年金・老後

定年楽園への扉

公的年金 ライフスタイルで変わる受け取り方法 経済コラムニスト 大江英樹

2017/4/6

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 ご存じのように、公的年金は今後、ほとんどの人で65歳から支給開始になります。しかしながら、60歳から繰り上げて受け取ることもできますし、70歳まで受け取りを延ばすこともできます。

 私自身は、つい先日65歳を迎えたところですが、70歳まで受け取りを延ばすことにしました。多くの人があまり知らないのが、年金の受け取り方はかなり融通が利くということです。70歳まで繰り下げるには、何か特別に申請しなければならないというわけではありません。

■年金は申請しないと受け取れない

 年金そのものは申請しないと受け取れません。従って、65歳の時点で何もしなければ、いつまで経っても受け取れないのです。逆に考えると、つまり70歳まで年金を繰り下げようと思ったら、何もせずに放っておけばいいわけです。65歳の時点で、何歳まで繰り下げますということを決める必要は全くありません。

 仮に70歳までは受け取らないと決めて65歳の時点で支給の申請をしなかったとします。ところが2年ぐらい経って67歳の時に受け取りたくなったら、その時点で申請をすればそこから受け取ることができます。

 年金は1カ月支給を繰り下げるごとに0.7%ずつ支給額が増えます。この場合のように2年間繰り下げると、24カ月×0.7%で16.8%増額された年金が生涯にわたって受け取れるということになります。もしこれが68歳だと3年繰り下げることになるので36カ月×0.7%で25.2%の増額です。予定通り70歳までだと60カ月×0.7%で42%の増額ということになるわけです。

 さらにもう一つの受け取り方法があります。それはそれまでに支給されていたはずの年金をまとめて受け取るというやり方です。例えば先ほどの67歳の例でいえば、そこから16.8%増額された年金を受け取るか、あるいは65歳から67歳までの年金分をまとめてその時点で受け取ってそこからは増額されない通常の年金額で受け取るか、どちらかを選ぶことができるのです。

 年金は受け取り可能となる65歳以降は、5年以内ならさかのぼって請求することが可能です。いわば「年金の支給請求を忘れていたので、ここで申請します」ということです。私自身、このやり方を知らず、65歳になる直前に年金事務所で聞いて、なるほどと思いました。

 例えば、当初は年金を受け取る予定はなかったけれども途中で少しまとまったお金が必要になったという場合にはその時点でそれまでの分をまとめて受け取っても構わないのです。私の場合、現在は働いて収入がありますから年金は70歳まで受け取らないと決めていますが、いつ何時、仕事が来なくなるかもしれませんし、病気で働けなくなるかもしれません。そういうときには70歳まで待たずにさかのぼって受け取ればいいわけです。

■元気で働けるうちは受け取らない選択肢

 年金は一度受け取り始めるとやめることはできませんので、65歳になったからといって慌てて受け取る必要はありません。自分は働けるのか、健康はどうなのか、老後はどう過ごしたいのかといったライフスタイルを勘案してじっくりと決めればいいのです。要するに65歳の時点では年金の受給権というオプションを完全に手に入れたと考えるべきでしょう。

 年金はよく「何歳から受け取れば得か」とか「何歳まで生きたら元がとれるか」ということで語られがちです。しかし、年金の本質は貯蓄ではなくて保険です。長生きしたときに生活に困らないようにするための保険なのです。従って、元気で働けるうちは受け取らず、働けなくなったら年齢に関わらず受け取るのが極めて合理的な考え方だと思います。

 もちろん、健康の問題などで60歳から繰り上げで受け取っても一向に構わないのです。要はその人の状況次第ということです。このように年金を受け取りオプションの付いた保険だと考えると、かなり便利なものに思えるはずです。

 年金には様々な選択肢があります。年金の受け取り開始前には、一度近くの「年金事務所」や「街角の年金相談センター」へ相談に行ってみることをお勧めします。

 「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は4月20日付の予定です。

大江英樹
 野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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