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起業家集めてスポーツ産業創出 目標はシリコンバレー 動き出す「横浜スポーツタウン構想」(下)

スポーツイノベイターズOnline

2017/4/17

「THE BAYS」1階のショップ「+B(プラス・ビー)」
スポーツイノベーターズオンライン

 横浜DeNAベイスターズが推進する「横浜スポーツタウン構想」の中核施設「THE BAYS(ザ・ベイス)」が、2017年3月18日にオープンした。これまで横浜スタジアムや横浜公園を起点に進めていた「コミュニティボールパーク」化構想を、THE BAYSを拠点に街レベルに展開し、街づくりや新産業創出を目指す。国内のプロスポーツチームとして先駆的な取り組みとなる「THE BAYS」の概要を紹介するとともに、そこに懸ける思いを同社社長の岡村信悟氏に聞いた。

■中核拠点「ザ・ベイス」にシェアオフィス

 「スポーツ×クリエーティブ」をテーマに、新産業を創出する――。「THE BAYS」の最大の特徴は、2階に開設した「CREATIVE SPORTS LAB」にある。

 これは、会員の企業やクリエーターがオープンイノベーションを通じて商品開発などを行うことを目指すシェアオフィス。2月16日時点で、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科、横浜ゆるスポーツ協会、超人スポーツ協会/慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科、スノーピークビジネスソリューションズなどが連携会員(有料)となって入居することが決まっている。さらに、月1万円の会費で個人が参加することもできる。

「CREATIVE SPORTS LAB」のオープンスペース(3月16日撮影、会員の入居前)

 例えば、慶応義塾大学大学院SDMは、横浜DeNAベイスターズと共同研究契約を結び、最新のセンシング・画像解析・AI(人工知能)技術を用いて選手などのデータを収集・分析し、スポーツパフォーマンスを向上するためのサービスなどを開発するという。

 横浜ゆるスポーツ協会や超人スポーツ協会はそれぞれ、ハッカソン(短期集中的なソフトウエアの共同開発)を開催するなどして新スポーツを開発する。横浜ゆるスポーツ協会は、年齢・性別・運動神経などにかかわらず、誰でも参加できる“ゆるい”スポーツを開発する。一方、超人スポーツ協会は最新技術とスポーツを融合し、既存の概念を超える新スポーツを創造する。

 こうした新スポーツを、隣接する横浜スタジアム内で実証したり、プロモーションしたりする。

2階の「CREATIVE SPORTS LAB」のフロアデザインは、スノーピークが監修。テントは同社の製品で、共通のワーキングスペースとしてテント内で打ち合わせができる

■横浜の街でアウトドアフィットネス

「THE BAYS」の外観。横浜市の指定有形文化財である「旧関東財務局」の内部を改装した

 THE BAYSの地下1階は、スタジオスペースを活用した体験型プログラムの拠点となっている。BEACH TOWNがヨガやピラティスを中心に、月間140本程度のフィットネスプログラムを展開する。横浜公園や横浜の街を舞台にした、ランニング、ヨガなどのアウトドアフィットネスも行う。

 また、瀬古利彦氏が総監督を務めるプロの陸上チームである「横浜DeNAランニングクラブ」が、子供向けのスポーツ体験型コンテンツを提供する。

 THE BAYSは、横浜市の日本大通りと横浜公園が結節する場所に立つ「旧関東財務局」の建物を改装した施設。昭和初期に建設され、横浜市の指定有形文化財になっている。横浜DeNAベイスターズは、2016年10月から15年の定期賃貸借契約を市と結び、れんが造りの壁などをそのままに、港町ならではのおしゃれな施設に仕上げている。

 入り口となる1階には、ファンだけでなく市民が気軽に立ち寄れる、野球をテーマにしたカフェとショップを開業。カフェでは、これまで横浜スタジアムで提供していた球団のオリジナル醸造ビールも提供する。試合のない日でも、多くの人が集まるコミュニティー空間を目指すという。

1階のカフェ「&9(アンド・ナイン)」。オリジナルの醸造ビールを販売

■スポーツにエンターテインメントを

 以下では、THE BAYSについての岡村信悟社長のインタビューをお届けする。

――なぜプロ野球の球団が、THE BAYSのような新しい取り組みをするのですか。

横浜DeNAベイスターズ代表取締役社長の岡村信悟氏。総務省を経て、2016年4月に株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社。DeNAスポーツの事業部長、横浜スタジアムの社長を兼務すると同時に、2016年10月16日に社長に就任した。THE BAYSの1階にあるショップ「+B」のロゴの前で撮影

岡村 今やプロ野球というコンテンツは、地域との結び付きなしには語れなくなりました。ベイスターズも横浜に移転して来年で40シーズン目。単に横浜スタジアムで試合を観戦していただくだけでなく、もっといろんな形で市民の方々に活力を与えられる「ソフトインフラ」になりたいと考えています。

 そのために、横浜スタジアムでより多くの体験をしていだくための仕掛けをし、さらにそのエネルギーを外に拡散していきたい。その最初の取り組みとなるのがTHE BAYSです。

――THE BAYSの理想の将来像とは、どのようなものですか。

岡村 横浜を「スポーツのシリコンバレー」にしたいと考えています。THE BAYSは、そのための最初の拠点です。ただ、すごく小さいので、ここで終わってはいけない。出発点となって、街全体に広がっていく力を生み出したいと思います。

 私には、ぼんやりとではありますが、将来のイメージが見えています。新しく増改築された横浜スタジアム。その2階部分には、スタジアムを一周できるコンコースがあります。その大きなスタジアムで“にぎわい”がつくられ、横浜公園の入り口に立つと、にぎわいが大さん橋の方へ海に向かいすっと1本の道になっています。

 そしてTHE BAYSでは、いろんなアイデアを実現した起業家たちがスポーツ産業の地平を広げ、それを世界に向けて発信するのです。

 我々は、できるだけ多くの知恵がここに集まるようにコーディネートしていきたい。それが役割だと思っています。

――どのような新産業が生まれることを期待していますか。

岡村 スポーツの概念を広げる動きが出てくることを期待しています。例えばVR(仮想現実)やAR(拡張現実感)を活用しながら、よりエンターテインメント性が高い広義のスポーツが生まれる。さらに、スポーツツーリズム。スポーツ観戦を目的としたエンターテインメント性のある宿泊施設が誕生したら面白いでしょう。

 そして健康関連事業。少子高齢化社会に突入しているので、老若男女、誰でも参加できるスポーツが生まれたりすれば、いいですね。

 こうした新産業の創出において、トップアスリートが近くにいたり、スタジアムがあることは重要です。例えば、慶応義塾大学大学院SDMは、センシング技術などを用いてアスリートのデータを収集・解析することを計画していますが、実際にベイスターズの選手がやってきて生体情報などを取得することも検討しています。

 また、THE BAYSで開発したゆるスポーツなどを、横浜スタジアムで実施してテストすることもできます。今年1月には横浜スタジアム内を走る「ハマスタ駅伝2017」を開催しましたが、コースがスタジアムを飛び出してもいいと思います。

――「横浜スポーツタウン構想」のようなスケールの大きな街づくり計画は、日本を見渡してもあまりできる都市がないように思えますが。

岡村 プロ野球の12球団を見渡しても、我々のような好条件を有するところは少ないと思います。横浜市は約370万人、神奈川県は約910万人の人口を抱えています。東京だったらいろんな街に分散してしまいますが、神奈川県の中心は明らかに横浜です。

 横浜は近代発祥の地という文化的な伝統を持ち、街としてブランドが確立しています。そして、街の真ん中にはスタジアムがあり、、そしてスタジアムと一体となって関内地区の街づくりがなされようとしているところに、東京五輪もやってきます。まさに絶好の機会です。

――2020年の東京五輪までの3年半弱は、重要な時期になるのではないでしょうか。

岡村 これからの3年半が勝負です。チームが強くなり、球団事業もうまくいかなくてはなりません。その間、スタジアムは改修するので物理的な制約も大きくなります。それを乗り切って、皆さんに常に先のビジョンを提示し、期待していただくようにならないといけません。

 私としては、東京五輪を通過点にTHE BAYSで生まれた新たな産業が広く展開していくのが理想です。そのとき、「横浜スポーツタウン構想」が本格稼働となります。

(日経BP社デジタル編集部 内田泰)

[スポーツイノベイターズOnline 2017年4月5日付の記事を再構成]

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