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回転ずしネタ「サーモン」 脂のおいしさで断トツ人気

2017/4/21

子ども、女性、外国人に人気という(回転寿しトリトン 東京スカイツリータウン・ソラマチ店)

 4月中旬、東京・墨田区の回転ずし店「トリトン」(東京スカイツリータウン・ソラマチ店)は開店するとすぐ満席になった。1番人気のネタは「イクラ」。2位は「サーモン」(税抜き一皿190円)で「脂のノリと1切れ20グラム以上ある大きさが自慢」(田川秋宏副店長)。同店には「大トロサーモン」(290円)や「炙りサーモン」(240円)などサーモン関連で常時10種類以上のメニューがそろい「子どもや外国人にも人気が高い」(田川副店長)。

■6年連続で人気首位

 よく食べているネタは何ですか? マルハニチロは3月6~8日、月に1回以上回転ずしを利用する15~59歳の1000人を対象にインターネット調査をした。結果は「サーモン」が6年連続の首位。特に女性は52.4%と2位のマグロ・赤身(31.0%)に20ポイント以上の差を付けた。

 なぜ、これほど愛されるのか。そもそも、サーモンがすしや刺し身として生で一般的に食べられるようになったのはここ30年程だ。回遊魚はアニサキスなど寄生虫の感染の恐れがあるが、養殖技術が進化し、生で食べられるようになった。

■脂のノリと値ごろ感が魅力

店頭でも脂の口どけ感をPR(回転寿しトリトン 東京スカイツリータウン・ソラマチ店)

 人気の理由はまず、「脂分のおいしさ」(日本フードアナリスト協会の藤原浩常任理事)が挙げられる。すしは江戸時代には屋台で提供されるファストフードだった。冷蔵庫がない時代、漬け、酢締め、ゆでるなどした保存性の高いネタが江戸前の定番。マグロのトロは「捨てられる部分として評価されていなかった」(藤原氏)という。ただ海外の食文化の影響もあり、日本人の味覚は大きく変化した。カロリーの高い食品のおいしさが浸透。トロッとした脂分の多いネタが好まれるようになった。

 ただ中トロや大トロは庶民が気軽に楽しめる価格を超えてしまった。脂のおいしさを知った消費者が「低価格で中トロのような味わいを感じられるサーモンを選ぶのは自然な流れ」(藤原氏)だったという。

■「健康効果」も人気後押し

 質も向上した。回転ずしで多く使われているのは、チリなどが主産地のニジマス「トラウトサーモン」と、北欧の「アトランティックサーモン」の2種類だ。特に味が良いとされるのが「アトランティックサーモン」。ノルウェーから生のまま24時間以内に日本に届くものもある。サーモン人気にあやかろうと考えた回転ずしチェーン各社が「相次ぎアトランティックサーモンに切り替え、サーモンはここ数年で劇的にうまくなった」(総合情報サイト「オールアバウト」で「寿し」ガイドを務める米川伸生氏)。

アボカドと合わせるなどアレンジも多彩に 

 しょうゆ、ワサビ、マヨネーズと様々な調味料と違和感なくなじみ、あぶりやサラダ系の巻物にと「応用力が高い」(米川氏)。天然の赤い色素アスタキサンチンを多く含むため彩りがよいほか「アンチエイジングなどの効果があるとされることも女性を中心に支持された要因」(藤原氏)という。

■仕入れ値上昇、すし店は青色吐息

 「回転すし=サーモン」と言える看板商品に定着したが、すし店の顔色はさえない。近年、サーモンの輸入価格が急上昇。大不漁が続くイカと併せて「もうけが少なく、調達も簡単ではない」(大手回転寿しチェーン)ためだ。

 アトランティックサーモンの最大の輸出国、ノルウェーの通関統計をみると、日本向けの輸出単価は2000年が1キロあたり34.94ノルウェークローネ(440円程度)だったところ、16年3月には65.06ノルウェークローネ(820円程度)と倍近くまで上昇。魚食文化の広がりで、中国、欧米各国、ブラジルの間で世界的な取り合いとなっているからだ。

 マルハニチロで1989年から9年間、サーモンの買い付けを担当した広報IR部の目時弘幸副部長によると「90年代は日本が買い付けのリーダーだったが、今や国際商品」。1月下旬か2月に始まる中国の春節(旧正月)、4月の欧米の復活祭、11月下旬から12月は感謝祭やクリスマスなどほぼ年間を通じて需要がある。需要増に供給が追いつかず、「従来の20~30ノルウェークローネ台まで安くなる要因が見当たらない」(目時氏)状況になっている。

 仕入れ価格は上昇しても「サーモンは売れ筋商品で他店との競争もあるから、店での値段を上げられない」と回転ずし店からはため息交じりの本音も漏れる。季節の限定商品や手の込んだ1皿で利益を確保するのも限界がある。安くておいしい人気者の地位はいつまで持つだろうか。

■「サーモンで分かる店の良しあし」

 米川伸生氏の話 サーモンをみれば、その店の良しあしがわかる。マグロとサーモンは店にとって今や二大看板。勝負の皿でいかに顧客の舌を満足させられるか、腕が問われる。安いトラウトサーモンを使っていたころ、回転ずし店にとってサーモンはもうかるネタの筆頭だった。しかし近年主流のアトランティックサーモンの仕入れ価格はメバチマグロやキハダマグロより高い場合もある。

 世界的に魚の人気が高まり輸入価格は上昇しているため、手ごろな価格が売り物の回転ずしは利益を上げることが難しくなっている。地元で捕れた魚や、ちょっと高級なネタなど付加価値で勝負する「グルメ回転ずし」が増えているのもこうしたことが理由だろう。

(佐々木たくみ)

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