う方法で、半導体サイクルのピークとボトムを手探りしていました。毎週、半導体関連株の株価チャートをチェックし、なんだか理由はわからないが、一斉に関連株が下がり始めてきたら、とにかく一緒になって売るということを実践していました。相場格言でいう「相場は相場に聞け」というやつです。

 半導体株をウオッチしていると、専業アナリストがみな強気になっているときに、売りシグナルが次々と点灯していることがありました。半導体産業を25年以上見てきたアナリストとして、今の半導体産業の復活は喜ばしいことです。1~3月も日本製の半導体製造装置の受注は大きく伸びており、また半導体材料であるシリコンウエハーも品不足から値上がりが見込まれる状況です。そうした状況を反映して半導体関連株は上昇基調をたどっています。

 私は、ここから半導体関連株の業績は一段と回復し、株価も一段高になると予想しています。今のところ株価チャートが崩れる兆しもありません。

 だがこの先、業績がさらに良くなっても株価が上昇し続けるとは限りません。今後、半導体製造装置各社の18年3月期の業績見通しが出ると、良好な内容を反映して、予想PER(株価収益率)は低下し、株価も一段と上昇するかもしれません。しかしながら、私の過去の経験則ではPERが低下して株価が大きく上昇したところが、売り場となっていました。

 半導体ブームのさなか、いつまでもブームが続くと皆が思い込んでいるうちに半導体株が下がり始め、後から振り返ると、そこがブームのピークだったということもあります。

 東芝が経営難から、分社化した半導体会社を売らなければならない事態に陥っています。すべての持ち株を売るならば、2兆円以上の価格がつく可能性もあります。半導体技術を手放すのは惜しいとの声もありますが、後から振り返ると、そこが高値だったという可能性もあるかもしれません。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。
窪田真之
 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(当時)入行。99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年所長。大和住銀では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。

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