セレブが究極のおしゃれを競うアートな夜 メットガラ
宮田理江のおしゃれレッスン
「世界最大のファッションの祭典」「最もあでやかなレッドカーペット」と呼ばれるファッションイベントが「メットガラ(MET GALA)」です。2015年5月に開催されたメットガラの準備プロセスを記録したドキュメンタリー映画『メットガラ ドレスをまとった美術館』(2017年4月15日公開)は、セレブリティーたちが究極の装いを競い合う舞台裏を描き出しています。ガラに来場するゲストの趣向を凝らしたファッションからは、センスアップのヒントを得られそうです。
そもそも「メットガラ」とは、ニューヨークのメトロポリタン美術館を舞台にした壮麗なチャリティーパーティーのことです。「メット」は同美術館、「ガラ」は大がかりなイベントを指します。ファッションに関する膨大な収蔵品を誇る同美術館では毎年5月から、ファッションをテーマにした大規模な展覧会が開かれます。メットガラはそのオープニングを祝うパーティー。同時に寄付金を集めて、同館のファッションに関する取り組みを応援しようというのが狙いです。
このドキュメンタリー映画では、「中国」をテーマに据えた展覧会を企画したキュレーターのアンドリュー・ボルトン氏が実質的な主人公です。彼を全面的にバックアップするのは、モード誌「VOGUE」米国版のアナ・ウィンター編集長。映画『プラダを着た悪魔』に登場する鬼編集長のモデルにもなった、モード界の大物です。2人がガラと展覧会の準備に奔走する8カ月間をカメラは追っていきます。
ガラに来場するゲストはこの上なく豪華に着飾って、パーティーの盛り上げに一役買います。来場者の装いには「テーマにつながる表現が必ず盛り込まれていること」という条件が付いています。今回は「中国」を連想させる赤や黄色を使った装いが数多く見られました。赤も黄色も近ごろの注目カラーだけに、ゲストたちの着こなしは参考になります。セレブらしい堂々とした着姿は、こうしたビビッドカラーはおじけずに着るのが上手にまとうコツだと教えてくれます。
中国テイストを印象づける東洋風のモチーフも、ガラ来場者に選ばれていました。この春夏は、国境や民族を大胆に交わらせる「クロスカルチャー」のアレンジが活気づいています。まるで「反グローバル」の動きをファッションで乗り越えようとするかのようです。中国モチーフや和柄のエキゾチックな雰囲気を、あえて英国流のチェック柄や涼やかなマリンボーダー(横縞)などに交わらせると、ムードを深くできます。
毎回話題を集めるメットガラですが、次回は初めて日本人デザイナーへオマージュを捧げます。「コム デ ギャルソン」ブランドで知られる川久保玲氏の特別展が開催されるのです。指折りの着こなし上手たちが、日本を代表するデザイナーの世界をどう解釈して装いに写し込むかは見物(みもの)です。
セレブがガラで見せるゴージャスな装いを、服で真似るのはかなり難しいところがありますが、普段より少し華やいだアクセサリーや靴、バッグなどであればワンランク上のおしゃれを試しやすくなります。今回の映画公開にあわせて、「H.P.FRANCE(アッシュ・ペー・フランス」が各店で開催するコラボレーションイベントでは、この春夏ファッションを盛り上げてくれるアイテムが用意されています。ウィットに富んだ独創的アイテムを身につけることで、ガラ気分やアートムードをまとえそうです。
メトロポリタン美術館には服飾関連の展示施設「アナ・ウィンター・コスチューム・センター」があり、ファッション感覚を刺激してくれます。日本にも文化学園服飾博物館(東京・渋谷)や神戸ファッション美術館(神戸市)などがあるので、機会をみて訪ねてみれば、着慣れた手持ちワードローブの新たなスタイリングに気づくきっかけにもなりそうです。
『メットガラ ドレスをまとった美術館』 4月15日(土)からBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか 配給:アルバトロス・フィルム (C)2016 MB Productions, LLC
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報、リアルトレンドを落とし込んだ着こなし解説などを発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かした「買う側・着る側の気持ち」に目配りした消費者目線での解説が好評。自らのTV通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。著書に『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(学研パブリッシング)がある。
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