それだと生返事! 日本人が避けるべき3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(24)はっきり答えにくいとき
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回ははっきりした返事ができない案件に答える場面です。
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「この間頼んでおいた報告書なんだけど、いつ頃私に送れそう?」と聞かれました。「実はまだ手を付けていないんだよなあ」と心の声。こんなときの答え方はやはりむずかしい。やる気がないわけではなく、今ちょっと手いっぱい。何とか早く終えたいと思っているのは本当なのですが……。
When will you be able to send me the report? と聞かれたら?
正しい訳:金曜日まではできるかもしれない。
影の意味:金曜日までの可能性はちょっとある。
may の過去形 might。過去形には文を丁寧にする働きがありますが、実は might と may、確率としては might の方が低く、50パーセント以下。この場面での might は、それほどやる気がないことが伝わってしまいます。I might...は「どうしようかな」のニュアンス。I might do it and I might not. と言えば「まだどちらか決めていない」という意味。
正しい訳:金曜日にはできるかもしれない。
影の意味:分からないけど、金曜日かな。
guess は「推測する」の意味。I guess. は真剣に質問を答えていないことが伝わるひと言。I guess I could do it by Friday. であれば「金曜日までにできるかなあ」と聞こえるいい加減な答えになります。
正しい訳:金曜日までにはやってみます。
影の意味:(今、ちょっと思ったんだけど)金曜日までにはやろうかなあ。
will は「未来と意思」を表すと習った人も多いかもしれません。決して間違いではありませんが、例えば、I'll visit Rome this summer. と言うとき、この発言者は確固たる予定や意思を持っているわけではありません。「夏のヨーロッパはいいらしいよ。だから僕はミラノへ行くことにしたんだ」という友人との会話の流れの中で、出てきた発言と考えられます。「そうなのか。じゃあ、僕はローマに行ってみようかな」。もし、予定が決まっているのであればI'm going to visit Rome this summer. となります。
これなら「影の意味」はない!
決定的な答えは言えないけど、一番有力なのは金曜日です。
definitive「最終的な/決定的な」はあまり日本人が使わない単語ですが、a definitive answer のようになかなか使い勝手のよい言葉です。
金曜日を目途にしています。もし遅れそうであれば、水曜日には伝えます。
*aim for:目指す 「遅れることがあっても水曜日にはその旨伝えます」は責任感のある答え。相手のスケジュール調整の邪魔になりません。
今は分かりませんが、明日には具体的に答えます。
相手の問いをはぐらかさない。聞かれたことには誠実、かつ具体的に答えることが大切です。
あなたが知らない本当の使い方―― guess
・Guess what? I got a promotion! ちょっと聞いて聞いて!昇進したの!
* Guess what? は直訳すれば「何だか当ててみて!」の意味。「ちょっと聞いてよ!」「何だと思う?」のように会話の初めに言えば、相手の興味を引くこと間違いなし。そのためのひと言です。
・I'm not sure who did it, but my best guess is Sally. 誰がやったのか確かではありませんが、有力なのはサリーです。
* best guess:いくつかの推測や予測はあるけれども、その中では最も有力なもの、正解に近いもの
・It's anybody's guess when the package will be delivered. 荷物がいつ着くのかは誰にも分からない。
*anybody's guess:誰にも推測/予測できないこと、
・It's my guess that sales will increase slightly next month. 売り上げは来月には若干上がるのではないかと思います。
*It's my guess that:「that 以下は私の推測です」が直訳。すなわち「~ではないかと思います」ということ。
・When do you think Sam will get here? Take a guess. サムはいつここに着くと思う? 当ててみて。
*take a guess:予測する、予想してみる、当てずっぽうを言う
・It's a good guess that the package will arrive today. 小包が今日届くと考えるのが妥当です。
*good guess:よい読み、よい推測
*It's a good guess that:that 以下のように考えるのが妥当である
・A: How did you know sales would drop? 売り上げが落ちるってどうやって分かったの?
・B: I just made a lucky guess. まぐれです。
*lucky guessは「幸運な推測/予測」。make a lucky guess なら「(推測したらたまたま当たっちゃった)まぐれ当たりをする」ということ。
・Let me make an educated guess about what's going to happen. 何が起きるか、およその見当をつけてみますね。
*educated guess は lucky guess などと違って「知識や経験などに基づいた推測/予測の意味」になります。
*make an educated guess:正確性の高い推測をする
・I've never done this type of work before, so it's mostly guesswork. この種の仕事は以前にもやったことがないので、ほとんど当て推量なんです。
*guesswork:推測しながらやってみること、当て推量
・A: Sorry, but I don't know the answer. ごめんなさい、答えは分かりません。
・B: Just take a wild guess. (はずれてもいいから)当ててみて。
*wild guess:大雑把な推測
・There's no guess what the customers will think. 顧客がどう思うかを推測する方法はありません。
*there's no guess:予測/推測する方法はない
案外日本人が気軽に使っている guess ですが、あくまでも「推測/予測」に過ぎません。相手が確実な答えを求めていたり、切羽詰まった状況の時に I guess…ではあまり緊張感がないと思われる可能性がありますが、guess が本当に意味すること、そこから派生する様々な表現を覚えることで、会話にバリエーションが出るのも事実です。上手な guess を取り入れてみるのも悪くありません。
Hang in there!
: D セイン
米国出身、20数年前に来日。 企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。