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スマホかざせばその場で会話翻訳 先端技術の開発加速 メガホン型も登場、「おもてなし」手助け

2017/4/13 日本経済新聞 朝刊

凸版印刷が開発した音声翻訳アプリ「TabiTra(たびとら)」(東京都文京区)

 「浅草にはどうやっていけばいいですか?」。駅や街中などで電子看板(デジタルサイネージ)に向かって語りかければ、英語や中国語などの言語に自動で音声翻訳してくれる――。東京五輪に向け、凸版印刷がそんな装置の開発に取り組んでいる。

 4月からはその前段階として、スマートフォン(スマホ)やタブレット端末で自動翻訳できる無料アプリ「TabiTra(たびとら)」の提供を始めた。スマホを挟んで、英語や中国語、韓国語の3カ国語を日本語と相互翻訳できる。文字入力の翻訳も可能で、フランス語やアラビア語など20カ国語に対応する。

 訪日旅行客があらかじめダウンロードしておけば、旅行中にアプリを起動して近くにいる人へ道案内などを気軽に頼める。また、駅員や旅館、百貨店の店員なども、旅行客からの質問に対応できる。

 凸版印刷の西村仁TIC旅道プロジェクト課長は「英語が苦手な人も、気軽に会話を楽しんでもらいたい」とアプリ開発の狙いを話す。今後は街中に設置するデジタルサイネージへの搭載を目指す。多言語案内や地図を表示できるサイネージは東京五輪に向けて駅構内や商業施設への採用が増加している。サイネージに翻訳システムを搭載すれば、アプリをダウンロードしていない人でも利用できるようになる。

訪日外国人の誘導を想定し、東京メトロが導入したメガホン型翻訳器「メガホンヤク」(東京メトロ九段下駅)
選択した定型文がスピーカーから再生される

 「黄色い線の内側まで下がってお待ちください」。駅職員がパナソニックが開発したメガホンを通じて話すと、自動的に中国語に変換。ホームを歩く中国人旅行客に注意を促す。

 メガホン型自動翻訳機「メガホンヤク」。英中韓3カ国語に翻訳して繰り返し再生できる。300の定型文をあらかじめ登録し、顧客の要望があれば追加できる。日本語で話すと液晶画面に文字が出て、間違いがなければ発声する。かなり長い文章でもスムーズに聞き取るほか、多少の言い間違いなら自動修正する。

 定型文を画面から選ぶ方法だと、緊急時に必要な文章を探す手間がかかってしまう。素早く正しく翻訳するために「当社のノウハウを応用し、高い音声認識機能を実現できた」(無線ソリューション開発部の田中和之課長)と胸を張る。

 開発を始めたのは2年前。新しいサービスを生み出す一環で試作機を作っていたところ、成田国際空港会社(NAA)から「貸してほしい」と声がかかった。そこから毎週のように課題を話し合い、何度もだめ出しを受けながら改良を重ねた。空港での実験を皮切りに評判が広まり、昨年まで約30の企業・団体に貸し出して使い勝手を試した。

 液晶画面が見にくい、重い、音量が小さい……。「頂いた宿題を一つずつ解決することの繰り返しだった」。無線開発ソリューション部の竹井良彦係長は苦笑する。顧客の要望と技術者の工夫を組み合わせ、昨年末に実用化に踏み切った。サービス開始から2カ月余りでNAAや東京メトロなど約20社と契約を結んだ。

 言葉の壁を越え、東京五輪を訪れる外国人への「おもてなし」の質をハードで引き上げる――。そんな日本メーカーの取り組みはこれからも続く。

〔日本経済新聞朝刊2017年4月13日付〕

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