ライフコラム

立川談笑、らくご「虎の穴」

「七三分け」に見放され 「スポーツ刈り」に行き着く 立川吉笑

2017/4/9

PIXTA

 毎週日曜更新、談笑一門でのまくら投げ。今週のお題は「ヘアスタイル」ということで、今週も次の師匠まで無事にまくらを届けたい。

 最初に結論から述べると、落語家の理想のヘアスタイルは七三分けである。

 老若男女、あらゆるお客様に好印象を与えられる最強のヘアスタイルが七三分けだからだ。

 極度な長髪だったりアフロだったりの個性的なヘアスタイルはお客様の気が散ることがあるかもしれないし、丸刈りだと「頭が寒そう」とお客様に心配させてしまう恐れがあるから、どう考えても七三分けが最も優れたヘアスタイルだ。

 しかしながら、僕のヘアスタイルは七三分けではない。

立川吉笑さん(東京都武蔵野市)

 もちろん落語家として何度も七三分けに挑戦したけど、その都度七三分けに突き返されて来た。七三分けの壁は高い。

 七三分け風のヘアスタイルでよければ、僕だってできるかもしれないけど、完全なる七三分けにしようと思えば、途端に難しくなる。

 僕みたいな未熟な人間が七三分けにしようと思うと、ベストを尽くしたところで八二分けが限界だろう。八二分けまではすんなりできるようになったけど、その八二分けから七三分けに持っていくことの難しさったらない。人間の髪の毛は七三に分けにくいように生えているのだから。

 入門直後。今思えば若気の至りで恥ずかしさしかないが、まだ若くてとがっていた当時の僕は、無謀にも七三分けにしようとしてしまった。人気もお金も無いけど、夢だけはあった頃の話だ。あの頃はいつか空を飛ぶことだってできると思っていたし、七三分けになれるとも思っていた。

 延べ2ヵ月くらいだったか、毎日毎日七三分けに挑戦したけど、決まって一九分けになってしまった。七三どころか五五のセンター分けにすら己の髪の毛を差配できないことに愕然(がくぜん)とした。そこで僕は自分が選ばれた側の人間ではないことを自覚した。初めての挫折というやつだ。

 根拠のない自信を木っ端みじんに打ち砕かれた僕は、自分の才能の無さを自覚し、だったら努力するしかないと、それまで以上に修業に打ち込んだ。そして、そんな僕の姿から師匠や兄弟子も何か感じ取ってくださったのか、それまで以上に親身になって指導してくださることになった。

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