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海外でスマホ使うなら MVNOより大手がおトク 佐野正弘の“日本的”ケータイ論

日経トレンディネット

2017/4/21

写真は筆者が最近訪れたニューヨークの街並み。海外でいかに安価にスマートフォンのデータ通信を確保するかは、海外取材が増えている筆者にとっても大きなテーマだ

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 今や海外でもスマートフォン(スマホ)が使えることが当たり前となった現在、海外でいかにデータ通信手段を確保するかは重要なテーマだ。大手キャリアとMVNOとで、海外でのデータ通信手段にはどのような違いがあるのだろうか。

■海外は「無料Wi-Fiが多いから大丈夫」ではない

 旅行や出張などで海外に行く人も多いと思うが、今や海外旅行でもスマホは必需品となりつつある。海外でもメールのやりとりをしたり、現地の情報を調べたり、旅先の様子をSNSに投稿し、シェアすることも、最近では旅行の楽しみとなっている。それだけに、スマホが日本と同じ感覚で利用できることは不可欠だ。

 だが、海外でのスマホの利用、特にデータ通信の利用に関しては、「お金がかかる」というイメージが強い。実際、大手キャリアの国際ローミングサービスは、多くの国で定額制の使い放題となっているものの、1日当たり1980~2980円の段階制を採用しているため、3日も利用すれば、1万円近い金額になってしまう。

 「海外は無料のWi-Fiが充実しているから、Wi-Fiを使えば安心」という声もよく聞かれるが、実はそうとは限らない。実際に海外で無料のWi-Fiサービスを使ってみると、周囲に利用者が増えると急に遅くなったり、接続できなくなったりする。意外と安定して利用できないことが多いのだ。

 また、利用できるエリアも限られる。ホテルや空港の中ならともかく、外出先で「今、撮った写真をすぐにSNSに投稿したい」と思っても、Wi-Fiスポットのある場所まで移動しないと使えない。安定した通信を確保するなら、やはりモバイル回線によるデータ通信は必須だ。

 モバイル回線でより安くデータ通信をする場合、従来であれば、国内の空港でWi-Fiルーターをレンタルするケースが多かった。しかし、持ち歩く荷物が増えるうえ、機中泊の間は、使っていなくても、料金を支払わなければならない。いかにより安く、快適にスマホを利用するかは、海外へ行く機会が多い人にとっては深刻なテーマだ。海外取材が増えている筆者もその例外ではない。

 そこで今回は、大手キャリアとMVNO、それぞれの国際ローミング対応状況、そして海外でより安く、確実にデータ通信を利用するための手段をまとめておきたい。実はこのテーマを追究していくと、大手キャリアとMVNOとの間に意外と大きな“差”があることも見えてくる。

■レンタルWi-Fiルーターよりお得なauの「世界データ定額」

 大手キャリアの場合、通話だけでなくデータ通信の国際ローミングも提供しているので、海外でも手軽にデータ通信を利用できる。料金が高いことを考慮しなければ、スマホを持ち込んで設定するだけで、簡単にデータ通信ができるメリットは大きい。

 とはいえ、1日3000円近く料金を支払うのは、特に長期間滞在の場合、つらい。そこで、最近は、大手キャリアも、より安価に海外でデータ通信できる方法を用意している。

 中でも注目なのが、auの「世界データ定額」だ。これは24時間当たり980円を支払うことで、日本で利用しているデータ通信サービスの容量分だけ、データ通信を利用できるというもの。国内でのデータ通信容量を消費する形となるが、通常の国際ローミング(海外ダブル定額)と比べ、1日当たりの料金が約3分の1になるのがメリットだ。

auの「世界データ定額」は、32の国・地域で24時間当たり980円を支払うことで、日本と同様に通信容量を消費してデータ通信ができる。写真は2016年5月31日のKDDI新製品・サービス発表会より

 現在利用できるのは、米国や英国、豪州など32の国・地域だが、6月5日までは期間限定で、中国やインドネシア、グアムなど131の国・地域でも利用可能となっている。また、長期優待プログラムの「au STAR」に入っていれば、1カ月につき24時間分の料金が無料になるので、月をまたいで旅行するなど日程を工夫することで、2日間ローミング料金をかけずにデータ通信ができる。

 筆者も先日ニューヨークを訪れた際に、世界データ定額を使ってみたが、au STARで1日分の割引が適用され、3日間の滞在中、合計1960円で国際ローミングが利用できた。しかも現地に着いてから利用開始の手続きをするので、レンタルWi-Fiルーターのように機中泊の日の料金が加算されることもなく、無駄が少ないのもうれしかった。

 ただ、実際にiPhoneで専用のアプリから利用しようとしたところ、利用開始の画面が表示されないのには、戸惑ってしまった。auから送られてきたSMSの案内に従い、Webサイトからアクセスすることで、無事利用できたのだが、アプリの安定性には改善の余地があるように感じた。

ニューヨークで実際に世界データ定額を利用したところ
アプリでは手続きがうまくいかず、Webで手続きをすることとなったが、手続き後のサービス利用は快適だ

■ソフトバンクは米国で使い放題

 他のキャリアの場合も紹介しよう。ソフトバンクのiPhoneユーザーであれば、米国限定で「アメリカ放題」の利用が可能だ。

 これはソフトバンクが米国の大手キャリアであるスプリントを買収したことで実現したもので、2014年からサービスを開始している。月額980円のサービスだが、執筆時点(2017年4月2日)では、利用料無料のキャンペーン(終了時期は未定)を実施しており、「スマ放題」の「データ定額 5GB」以上に加入していれば、キャンペーン終了後も基本的には無料で利用できるとされている。

 スプリントのネットワークに接続していることが条件となるものの、米国滞在時に米国内、あるいは日本との通話やSMSが無料になるほか、データ通信が使い放題になる。対象地域があくまで米国なので、アジアや欧州に行く機会が多い人にはメリットはないのだが、米国本土やハワイでは恩恵が大きい。

ソフトバンクの「アメリカ放題」を利用すれば、米国限定だが、スプリント回線に接続することで通話やデータ通信がし放題となる。写真は2014年9月17日のソフトバンク発表会より

 NTTドコモは通常の「海外パケ・ホーダイ」に加え、「海外1dayパケ」というローミングサービスを2013年より提供している。これは24時間当たり980~1580円(国・地域によって異なる)を支払うことで、1日当たり30MBの通信が利用できるというもの。それ以上は、通信速度が16kbpsと超低速になってしまうことから、あくまでWi-Fiなど別のネットワークが利用できないときに、最低限のデータ通信手段を確保する“つなぎ”のサービスといえる。

 だが、9月30日までは、中国や韓国、香港、サイパンなど7つの国・地域限定で、通信速度が30MBを超えても制限がかからないキャンペーン「海外1dayパケがとことん使いホーダイ!」を提供している。LTEの高速通信で写真や動画を頻繁にやりとりする現在、30MBというのは不十分なので、今後はキャンペーンをベースとしたサービスの改善に期待したいところだ。

■データ通信の国際ローミングに対応するMVNOはほとんどない

 このように、大手キャリアでは、何らかの形で国際ローミングをより安くするためのサービスが打ち出されている。ではそれ以外の通信事業者、特にMVNOやサブブランドの対応状況はどうか。

 ワイモバイルはソフトバンクが直接運営していることもあり、ソフトバンクの国際ローミングと同様「海外パケットし放題」がある。料金は高いが、大手キャリア同様の国際ローミングを利用できるのは安心感がある。

 ただしMVNOの場合、通話・SMSの国際ローミングに対応している事業者は多くても、データ通信の国際ローミングに対応するところはほとんどない。海外に持っていっても、データ通信は利用できないと考えた方がよいだろう。あくまで筆者が把握している限りだが、データ通信の国際ローミングに対応しているMVNOは、エレコムの「SkyLinkMobile」などごく一部である。

 つまり、普段の通信料を安くしたいからといってMVNOのサービスを選ぶと、海外では大手キャリアと同様の国際ローミングサービスは受けられないという落とし穴があるわけだ。出張が多いなど海外で手軽にデータ通信を利用したいなら、安易にMVNOのサービスを選ばない方がよいといえる。

データ通信の国際ローミングに対応する数少ないMVNOである、エレコムの「SkyLinkMobile」。サービス内容はNTTドコモのものに準じる形となるようだ。写真は同Webサイトより

■MVNOの利用者が海外でデータ通信するには

 もちろん、MVNOのサービスを使っていても、別途通信手段を確保さえすれば、海外でデータ通信を利用すること自体は可能だ。1つ目の方法は、別途海外用のWi-Fiルーターをレンタルすることだ。荷物が増えるなどの弱点はあるが、日本語で全ての手続きが済むし、同行者が多い場合はシェアすることで料金も抑えやすくなる。

レンタルWi-Fiルーター大手のビジョンが提供する「Global WiFi」

羽田空港の店舗では、QRコードをかざしてWi-Fiルーターをすぐ受け取りできる「スマートピックアップ」を提供している。写真は2016年4月25日の同社発表会より

 2つ目は、現地でデータ通信用のプリペイドSIMを調達することだ。実はこの方法が最もデータ通信料金を安く抑えられるので、海外旅行の中・上級者にはとても人気が高い。

 ただ、プリペイドSIMの入手のしやすさは国によってかなりの差があり、中にはSIMの購入がしづらかったり、購入しても、特定のサービスが利用できなかったりするなどの制約がある場合もある。また、購入したSIMは自分で設定しなければならないことが多く、手続きを進めるには、現地の言葉、少なくとも英語が必要だ。そうした手間やリスクを考えると、初心者にはお勧めしづらい手段でもある。

 3つ目は、MVNOが販売している海外用のプリペイドSIMを購入して利用する方法だ。ケイ・オプティコム(mineo)の「mineo 海外用プリペイドSIM」や、インターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJmio海外トラベルSIM」、楽天の「楽天モバイル 海外SIM」などがそれに相当する。

IIJなど一部のMVNOは、海外でデータ通信などが利用できる独自のSIMを提供することで、ローミングができないデメリットをカバーしている。写真は2016年10月22日の「IIJmio Meeting 13」より

 これらは普段、使用しているMVNOのSIMと差し替えて利用する海外専用のSIMだ。料金はやや高いが、日本語で手続きや設定ができ、日本語によるサポートも受けられるなど安心感が強い。とはいえ、MVNOのSIMとは異なるSIMのため、SIMフリー端末、あるいはSIMロックを解除した端末でないと利用できない点には注意が必要だろう。

 こうした各社の動向からは、大手キャリアの国際ローミング料金は、まだ高額ではあるものの、改善に向けた動きが進んでいることが分かる。一方で、MVNOは基本的にデータ通信の国際ローミングは提供しておらず、海外での利用という面では不利な要素が多い。今後利用者の増加に従って、何らかの改善が求められてくるだろう。海外でスマホを利用する際は、こうした点を念頭に置いた上で、可能な限り、事前に、自分に適した通信手段を準備しておくことをお勧めしたい。

佐野正弘
 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

[日経トレンディネット 2017年4月5日付の記事を再構成]

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