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早いうちにロールモデルになるような先輩や上司と一緒に働くことができれば成功にいち早く近づけます。しかしそのロールモデルがいない、という話を聞くようになりました。

それは、あの人みたいになりたい、というあこがれが消えてしまったということなのかもしれません。そんな状況を生んでしまっている会社に勤務しているとすれば、私たちはどのような選択肢をとるべきでしょうか。

社内で尊敬できる人を上げてもらうアンケート

会社の中の評価制度を作る際に、ハイパフォーマー(高い業績を上げる人)たちに重点的にインタビューしたり、アンケートをとったりすることで、理想的な人材像を探すことがあります。この時、もっとも重要なことは「誰がハイパフォーマーなのか」ということです。

ハイパフォーマーとは、これからのビジネスを成長させる力を持った人たちです。多くのハイパフォーマーたちは、周囲の人たちを巻き込み、やる気を高めて、成功に導いてゆきます。

ビジネスが右肩上がりで成長している状況で、ビジネスを取り巻く変化も穏やかな場合のハイパフォーマーとは、実績を上げてきた人です。だから過去の人事評価の結果が高い人たちや、すでに出世して高いポジションについている人たちをハイパフォーマーと仮定して分析することができます。このような状態においては、ロールモデルは世代を通してつながっていると考えられます。つまり、先輩や上司を真似して行動していれば、やがて自分も出世していける状態です。

しかし変化が激しい状況においては、ハイパフォーマーを単純に決めることはできません。そもそも今のビジネスがうまく行っていないとすれば、新しい戦略にそって活躍できる人は誰なのか、ということを探さなくてはいけないからです。

そのために、予測を含めたアセスメントを実施することが増えています。私たち人事コンサルタントのような専門家の面接によってアセスメントをする場合や、社内の部下や同僚たちからの多面評価をもってアセスメントをすることなどがあります(2017年4月発売の人事専門誌「労政時報」に、アセスメントについての私の寄稿が特集として掲載されているので興味のある方はご覧ください)。

そこまで手間をかけなくとも、単純にアンケート形式で「社内の誰がこれからも高い業績を上げる人だと思いますか」という質問を投げかけることもあります。あくまでも参考情報としてですが、多くの人に認められている人は、ハイパフォーマーである可能性も高いと考えられるからです。

しかしこのアンケートに対して、残念な結果が返されることがしばしばあります。それは「この会社にはいません」という回答が一定数返ってくることです。

ロールモデル断絶の基準は15%

ハイパフォーマーを探すアンケートは、たいてい記名式で行います。つまり誰がその回答を記したのかがわかる状態のアンケートです。単純に推薦が多い人をハイパフォーマーだと判断してしまうと、人数が多い部署の人が優遇されることになってしまうので、それを避けるためです。

なのに、その回答欄に無記入や、あるいは「この会社にはいません」という回答を記す人たちがいるのです。興味深いことに、どれだけ良好な人間関係を保っている会社でもそういう回答は一定割合で存在します。だから、ここまでの割合であれば会社としては大丈夫、という基準値があります。その基準値は15%。

これはあくまでも、私が経営するセレクションアンドバリエーションとして実施してきたアンケートに基づく基準値ですが、おそらく他の方々が統計を取っても大きくはずれないでしょう。

みなさんも考えてみてください。今の会社で、「社内の誰がこれからも高い業績を上げる人だと思いますか」という問いかけへの答えを。そこで誰の名前も思い浮かばない人が15%を超えたとしたら、それはどんな状態なのでしょうか。

ああなりたい、と思える先輩や上司がいない=ロールモデルが断絶している会社は、はたして正常な状態だと言えるでしょうか。

そして、もしこのアンケートを無記名で行ったとしたら? 評価制度の設計においてそれは無意味なのであえて行いませんが、なかなか恐ろしい結果になるであろう会社も散見されます。

だからこそチャンスであると考えることもできる、けれど

もしあなたの会社がそのような状態だと考えられるとしたら、どのような選択をすることが必要なのでしょうか。考えられる選択肢はそれほど多くはありません。

(1)会社が新しい取り組みをするのを待つ
(2)上司や先輩にはっぱをかけてやる気を出してもらう
(3)自分が他人のロールモデルになれるように自己研鑽に励む
(4)さっさとあきらめて転職する

あなたならどの選択肢を選ぶでしょう?

(1)の選択肢は、会社を信じるという意味では良いかもしれません。しかしあまりに受け身的すぎる気がします。それにそもそも、ロールモデルが断絶するまで手を打っていない会社を信じることに無理があるようにも思います。

(2)は、親しい上司や先輩がいる状況なら良いでしょう。あこがれとまではいかずとも、頑張ってほしい先輩や上司がいるということは、一緒になって会社を変えてゆけるかもしれないからです。

(3)のように、自分自身がロールモデルになるために頑張る、と思える人にとって、今の会社はチャンスなのかもしれません。その場合、一足飛びに経営層との親交を深めながら、部下を育てていくことが望ましい行動でしょう。

しかし多くの優秀な人は、(4)の転職を選ぶのではないでしょうか。それは決して間違った選択ではありません。

人事コンサルタントの立場で会社の中に深く入って知ることは、残念ながら、変われない会社もある、という事実です。オーナー社長が、どうしても部下を信じることができない場合があります。あるいは、サラリーマン社長として、社内でのあつれきを嫌う場合があります。前者のような会社では、親族か社長のお気に入りしか出世できませんし、後者の場合には声の大きな人が年功的に出世していくことが多くなります。

自分自身の優秀さを曇らせないためにも、時には自ら会社を去る選択肢も必要になります。時代はその選択肢を後押ししてくれています。可能性が低い会社で耐えるより、可能性が高い会社をいち早く選ぶことも、また出世戦略のひとつです。

平康慶浩
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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