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プレ金で外食・旅行に恩恵 シニアは混乱避け動かず

2017/4/17

プレミアムフライデーで仕事帰りにビールで乾杯する会社員(2月24日午後、東京都港区)

 国と経済界が一体となって進めるプレミアムフライデー(プレ金)が今年2月に始まりました。毎月最終の金曜日の午後3時には退社し、買い物や飲食、旅行などに充ててもらう取り組みです。盛り上がりに欠ける個人消費の刺激策と同時に働き方改革を促す狙いもあります。

 プレ金の導入は強制でないため賛同する企業数や経済効果については疑問の声が出ていましたが、2月の開始時点で約4000社がプレ金のロゴマーク使用を申請しました。また、毎月1200億円の経済効果を皮算用するシンクタンクもありました。2月24日の初のプレ金では、居酒屋が開店時間を繰り上げビールを格安で提供し、百貨店は各種講座を開くなど客寄せイベントが目白押しでした。

 結果はどうだったのでしょうか。総務省の2月の家計調査によると、プレ金の24日に勤労者世帯の外食への支出が前年の同じ月の最終金曜日に比べ42%も増えていました。旅行にいった人が増えたためパック旅行の支出も4倍強と好調でした。第一生命経済研究所の柵山順子主任エコノミストが、このデータから外食による消費の押し上げ効果を試算したところ、年間消費が金額ベースで824億円増えることが分かりました。

 一方で押し上げ効果を打ち消す数字がありました。無職を含む2人以上の世帯のパック旅行の支出は27%減でした。シニア世帯が「平日のほうが行楽地はすいている」(柵山氏)と考え、プレ金を避けたためです。勤労者世帯では効果がみられたものの、リタイア世代が増える中、消費全体を押し上げる力強さはまだないようです。

 消費関連の業界団体からはプレ金効果は都心部に限られたという指摘があります。仕事を早く切り上げたのは都心の大企業の一部に限られ、全国的な広がりにはまだ欠けているのが実態です。民間調査によると首都圏に住む人のうち、職場から早帰りできたのは3.7%にとどまるなど都心部でも消費拡大の伸びしろはあります。定着すれば継続的な効果が期待できるだけに、企業の側も官製販促とは捉えず、積極的に盛り上げていく必要がありそうです。

■柵山氏「帰りやすい環境整備が必要」

 プレミアムフライデーについては官製の販促活動に疑問を呈する人もいる。果たしてプレミアムフライデーは定着するのか。マクロ経済分析を専門とする第一生命経済研究所の柵山順子主任エコノミストにプレミアムフライデーの可能性について聞いた。

第一生命経済研究所の柵山順子主任エコノミスト

 ――最初のプレミアムフライデーについて経済効果を試算しましたが、その評価を聞かせてください。

 「政府がプレミアムフライデーを実施することを発表したのが昨年12月で、実施が2月24日でした。セールの準備や旅行プランの作成などの面で時間がなく、一部の大企業しか対応が間に合わなかったため、セールなどの展開は都心部に限られ、その影響は小さかったようです。それでも家計調査では明らかに支出が増えた項目もあったほか、小売り、サービス業の業界団体のデータでも少なからず効果が見られたことを考えると評価できると思います」

 ――家計調査では外食、パック旅行以外ではどのような費目の支出が伸びていたのですか。

 「おこづかいや交際費です。勤労者世帯(2人以上)では2月24日の支出が1814円で、前年比68%増でした。無職を含む2人以上の世帯も991円で、同57%増。また、交際費もそれぞれ80%前後の大幅な伸びを示していました。ただこの項目は、ばらつきがあるので、今後のプレミアムフライデーの数字を注視して傾向を見ていく必要があります」

 ――思ったより数字が悪かったのはどの費目ですか。

 「婦人衣料です。ただ、もともと2月は衣料品の支出が少ない時期でもあります。全体的に見るとモノ(物販)消費が芳しくなく、コト(サービス)消費は堅調でした。これは消費活動全体にいえる傾向です」

 ――プレミアムフライデーは働き方改革にも何らかの影響をあたえるのでしょうか。

 「はい。日本社会は『お尻を決めて仕事をする』習慣になっていません。午後3時に仕事を切り上げることは、決められた時間内に仕事を終えなくてはならず、いい取り組みです。ある調査ではプレミアムフライデーについて『周りの人が働いていて帰れなかった』というケースもあったようです。つきあい残業の名残かもしれません。制度が定着して『帰りやすい環境』が整えば金曜日の午後から旅行がしやすくなるでしょう」

(編集委員 田中陽)

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