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なやみのとびら、著名人が解決!

電話美人の部下、職場で挨拶しません 著述家、湯山玲子

2017/4/20 NIKKEIプラス1

ゆやま・れいこ 著述家、プロデューサー。東京都生まれ。「女装する女」など著作多数。クラシック音楽のイベント「爆クラ!」を主宰。テレビのコメンテーターとしても活躍。

 30代独身の女性部下が、朝、挨拶もせずブスっと職場に入ってきます。でも他の職場からの電話にはびっくりするほど明るくぶりっ子してさわやかに対応しています。「困りごとでもあるの?」と聞くと「別に」とだけ。こんな人、「かわいそうに」と思うしかないのでしょうか?(福岡県・女性・60代)

 私は10年以上、会社員の経験があり、それからフリーランスとして、コンテンツ制作を中心に様々な仕事をしてきました。そこからはっきり見えてきたことのひとつに、日本における職場とは「利益を生み出すための集団ではなく、居場所である」という事実があります。

 そこでまかり通るのは「このアイデアを実現すれば会社がもうかるのに、やらない」という選択。その企画が今いる部署のメンバーに波風を立てるくらいならばやらないでおく、という空気すら生まれてしまうのです。もうかることをやらず、社内政治にかまけたり、気に入らない社員にいやがらせをしたりするお局(つぼね)の存在は、すべてこの「会社は居場所」というプロ根性からかけ離れた精神にあるといってもいい。

 さて、申し訳ないが、質問者はどうやら、職場を居場所として捉えているキライがあります。挨拶をしない部下ですが、かかってきた電話にはさわやかに対応しているとあり、仕事上は全く問題がない。

 会社のもうけにガッツリ応えているから、上司としては有能な人材と捉えるべきなのに、相談者が思い描く理想的な「居場所」の一員としてはふさわしくない。もっとストレートに言ってしまえば、感情的にイラつく存在ということでしょう。

 もっとも、会社の利益創出のために、居心地の良い職場をつくるのが重要、というならば話は別で、「上の人間に挨拶をしないことは、上下関係を乱し、極めて仕事がやりにくくなる」ということで「挨拶、しましょうよ」と申し入れるしかない。いわゆる体育会的な染め上げですが、実際、そういうハードな営業部隊はたくさん存在する。しかし現在では、こうしたことがパワハラとも捉えられがちなので注意が必要です。

 職場を居場所として捉えるのは個人の自由ですが、居心地を測る尺度は個人の感情であり、他人を自分の居心地のためにコントロールすることはできません。なので相談者は会社員の本義に戻って「居心地破り」のメンバーにイラつくエネルギーを「会社の利益とは何ぞや?」「自分のプロとしての力量は何か?」というところに注入するのがいいのではないでしょうか。

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[NIKKEIプラス1 2017年4月15日付]

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