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在宅勤務の時代 「頑張っているプレゼン」が必要に?

日経ウーマンオンライン

2017/4/14

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 仕事でもプライベートでも、発信力を高めることができれば、やりたいことができる環境が整う時代。せっかくの実力が発信力の弱さで埋もれぬよう、プレゼンノウハウに詳しい池田千恵さんが指南します。

■「働き方改革」で、働きぶりのプレゼンが必要に?

 「働き方改革」という言葉が新聞やニュースで目に入らない日がなくなりましたね。2017年3月14日の日本経済新聞朝刊では、首相が示した9つのテーマとして、次のようなものが挙げられていました。

1.同一労働同一賃金など非正規の待遇改善
2.賃上げと労働生産性の向上
3.長時間労働の是正
4.転職・再就職支援。格差を固定させない教育
5.テレワーク、兼業・副業など柔軟な働き方
6.働き方に中立な社会保険制度、税制。女性・若者の活躍
7.高齢者の就業促進
8.病気の治療、子育て・介護と仕事の両立
9.外国人受け入れの問題

 弊社でも、3番の「長時間労働の是正」と5番の「テレワーク、兼業・副業など柔軟な働き方」の解決策として、朝時間の見直しを含めた働き方見直しコンサルティングを受けることが増えてきました。いろいろとヒアリングしたときに出てきた悩みで、次のようなものがありました。

 「今でさえ、上司に、自分がどれだけ忙しいかをうまく伝えられていなくてむちゃ振りされることがあるのに、テレワークや裁量労働制が始まったら、どうやって周囲とコミュニケーションしていけばいいのでしょうか」

 「一生懸命やっているのに、いつも『もっとやれるよね?』と言われてしまう。一生懸命感を醸し出したいのだけど、どうしたらいいでしょうか。今後、対面することなく成果を効果的にアピールするのはハードルが高いです」

 事務作業など、周囲に業務内容が見えにくい職種は特に、普段でも隣の人がどんな仕事をしているかを知ることは難しいものです。その上テレワークにより「仕事ぶり」が視界にさえ入らない状態が増えていくと、今後は「自分がどのぐらい働いているか」を、毎日接することがない相手に適切にプレゼンする力がますます必要になってくることでしょう。「仕事ぶり」をどう表現するかに悩み、日々残業……となったら本末転倒ですし、その作業自体にストレスを感じる人が増えれば、働き方改革どころではありませんよね。

■「頑張っている感」を醸し出せない人の共通点とは

 仕事を一生懸命やっているのに「もっとやれるよね?」と言われてしまったり、いっぱいいっぱいなのに仕事をどんどん振られてしまったりと、自分の業務量と相手の認識にギャップを感じている人には2つの共通点があります。

1.コミュニケーションを難しく捉えすぎている

2.自分の業務内容を周囲に見える形にするのが苦手

 順番に説明します。

1.コミュニケーションを難しく捉え過ぎている

 下記のような気持ちになることが多い場合は、コミュニケーションを難しく捉え過ぎている可能性が大きいです。

・相手の気持ちを考えすぎてなかなか行動に移せない

・たくさん配慮したつもりで極力メールをシンプルにしてしまい、かえってぶっきらぼうな表現や失礼な表現だと注意されたことがある

・上手に質問しようと思い質問内容を考えているうちに、頭がごちゃごちゃしてくる

 すぐに質問しないと業務が進まないという場面でも、質問する相手がバタバタしているようだな、と感じると、遠慮してタイミングを計ります。「こんなつまらないことで相手の時間を潰しては悪いな」と思い、自分なりに調べて進めてはみるけれど、それがいつのまにか指示されたものとずれてしまって、後で大きく修正することになり、二度手間になることも。また、ふと思った疑問をそのまま口にすることは恥ずかしいと思って、格好いい質問をしようとすることに時間をかけてしまいます。その結果、上司や取引先とのやり取りが必然的に少なくなり、仕事をしているのにしている、と思ってもらえない状態に陥ります。

■シンプルに、思った通りに聞けばいい

 上記のように思ってしまうときは、過剰配慮に陥っています。相手が感じる配慮と、自分が感じる配慮のバランスが取れていないのです。

 実は、コミュニケーションはあなたが考えているよりずっとシンプルです。自分が想像した「忙しそう」は、相手が実際に「忙しい」と感じるものとはズレがあるもの。聞きたい! と思ったらその時に聞けばいいし、うまい質問の仕方を考えるために余計な時間を使う必要はないのです。タイミングが悪い場合は「ちょっと待って」と言ってくれるはずですし、質問の意図が分からなかったら、「どういう意味?」と聞いてくれるはずですから。

 また、「相手に迷惑が掛からないように、要件のみで簡潔に伝えよう」と思った結果、結論だけのシンプルなメールを書いてしまって、かえって失礼な人だと誤解されたり、そう考えるに至るプロセスをもう一度質問されたりすることもあるかもしれません。このような傾向がある方は、あなたが思いやりの心を持って考えたプロセスまでばっさり切ってシンプルにしようとしている可能性があります。用件はシンプルにしてもいいですが、配慮したプロセスまでシンプルにする必要はありません。

 例えば、相手が忘れているかもしれないことをリマインドするメールを送るときなどは、用件だけでなく「蛇足かもしれませんが、私はいつもこのような状況で忘れてしまうことが多いため、念のためお送りします」の一言があるだけでも印象は全く違うものになりますよね。

 かくいう私も、新卒で入った会社では質問するタイミングをうかがっているうちにどんどん仕事がたまっていき、自分なりにアレンジした仕事をするからとんちんかんな結果になり、よく注意されました。また、メールが長すぎる、と注意されたので極端に短くしてしまい、意味が通じなくなったり、失礼な表現になったりもしました。そのときに上司に言われた一言ではっとしました。

 「あなたは、ふと思ったことの裏を考えすぎて違う形に変えてしまうクセがある。素直に思ったままを質問しなさい」

 その一言で、素で聞いてダメならそこで直せばいいし、自分のふと思った考えをこねくり回さなくてもいいんだ、と肩の力が抜けました。コミュニケーションは難しい、と思っているから余計に難しくなります。相手にさまざまな配慮ができるあなたなら、人をぐっさり傷つけるほど、あなたの言葉のナイフは鋭くないのです。まずは思った通り、感じた通り質問したり、伝えたりすることを意識してみましょう。

働き方が柔軟になるのはうれしいことですが…… (PIXTA)

2.自分の業務内容を周囲に見える形にするのが苦手

 仕事をどんどん振られる傾向がある方は、自分のキャパがどのくらいか、どれだけ仕事を抱えているかを伝えるのを面倒臭がり、だったら自分がやったほうが早い、とばかりにまとめて引き受けてしまいがちです。優秀な人は特に、本気を出せばなんとかこなせてしまうため、他の人に頼めば後々ラクになるものも「自分でやったほうが早い」とサッサと終わらせてしまうのです。

 今は働きぶりをきちんと周囲が見てくれるため、あなたの仕事の処理能力の高さからすぐに仕事が終わるのだ、と理解してくれる環境にいたとしても、今後リモートワークが普及してくると、説明せずにサッサと終わらせてしまうことで「なんだ、簡単なんだ」と思われる可能性があります。今でも忙しいのに、さらにヘビーな仕事がどんどん増えていったらたまらないですよね。

■仕事の「粒」を所要時間とともに見える化しよう

 そのような状態を未然に防ぐためにも、「仕事の粒」を細かくする(すべきタスクを細かく分解する)ことを意識しましょう。その際に所要時間も意識してみると、自分がしている仕事がどの程度の工数がかかるものかを説明しやすくなるのでさらにいいです。

 例えば、「企画を考える」という仕事は、次のように分解できます。

□ キーワードに関連する資料を片っ端から読む(4時間)
□ 関連キーワードをGoogleアラートに登録する(5分)
□ 伝えたい主張を導く(60分)
□ 主張のメリットを考える(30分)
□ 主張したことにより出てくる反論を考える(60分)
□ 反論をどう覆すかのデータを集める(60分)
□ 予算を計算する(30分)
□ スケジュールを考える(30分)
□ 誰になにをお願いするかを考える(40分)
□ 企画資料をノートにラフで書く(60分)
□ パワーポイントで作り出す(60分)

 ここまで分解すれば、新しい仕事の依頼が来たときに、これ以上仕事を受けるには、この仕事のこの部分は後回しにしていいですか? それとも他の誰かにお願いできますか? という交渉もできるようになります。

■仕事内容を正確に見積もる力をつけよう

 自分でやったほうが早いと思って仕事をしてきた方にとっては、仕事の粒を小さくすることを習慣化するのは少し骨が折れる作業ですが、今から習慣化を始めれば、今後テレワークの仕事が増えたときにラクになりますよ。

 私は、一生懸命やっている人たちが、まっとうな評価を得られる世の中を夢見ています。頑張っている仕事を軽く扱われたり、頑張っていないと思われたりしたら悔しいですよね。きちんとあなたの頑張りを評価してもらえるための一歩が、自分の配慮や思いを素直に伝え、かつ仕事内容を正確に見積もることなのです。できるところからでかまいません。ぜひ試してみてくださいね。

池田千恵
 株式会社 朝6時 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や官公庁、個人に向け、図を活用したプレゼンテーション資料作成術、企画書作成術や会議進行術など、「伝わる」コミュニケーション全般について指南。女性のキャリア形成、ダイバーシティなどをテーマに講演、著述活動も行う。『絶対! 伝わる図解』(朝日新聞出版)、『描いて共有! チーム・プレゼン会議術』(日経BP社)などプレゼン・図解に関する著書多数。最新刊は『朝の余白で人生を変える 』(ディスカヴァー21)。

[nikkei WOMAN Online 2017年3月27日付記事を再構成]

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