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保険に家族で7本加入 「入りすぎ」かと思うが実は? ファイナンシャルプランナー 竹下さくら(1)

2017/4/21

 一方、棒グラフは住居費、子ども関連費、生活費を積み上げた支出です。Oさん一家はあまり物欲がなく、子どもの大学進学前(グラフAでは53歳時)に住宅ローンを一括返済することが家族の目標で、現在は手取り年収の約3分の1を貯蓄に回しているとのこと。

 今後は子どもの教育費がジワジワ増えていくため、今のようなペースで貯蓄を続けるのは難しくなりそうです。とはいえ、収入と支出が逆転するのは住宅ローンの一括返済をする53歳時を除けば、65歳から年金生活に突入した後のことになりそうです。

 そこで、Oさんの年金保険の出番となるわけです。Oさんが1998年に加入した年金保険を詳しく調べてみると、払込保険料の合計額が約450万円なのに対し、60歳から10年間で受け取る総額は約720万円という“お宝保険”でした。年金生活で不足する老後資金を補うのにとても有効なので、解約せず大切に続けるべきだと判断できそうです。

■死亡保障は過不足なしの見込み

 続いて気になるのは「死亡保障」です。勤め先の「団体生命保険」にOさん2000万円、妻1000万円で入っています。果たしてこれで足りるでしょうか。

 グラフBは、Oさんが今すぐ亡くなったと仮定した場合の今後のキャッシュフローです。赤い線の手取り収入を見ると、42歳時に死亡退職金を受け取った後は、子ども2人がそれぞれ18歳(Aさんが生きていたら54歳と58歳時)を過ぎるたびに遺族基礎年金がなくなるために収入が減る流れで、その後は妻が65歳(Oさんが68歳)になるまで中高齢寡婦加算が受け取れます。

グラフB

 一方、支出を見てみると、住宅ローンを組む際に団体信用生命保険に契約しているので住宅ローン残債はゼロになり、住居費は固定資産税等の維持費だけで済みます。加えて、Oさんが亡くなった際には「ぜいたくは言っていられないので私立の予定だった中学校・高校は公立にする」とのことですから、グラフAより大幅に少なくて済んでいます。それでも、毎年の収支は常に赤字に陥ることがわかります。

 ただし、よく見ると、赤い線(収入)を超えた支出の大半は子ども関連費で、子ども1人あたりの教育費を1000万円と見込めば、保険金額2000万円の「団体生命保険」でなんとかなりそうです。死亡退職金や貯蓄でその他の不足分を補えそうなら、現在のところこの額で適切です。子どもが独立した段階で、減額もしくは解約するといいいでしょう。

■追加で備えるべきは就業不能保障

 さて、残りの保険を見ると「がん保険」は診断給付金・入院・通院・先進医療保障付きで、夫婦2人で月額3000円ほどの保険料です。「子どもの共済」は入院・通院・手術・死亡・第三者賠償保障100万円がついて1人1000円と割安なので、家計に無理がないようなら続けてOKです。

 以上、見てきた範囲では、Oさんが契約している7本は、「もしかしたら他のFP事務所で相談済みなのでは?」と思ってしまうほど、過不足なく上手な加入状況でした。一見多いようですが、無駄な保険はないと思われます。

 ただ、完璧を期すなら、就業不能リスクにもぜひ対応してほしいと思います。いま、亡くなることより怖いのは、Oさんが病気やケガで働けなくなる事態です。収入が途絶えるうえ、住宅ローン返済をはじめとした家計支出は続くため、一気に計算が狂います。公的な保障もありますが、もしものときに備えて、お給料のようにお金が受け取れる就業不能保険や所得補償保険を検討してみてはいかがでしょうか。

竹下さくら
 ファイナンシャルプランナー。損害保険会社・生命保険会社に勤務後、FPとして独立。主に個人のコンサルティングを行うかたわら、講演・執筆等を行う。主な著書に『「保険にはいろうかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)、『知らないと損をする!  間違えない保険選びのツボ』(同)などがある。

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