杉咲花、いつもバッグにあるのは「フィルムカメラ」
NHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」で主人公の妹役として出演し、宮沢りえさんの娘役を演じた映画「湯を沸かすほどの熱い愛」ではブルーリボン賞、キネマ旬報ベスト・テン、日本アカデミー賞など数多くの映画賞を受賞した杉咲花さん。そんな19歳の彼女が「こだわりを持っているモノ」として持ってきたのはクラシックな外観の眼鏡。そこから話はモノ選びに関する彼女のこだわりへとつながっていった。
古い新しいに関係なく、本当にいいなと思うものを
この眼鏡はアンティークショップで見つけました。好きなかき氷屋さんがあるんですが、その隣にあるお店です。かき氷屋さんに行列ができていたので、ちょっと入ってみたら、この眼鏡があったんですよ。すごくかわいくて。
丸い眼鏡が好きなんです。見かけると、ついかけてしまう。でもこの眼鏡はかけてみたらものすごく強い度のレンズが入っていて、「わあ~」と(笑)。視力はいいし、だてメガネとして使うつもりだったので、レンズは外しています。
アンティークショップはみかけるとつい入ってしまいます。他に買ったものですか。小さなカンカン(缶)を買いました。薬入れに使っています。
1997年生まれで、今年20歳になる杉咲さん。今までで自分のお金で買った一番高い買い物についてたずねると、「カメラ」という答えが返ってきた。しかもデジカメではないという。
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使っているのはフィルムカメラです。一眼レフも持っていますが、いつも持ち歩いているのはオートで撮ってくれるコンパクトカメラ。富士フイルムとキヤノンのカメラを持っているのですが、どちらかをたいていバッグの中に入れています。
デジタルカメラだと、うまくいかなくても消せるし、何回でも撮り直せると思ってしまいます。でもフィルムカメラは何枚しか撮れないと限られているじゃないですか。その一枚に懸けるみたいな(笑)。そうやって大切に、一枚の写真に時間をかけて撮るのが好きなんです。
構図にこだわるみたいな、そんなすごくはないんですけど、いま撮りたいと思ったものを撮る。いま撮りたいと思うものでなければ撮らない。フィルムカメラはそういう思いになれるんです。
古いものにこだわっているわけではないです。全部、最新のものを取り入れないと気が済まないというわけでもない。古い新しいに関係なく、本当に自分がいいなと思うものを選びたいと思っています。
演技とわかっていても「死ぬかもしれない」と思った
2017年4月29日に公開される映画『無限の住人』では、父を殺されその敵討ちを誓う少女、浅野凜(りん)を演じる。撮影で印象に残っているモノを聞いてみると。
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父の刀です。あの刀は凜にとって殺された父の形見なので絶対手放せない大切なものだし、あれを手にしたときに意識が変わる存在だとも考えていたので。もちろん初めての時代劇で、刀を持つのも初めてだったということもあります。
演じていて一番プレッシャーだったのは、目の前で親を殺された凜の背負っている過去をどれだけ大事にできるか、でした。映画では両親とのシーンはあまり描かれないけれど、そこがすべてというか、凜が動き出す理由になってくる。そこを大事にできなかったら何も表現できないなと。だからクランクインする前に、原作に描かれたシーンを繰り返し読んでから撮影に臨みました。
「映画で見てもらいたいシーンは?」と聞くとラストのアクションシーンという答えが返ってきた。幕府の刺客300人が木村拓哉さん演じる剣客・万次と凜を殺そうと襲いかかってくる。
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あのシーンは2週間くらいかけて撮ったんです。あれだけの数の人たちが私と万次さんを殺そうとしてくる。もちろん演技をしていることはわかっているけれど、それでも命の危険を感じるくらい、死ぬかもしれないと思うほど怖くて。みんながそれだけ体を張った殺し合いが目の前で行われる怖さを現場ではめちゃくちゃ感じたんです。完成したものを見たときも、あのとき感じたモノがそのまま映し出されていて、あのときの思いがリアルによみがえるようでした。見ている方にもそういう臨場感が伝わるといいなと思っています。
自分の身なりはプロフィル。優先順位は高い
「休みの日、外出するのは洋服を買いに行くか映画を見るかくらい」だという杉咲さん。ネットで調べ物はするが買い物はしないという。
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ネットは主に調べ物で使っています。私は自分が見た映画のレビューを見るのがすごい好きなんです。他の人たちはどんな風に思ったのかなと気になって見る。
でも洋服はネットでは絶対に買わないです。着てみないとわからないので。私は背が低いのでなかなか合う服がない。だから服選びでサイズにはこだわっています。色だって画面で見るものと実物では違うかもしれないので。
ファッションは好きです。自分の身なりは「わたしはこういう者です」というプロフィルになるものだから、ファッションは自分の中で優先順位の高いものだと考えています。
服選びで一番大事なのは、自分が好きなものを自信を持って着られることだと思います。服を選ぶときはそういう思いで探しています。それはずっと変わらない。洋服に限らず、妥協してモノを選ぶことはないですね。無駄なモノは買わない。ストレス発散のために買い物をするなんて考えたこともありません(笑)。
1997年生まれ、東京都出身。「夜行観覧車」(13年/TBS)で注目され、その後多くのドラマ、映画、CMなどに出演。2016年公開の映画「湯を沸かすほどの熱い愛」では数多くの映画賞を受賞した。主な出演作は「縫い裁つ人」(15年)、「劇場版 MOZU」(15年)など。NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(16年)では主人公の妹、美子を演じた。7月8日公開の映画「メアリと魔女の花」ではヒロイン・メアリの声を担当する。
「無限の住人」
父を殺され復讐(ふくしゅう)を誓った少女・凜はある日、謎の老女から"不死身の侍"の存在を耳にする。江戸中を探し回り、ようやく見つけた男の名は万次。凜に妹の面影を見た万次は彼女の願いを聞き入れ、剣客集団・逸刀流の首領である天津影久の命を狙う。 原作・沙村広明「無限の住人」(講談社「アフタヌーン」連載) 監督・三池崇史 脚本・大石哲也 出演・木村拓哉、杉咲花、福士蒼汰、市原隼人、戸田恵梨香、北村一輝、栗山千明、満島真之介、市川海老蔵、田中泯、山崎努 4月29日(土)GW全国ロードショー
(文 大谷真幸=NIKKEI STYLE、写真 吉村永)
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