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安眠を生む「口閉じテープ」 小林製薬の勝算は?

日経トレンディネット

2017/4/23

使い方はシンプル。寝る前に口に貼るだけ
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 「寝つきが悪い」「日中眠気を感じる」など睡眠に不満を持つ人がここ数年増えている。厚生労働省が行った2015年国民健康・栄養調査の結果によると、平均睡眠時間6時間未満の成人で、なんらかの睡眠障害を抱えている人の割合は7割近く。生活や仕事に及ぼす影響を考えると、単なる寝不足では片付けられなくなっている。

 いまや3兆円ともいわれる睡眠関連市場で新たな需要の掘り起こしに取り組んでいるのが小林製薬だ。着目したのは、鼻呼吸を促すテープ。よくある鼻腔拡張テープではなく、口に貼ることで就寝中の口呼吸を防ぎ、いびきの音や口・のどの乾きを軽減できるという新商品が、2017年4月13日に発売された。

小林製薬「ナイトミン 鼻呼吸テープ」(15枚で798円)

■なぜ就寝時の口呼吸は良くないのか

 新商品「ナイトミン 鼻呼吸テープ」は口にテープを貼って固定し、就寝中に口が開かないようにするための商品。従来の鼻腔を拡げて気道を確保する商品とは異なり、口呼吸をしにくくすることで鼻呼吸に誘導するのが目的だ。

 「睡眠について調べてみると、口呼吸が悪影響を与えていることが分かった。杏林大学医学部付属病院の中島亨医師が、いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療で口閉じテープをすすめていることもヒントになった」と、小林製薬 日用品事業部マーケティング部新製品開発グループの岩沢佳尚氏は話す。

開発を担当した小林製薬日用品事業部マーケティング部新製品開発グループの岩沢佳尚氏(右)と、小林製薬 日用品事業部研究開発部新製品開発特命担当の山中雅史氏(左)

 例えば、いびきは鼻やのどを空気が通るときに粘膜が振動して音が鳴る現象をいうが、原因は肥満や加齢、飲酒、疲労だけではないという。口を開けて寝ると舌の付け根が落ち込み、呼吸するための空気の通り道が狭くなっていびきが発生する。また、口を開けていると口内から水分が蒸発するため、口やのどが乾燥し、朝目覚めたときに不快に感じる。同社が2016年に20~69歳男女を対象に実施したインターネット調査によると、「口呼吸をしている」と答えた人は37%もいたという。

 とはいえ、口をテープで閉じるという行為にはやや抵抗を感じてしまう。就寝中に口を閉じたまま固定すれば、息ができなくなるのではという不安もある。その疑問に対して、岩沢氏は「苦しくなれば、自分ですぐに剥がせる。ぬれマスクを発売するときにも『息を止めてしまって危険なのでは』という声があったが、取り越し苦労に終わった」と説明する。ただ念のため、鼻づまりや鼻風邪のときは使用を控えたほうがいいという。

口呼吸をしていると口・のどが乾燥したり、空気の通り道が狭くなっていびきが発生しやすくなったりするという

■「いびきが減り、安眠できる」を実証

 口呼吸を防止すればいびきが減り、安眠できる――。構想段階では「安眠」をうたえるかどうかは半信半疑で、医療現場でも外科手術用テープを応急措置で使ってはいるが、この仮説を実証する試験データはまだなかった。

 そこで同社は、いびきに悩む20代男子大学生にウィークリーマンションに1週間滞在してもらい、効果実証実験を実施。毎日、いびきの音量と体がどれだけ動いたかを測定することで安眠度合いを調べた。結果は、テープありのときに、いびきの回数も寝返りなどの動きも目に見えて減少。睡眠の質が改善されることが証明された。構想から約3年。効果を実証するデータがとれたことで、開発スピードが一気に加速したという。

実験の結果、のどの痛みが改善され、いびきの頻度や寝返りの回数も減ったという

■消費者のトライアルをいかに増やすかがカギ

 ここでもうひとつの疑問が浮かんでくる。口を閉じるだけなら絆創膏(ばんそうこう)やセロテープで代用できるのでは、ということ。また、就寝途中で剥がれたり、少しでも違和感を覚えると、余計眠れなくなるのではということだ。

 いびきに悩む人の中にはセロテープを貼って寝る人もいるようだが、剥がすときに若干痛い。毎日貼ると皮膚にも良くない。

 一方、ナイトミン鼻呼吸テープには外科手術で傷跡を押さえるときのテープと同じ医療用シリコンタイプの粘着剤が使われている。「柔らかな素材で、長時間貼ったあと剥がすときも皮膚を引っ張らないので痛くない」(小林製薬日用品事業部研究開発部新製品開発特命担当の山中雅史氏)。同時に、テープの側面に波形のくびれを入れて伸縮性を増すことで剥がれにくくなる特殊形状を採用。肌の弱い女性でもかぶれず、毎日安心して使える点も大きなウリになりそうだ。

 実際に、寝つきが悪く、寝相もあまりよくない家族に試してもらったが、テープを貼っている違和感はなく、一晩中、剥がれることはなかった。「40代以上になると加齢によってのどの粘膜が垂れ、唾液も減ってくるのでより効果を実感しやすい」と岩沢氏は期待を寄せる。類似商品がほとんどないことから、同社のほかの商品と同様に、インバウンド(訪日外国人)には“神薬”として人気を集めるかもしれない。

 これまでも独自の戦略で新市場を開拓してきた同社が勝算を確信する「口閉じテープ」は、将来、数百億円市場に化ける可能性を秘めている。「口にテープを貼って寝る」という新習慣が広まるかどうかは、いかに消費者のトライアル機会を増やし、効果を実感してもらうかにかかっているといえる。

(ライター 橋長初代)

[日経トレンディネット 2017年4月4日付の記事を再構成]

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