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吸血鬼や狼男はなぜ生まれた? 伝説誕生の経緯を検証 科学で挑む人類の謎

2017/4/30

ナショナルジオグラフィック日本版

14世紀に建てられたブラン城。ルーマニアのトランシルバニア地方にあり、ドラキュラ伯爵の居城と言われる。(Gregory Wrona/Getty Images)

 人の生き血を吸う吸血鬼、満月の夜になると狼に変身する狼男……これらの怪物たちは、現代の私たちには怪奇小説やホラー映画のキャラクターとしておなじみだ。しかし長い歴史の中では、その存在が実際に信じられ、言い伝えや目撃例も枚挙にいとまがない。なぜこれらの怪物は出現したのか? なぜ信じられたのか? 伝説誕生の経緯を科学の目で検証してみよう。

■埋葬の儀式がバンパイアの正体を暴く

 吸血鬼の起源は古代ローマ、ギリシャ、エジプトにまでさかのぼる。「バンパイア」という名が使われるようになったのは11世紀になってから、奴隷売買が行われていた東欧でのことだった。スラブ語で死からよみがえる人を意味するバンピルや、トルコ語で魔女を表すウピルがその語源とされる。

 近年、ポーランドで何カ所かのバンパイアの墓が発掘された。例えば南部にあるグリヴィーツェの町では、切断された頭が脚の上に置かれた状態で遺骨が発見された。これは、バンパイアの疑いがある遺体を処置するスラブ人の古い埋葬習慣だ。首が斬られれば墓から出て人を襲うことはないと考えられたのだ。

 2014年に『プロス・ワン』という科学雑誌に掲載された記事によれば、ポーランドではバンパイアは「死体をよみがえらせて生者にとりつく不浄の霊」として語り継がれてきた。

 バンパイアとされた人たちの古い墓を発掘する現代の考古学者は、バンパイア神話がどのようにして生まれたかを明らかにしようとしている。ポーランドの北西部、ドラウスコで発見された遺体は、喉あるいは腹に鎌をひっかけるように置いて埋められていた。墓の発掘調査に当たった科学者たちは、「この仕掛けは、万が一この遺体がよみがえって墓を出ようとした時に、その首を切り落とすか、その腹を裂く意図で置かれたものだ」と分析する。

 2006年、当時フィレンツェ大学の法医学・考古学者だったマッテオ・ボリーニが、ベネチア近郊で、16世紀に大流行したペストの犠牲者が埋葬された集団墓地から一人の老女を発掘した。なんと、この遺体の口にはレンガが詰め込まれていたのだ。バンパイアとしてよみがえっても攻撃させないようにするためだったとみられる。

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