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キリン「なりきりママ」、次はパパ 介護にも生かせる

キリン「なりキリンママ」プロジェクト(後編)

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NIKKEI STYLE

こんにちは。ジャーナリストの白河桃子です。営業職と子育てを両立することはできるのか? キリンのグループ会社に所属する、20代後半から30代前半の子どものいない営業女子5人(未婚3人)が、「ママになっても営業ができるかどうか、実際にやってみよう!」とスタートさせた実証実験「なりキリンママ」プロジェクト(詳しくは前編『未婚の営業女性が「ママ」に挑戦 その驚くべき結果は』を参照)。1カ月間、2歳児を持つママになりきり、定時退社や突発的な早退など9つのルールを守りながら仕事をするという試みです。

最終的に残業時間を前年比51%短縮、業績も前年を維持し、全国を上回るといった結果になりましたが、実験を続ける中で様々な紆余(うよ)曲折や気づきがありました。

今回は、彼女たちが生産性向上のためにどんな工夫をしたのか。今後の課題は何か。具体的にお聞きしました。

営業ママに必要な工夫とは?

――営業職は、基本的に社員1人につき複数の取引先を担当しますよね。もし、子どもの病気で急に早退や休みが必要になったら、絶対必要になるのが、「情報の共有化」だと思うんですが、そのあたりは何か工夫されましたか?

井尻綾夏さん(以下敬称略) 白河さんのおっしゃる通り、情報共有は意識的にやりました。実験中、1人が複数の取引先を担当するという形は変えなかったんですが、自分が休む場合は他の誰かに対応をお願いしなければなりません。

私は、自分の仕事内容やスケジュールをアウトルックに詳しく書いて、関係者全員に「見える化」しました。その上で、緊急事態が起こった場合の対処を事前にお願いしておき、スムーズに対応していただいたことがあります。

加藤ますみさん(以下敬称略) 私は報・連・相をこまめにするようになりましたね。上司や同僚たちも、いつ私が休むか分からないという緊張感を持っていたようで、話し手・受け手の意識が随分変わったと感じます。

――情報の共有化以外にも、何か工夫はされましたか?

河野文香さん(以下敬称略) いつ何が起こるか分かりませんから、前倒しで仕事をするようになりました。この良い習慣は、実験が終わった今も継続しています。

金田亜弥香さん(以下敬称略) 会議の時間も短縮しました。制限時間厳守で決めなければならないので、言いたいことを遠慮している場合じゃなくて(笑)。自分の考えや疑問点を率直に伝えるようになりました。すると、相手もスムーズに意見を言ってくれるようになり、結果として会議が短くなったんです。

樋口麻美さん(以下敬称略) 午前中に会議をすることも有効でした。午後の会議は眠くなったり、ダラダラと長引いてしまいがちですよね。でも、午前中にやると短時間集中で効率よく進められました。

加藤 私が強く感じたのは、突発的な休みを取る場合、先方に理解していただく上で絶対に必要なのは、取引先や周囲と十分な信頼を築いていなければならないということです。良好な関係性を維持していたからこそ、突発的な休みや早退にも対応していただけるということは、心に刻むべきことだと思います。

――スケジュールの共有化、顧客情報の共有化、会議の時間の前倒しや会議時間の短縮、前倒し業務、社内はもちろん、社外との良好な信頼関係作り……ワーママがやっている工夫がすべて挙がりましたね。

「なりキリンママ」にはメリットがたくさんあった

―― 皆さんは実験中、退社後も何か特別なことをされたのですか? 実際に子育てがあるわけではないけれど、できた時間を何に活用するのか、重要ですよね?

井尻 帰宅後は、ママになりきって子ども向けの料理を作っていました。ちょうどハロウィーンが近かったので、パンプキンカレーを作ってみたりしましたね。早く帰る習慣は、このプロジェクトが終了した後も続いています。

河野 私も定時で帰宅した時は、料理をするようになりました。あとは、資格の勉強です。私はソムリエの資格をとるための勉強をしていたんですが、これまでは残業する日が多くてなかなか勉強時間がとれなかったんです。それが、定時で帰ることで勉強がはかどり、先日一発で合格することができました。

金田 実験期間中は毎日お弁当を、しかもキャラ弁を作っていました(笑)。お弁当の材料を買うため、会社の帰りにスーパーに寄っていたんですが、改めて生活者の視点に立てたことが思いがけない収穫でした。考えたら、みなさんが夕食前の買い物に来る時間帯のスーパーに、お客としていったことがなかった。

スーパーで気付いた点は、印象に限らず食品についても部署内でシェアするようにしました。例えば、ささいなことなんですけど、お総菜の大型パックが売れ残っていたから、もっと小分けのパックであれば買いやすいのではないかとか。今はイースターが近いから、関連する商品が売っていたとか。カスタマーアドバイザーとしての視点を養うことができたと思います。

いずれは評価制度の見直しが必要になってくる

――ほとんどの人が労働時間を減らした方がいいと分かってはいますが、その一方で、残業代が減ってしまっては困ると抵抗する人もいますよね。特に、専業主婦の奥様がいらっしゃったり、住宅や自動車のローンを組んでいる人にとっては死活問題になります。

樋口 家に帰ってやることが何もないのであれば、会社に残って残業代を稼いだ方がいいと思う人はたくさんいると思います。

河野 とはいっても、残業せず効率的に働いている人のお給料が増えないという構造には、違和感を覚えます。今回のプロジェクトでも、私たちは業績を維持したにもかかわらず、残業時間を大幅に減らしたことでお給料がかなり減りました。もちろん、それは周囲の協力があってこその結果ですが。

――働き方改革を進める上で、どの企業にも「評価と報酬の設計」という、同様の課題が浮上してくるでしょうね。

岩間勇気さん(以下敬称略) この先、評価制度の見直しは行われていくでしょう。必要性の低い残業による手当が減った場合は、家計としてのポートフォリオを組み直す必要も出て、出産などのため会社を辞めた女性が仕事に復帰していく流れになるかもしれませんね。

――働き方改革の後に生じる最も難しい問題は、評価制度です。中でも営業職は難しい。子育てをしながら働く社員が周りのメンバーからサポートしてもらって実績を上げたとしても、成果は担当者のもの。どのように評価すべきでしょうか。

岩間 業績は、労働時間や量のみで測れるものではありません。他社の動向をみると、時間当たりの生産性も評価の対象に入れる方向に進みつつあり、キリンの別の女性営業チームも時間当たりの生産性を人事考課の指標とするようエイカレに提言しています。当社としては、まず働き方改革に係る指標をマネジメント層の業績評価の対象とする方向でいますが、その下の層を含めた組織全体に対しては労働時間を短縮するためにチームとしての助け合いやナレッジ・情報共有が必要だという意識を高めることを、全社で「なりキリンママ&パパ実験研修」を行うことを通じて始めていきます。その延長線上で、評価制度や公平性の議論が進むことは間違いありません。

――育児や介護などの制約がある人の仕事は、周囲の人たちがサポートしなければなりません。こういった状況がエスカレートしていきますと、人間関係がギスギスしてしまうケースも少なくありません。「お互いさま」では済まなくなった時にどうするのか。会社は社員をどう評価するのか。報酬はどうするのか? この問題は、どの企業でも出てくるのではないかと思います。

「なりキリンママ」は、介護をする社員にも必要なこと

――今回の試みは、子育て社員に限らず、介護をする社員にも必要な取り組みではないでしょうか。仮に子どもをもうけないという選択をしたとしても、いずれは多くが介護の問題に直面します。将来的に介護をする社員にとって、今回のような試みは大事なシミュレーションの機会となるはずです。

特に男性比率の高い会社は、すでに介護休暇を取得する方が多い傾向があります。例えば大手の建設株式会社では、介護休職をする男性の数が、育休を取る女性を上回っているそうです。

しかも、介護は育児よりも早く帰らねばなりません。介護サービスは午後4時半には終了し、その後は自費でヘルパーさんに依頼したとしても、会社員の収入でやりくりするとなると1日2時間のサービスが限度。延長保育はあっても延長介護はないので。そうなりますと、午後6時台には会社を出なければなりません。

加藤 実は、「なりキリンママ」プロジェクトには、介護しながら働き続ける環境づくりをするという狙いもあります。

子育ても介護も、突然やって来る可能性があります。そういった時、これまでは、働き続けるか、会社を辞めるかという極端な選択肢しかありませんでした。そこで、この実験を通して事前にシミュレーションをすれば、「両立する」という新しい選択肢を加えながら考える時間をつくることができるのではないでしょうか。

   ◇      ◇      ◇   

あとがき:このプログラムの優れたところは、なりキリンママに関わるすべてのステークホルダー、上司、同僚、顧客、業界全体への波及効果があることです。営業女子のまきこみ力は感服しました。

働き方はなぜ変えなければならないのか? なぜ生産性をあげなければならないのか? いくら「べき論」で説いても、頭では納得しても体はついていかない。長年の働き方、こうあるべきという考えが染み付いているからです。働き方改革はまずアクションから。アクションすることで、本人たちも「働き方は変えられる」と実感し、そんな彼女たちを見て上司や顧客たちも変わる。

労働時間をただ削減するのではなく、「時間の制限」という今まで考えなかったことに着目することで、さまざまな生産性向上へのTIPSが得られる。それにとどまらず、会社のほうも「なぜ生産性高く成果を出しても、お給料が減るのか」という疑問に答えてくれるといいですね。働き方改革はただの生産性向上ではない。人材が豊富にいた頃の会社のシステム、ビジネスモデルが変化を迫られているという大きな変革の流れなのです。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。「一億総活躍国民会議」委員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(山田昌弘共著)、「妊活バイブル」(講談社新書)、「産むと働くの教科書」(講談社)、「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)、「進化する男子アイドル」(ヨシモトブックス)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

(ライター 森脇早絵)

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