「運動後、最も疲れているのは筋肉」はホント?
この記事では、今知っておきたい健康や医療のネタをQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。
(1)ホント
(2)ウソ
正解は、(2)ウソ です。
長時間ジョギングをしたり、営業で走り回ったり、四六時中座りっぱなしでデスク作業をするなどして「疲れた」と感じたとき、体の中のどこが最も疲れているのでしょう。
「デスクワークだと脳だろうけど、運動の後なら、そりゃ筋肉でしょう」。そんな意見が大半を占めそうですが、「実は、両者の疲れは同じで、どちらも『脳』の疲れです」と、東京疲労・睡眠クリニックの院長・梶本修身さんは話します。
運動を始めると、自律神経の働きにより、数秒後には心拍が上がって、呼吸が速く大きくなり、やがて汗をかきます。これを運動中休むことなくコントロールしているのが、脳の中にある中枢(視床下部や前帯状回)です。だからこそ、運動をしたとき、脳は体のどの部分よりも疲れるのだと梶本さんは話します。
「運動時に起こる疲れは、運動で酷使しているはずの筋肉の疲労ではなく、多くは脳疲労です。運動を続けていると自律神経に疲労がたまり、あたかも筋肉疲労を起こしたかのようなアラームを発して運動をやめさせようとします。それが筋肉の疲労として感じられるのです」(梶本さん)
実際、梶本さんは以前、96名の健康な人を対象に、運動時や、デスクワークなどの精神作業時に、どこにどのくらい疲労が生じているかを計測する負荷試験を行ったことがあります。その結果、スクワットなどの筋肉をいためつけるような一部の激しい運動を除いて、自転車こぎやジョギングなどの有酸素運動を4時間やった程度では、筋肉はほとんどダメージを受けないという結果が出ました。
自律神経に蓄積される疲れの要因は、一言で言うと「細胞のサビ」だといいます。運動が激しくなると、自律神経の中枢での処理が増え、その結果、体内で活性酸素が発生します。これにより脳細胞が酸化ストレスにさらされ、自律神経の機能が低下する。この状態が「疲労」につながるわけです。
(日経Gooday編集部)
[日経Gooday 2017年4月10日付記事 を再構成]
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