香りでリラックス、ダイエット効果も 烏龍茶の飲み方
緑茶や紅茶と同じ茶葉を発酵したのが、烏龍(ウーロン)茶。含まれるポリフェノールには数多くの健康効果が報告されている。香りも楽しめる烏龍茶をご紹介する。
中国や台湾で生産される烏龍茶は、中国茶の中で青茶(チンチャ)に分類される。
烏龍茶を効かせる飲み方は:1日1リットル
「緑茶、紅茶、烏龍茶はすべて同じ茶木から作られるが、製造方法による発酵の度合いで、色や香り、味の違いが生まれる」と説明するのは、華泰茶荘 渋谷店を手がけ、日本での中国茶の普及に努める林聖泰さん。実は、烏龍茶は15~17%に発酵を進める品種もあり50%発酵を意味する「半発酵茶」のような明確な定義はないという。そのため、茶葉により発酵度が非常に幅広く、地域の特色も色濃い。「凍頂」などの頭言葉は、産地の独特な風味の特徴を表している。
健康面では、発酵・製造の過程でカテキンがさまざまな形で重合した「ウーロン茶重合ポリフェノール」という独特な成分を生み出す。静岡県立大学茶学総合研究センターのセンター長である中村順行さんは「ウーロン茶重合ポリフェノールは機能性の研究が遅れているものの、期待される効能としては、血圧降下作用、中性脂肪の低下などが報告されている」と話す。海外の研究では、烏龍茶を飲んで体重が減ったという報告がある。
烏龍茶本来の味と香りを堪能するには、茶葉で抽出して飲むのがベスト。「1日に約1リットルを、4回ぐらいに分けて飲むのがお薦め。茶葉の量は種類や好みによるが、お湯150mlに対して茶葉3~5グラムを目安に調整するとよい。道具がなくても、ティーポットなどでも十分」と林聖泰さんは話す。
烏龍茶の6つの健康効果
1.脂肪の吸収を抑制する
ウーロン茶ポリフェノールは脂肪の吸収に働く酵素を抑制する、排出を促す作用がある。国内の研究で、高脂肪の餌を与えたラットに烏龍茶を飲ませたところ、水を飲んだラットよりも、脂肪排出量が30%多かったという動物実験の報告もある。
2.太め・肥満の人の体重を減らす
肥満患者を対象にした中国の臨床試験で、1日8グラムの烏龍茶の茶葉を使用したお茶を1日4杯、6週間飲んでもらったところ、体重、体脂肪率や血中中性脂肪値、ウエストサイズが有意に減少したという報告がある。また、動物実験でも体重が減ったという報告がある。
3.歯周病を予防し虫歯を抑制する
健常者9人を対象に、烏龍茶やコーヒーに含まれるカフェインを27日間取ってもらった結果、歯周病原因菌である特定の菌の発育が減少。また別の実験では、ミネラルウオーターよりも烏龍茶の方が、歯垢の沈着や虫歯を抑制することが確認されている。
4.動脈硬化、脂質異常症の予防・改善
烏龍茶に含まれるカテキンには、胆汁酸の排出を促進する働きがあり、これにより血中コレステロールの上昇を抑制する。コレステロールの過剰な増加は、動脈硬化や脂質異常症の原因となるため、これらを予防する効果が期待できる。
5.アトピー性皮膚炎を改善する
121人のアトピー性皮膚炎の患者が、2.5倍に濃縮した烏龍茶を1日400ml、4週間飲用することによって、64%の患者でアトピー性皮膚炎症状が改善したという臨床試験の報告がある。抗アレルギー剤と比べ、ほぼ同等の有効率だと結論づけた試験もある。
6.肌を美白する可能性がある
烏龍茶を飲むことで、紫外線で引き起こされるメラニン色素の沈着を抑制できる可能性が注目されている。マウス由来の細胞に、烏龍茶抽出エキスを添加し、紫外線照射によるメラニン量の変化を観察すると、水摂取群と比べて有意に抑制されたという。
日本で最も有名な中国茶といえば烏龍茶。手間ひまかけた製法で幅広い発酵度を実現し、種類も豊富。「香りを聞く」といわれるほど、香りが高いのが魅力だ。その香りを十分に堪能するために編み出された茶道具や茶器も多い。そんな奥深い烏龍茶のトリビアとは?
中国大陸と台湾は異なる製品が誕生した
中国烏龍茶(青茶)の誕生は1600年代半ばと伝えられている。以降、福建省北部や南部、広東省東部に広がった。台湾には1800年ごろ、中国から茶木を持ち込み栽培されたと伝えられるが、「諸羅県誌」によると、それ以前に野生の茶木を加工して飲んでいたという説も。
烏龍茶は"半発酵茶"、発酵度で形も違う
烏龍茶は中国茶の分類上「青茶」と呼ばれ、半発酵で作られた茶の総称。半発酵といっても、緑茶に近い発酵度15%のものから、発酵度70%と極めて紅茶に近いものまである。さらに、品種や焙煎の要素も加わるので種類は多種多様だ。
<中国大陸烏龍茶>
肉桂岩茶(ニッケイガンチャ) 発酵度50%:甘い香りが印象に残る味
福建省武夷山の険しい場所で育つ。肉桂はシナモンの意味。キンモクセイのような甘い香りが楽しめる。飲み終えた後も印象に残る味わい。
鉄観音茶(テッカンノンチャ) 発酵度40%:香ばしく食事にも合う
香ばしさの奥に柑橘系の香りがある。体脂肪を分解させて消化を助ける。中性脂肪が気になる人にお薦め。体を温める効果もある。
鳳凰単叢(ホウオウタンソウ) 発酵度40%:茶木ごとに異なる風味
広東省を代表する烏龍茶。細くよじれたオレンジに近い茶褐色。花や果実のような香りと繊細な味。1株ごとに異なる味わいを持つ。
<台湾烏龍茶>
文山包種茶(ブンサンホウシュチャ) 発酵度15%:ランの香りで集中力アップ
紙に包まれて売られていたことからこの名が付いた。「ランのような香りで、集中力アップ、朝の目覚めを促す効能も期待」(林さん)。
東方美人茶(トウホウビジンチャ) 発酵度70%:独特な蜜のような香り
発酵度が70%と高く、数ある烏龍茶の中でも紅茶に近い味わい。台湾を代表するお茶「オリエンタル・ビューティー」として有名。
凍頂烏龍茶(トウチョウウーロンチャ) 発酵度20~30%:花粉症やむくみにも効果的
さわやかな香りと味にコクがあり、バランスの良い台湾を代表するお茶。近年では、花粉症やむくみにも効くとされ、注目されている。 (分類と発酵度のデータ:林聖泰さん)
烏龍茶の正しいいれ方
1.茶器を温める茶壺にお湯を入れて温める。茶壺を温めた後、お湯を茶杯と聞香杯に移して温める。茶壺は陶器が最も保温力が高いので烏龍茶には最適。
2.茶葉を入れる 茶葉の量は好みにもよるが、丸くよじれた茶葉は茶壺の底が埋まる程度が適量。カサのある大きい茶葉は、器の1/2~1/3が埋まるくらいが目安。
3.お湯を注ぐ 沸騰したお湯を茶壺に少量注いですぐに捨てる。再度、90度ぐらいのお湯を少々あふれる程度、勢いよく茶壺いっぱいに注ぎ入れる。
4.蒸らす 蓋をした陶器茶壺の上から熱湯をかけて茶葉が開きやすいように蒸らす。お湯をかけることで保温性も高まり、熱さを保つことができる。
5.注ぎ入れる 30秒ほど経過したら、茶杯と聞香杯を温めていたお湯を捨てる。初めに茶壺から、聞香杯にお茶を注ぐ。必ず1煎ごとにお茶は出し切ること。
6.香りと味を楽しむ 聞香杯に注いだお茶を茶杯に移す。空になった聞香杯を鼻先に持っていき、器に残った香りを楽しんだ後、茶杯のお茶を味わう。
[おいしく飲むためのコツ]
「お湯の温度は90度以上が基本。豊かな香りとしっかりした味わいが好みなら100度に。1回の茶葉で5~6煎楽しめる。1煎目はお湯を入れて30秒~1分ほど蒸らす。2煎目以降は、前の抽出時間に30秒ずつ足していくのがポイント」(林さん)。一般的な方法でいれるときも、抽出時間に注意を。
【烏龍茶ライフを充実させる+αレシピ】
烏龍茶はどの茶葉でも香りが良いので一種類だけでも楽しめるが、他の茶葉や香辛料などを加えると、全く異なる味わいに変わり、烏龍茶の世界が広がる。4つのレシピは、ベースに凍頂烏龍茶を使ってアレンジ。
烏龍茶+ドライフルーツ(アンズ1個) 女性にうれしい様々な美容効果大
アンズに含まれるβ-カロテンには乾燥肌を防ぎ皮膚の健康を保つ働きがある。むくみを解消するカリウムや便秘を防ぐ食物繊維も豊富。干したアンズは生のアンズに比べて、鉄分が約8倍にもなる。烏龍茶に入れて習慣的に食べることで、貧血予防にも役立つ。
烏龍茶+唐辛子(1本) カプサイシンの効果で体を芯から温めて冷え改善
唐辛子に含まれる辛み成分カプサイシンの働きで、一時的に体温が上昇し、体を温めるので冷え性の改善にも役立つ。発汗が促進されダイエットにも効果的。腸を刺激し、ぜん動運動を促し、便秘解消にも効果が期待できる。唐辛子は2分ぐらいで取り出そう。
烏龍茶+菊花(1つまみ) 自然な甘みと香りが特徴、風邪の予防やひき始めに
漢方薬の材料としても知られる小さい菊の花を乾燥させたもの。ほんのりとした自然な甘みと清らかな香りが特徴。眼精疲労回復、せき止め、鎮痛など風邪の予防やひき始めにも効くといわれている。解熱効果も期待できるので、夏の暑い時期にもお薦め。
烏龍茶+キンモクセイ(桂花茶、お好みで) 甘い香りで目にも鮮やか、消化を助ける作用も
甘い香りが立ち上り、目にも鮮やかな黄金色の水色が特徴。甘みが強いが、すっきりとした凍頂烏龍茶とのブレンドは、後味も良く飲みやすい。キンモクセイは、高まる気持ちを落ち着けたいときによい。消化を助ける作用もあるので、食後の一杯に最適だ。
華泰茶荘 渋谷店店主。NPO中国文化協会 中国茶インストラクター協会 理事長。台北一の歴史を誇る老舗「林華泰茶行」「華泰茶荘」の5代目後継者。自社の茶畑や全国の契約栽培茶畑を指導するとともに、日本華泰茶荘店主を務める。著書に『おいしい中国茶。』(PHP研究所)がある。
静岡県立大学 食品栄養環境科学研究院 茶学総合研究センター センター長。 農学博士。岩手大学大学院修了後、茶の品種改良に従事。おくひかり、香駿などの数品種の育成に携わる。2016年に「日本茶業功労者表彰」など多くの受賞歴をもつ。現在、センターで茶の生産からマーケティングまで、幅広く活動中。
(ライター 高橋晴美、写真 鈴木正美、スタイリング タカハシユキ)
[日経ヘルス 2017年4月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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