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学問が息づく街 スウェーデンの古都ウプサラ 東京大学准教授 五十嵐圭日子氏

2017/4/7

ウプサラ大聖堂。あまりの巨大さゆえに町中のどこからでも見つけることができる

 私は大学院生のときに米ジョージア大学に留学し、スウェーデン人の教授に師事して研究を行っていた。彼はわざわざスウェーデン製の高級車、ボルボを輸入して乗っていたくらいに愛国心の強い人であったが、その先生からこんな話を聞いたことがあった。

 「キヨ(私のこと)、『ヴェニスを見て死ね』という言葉を知っているか? もちろんベニス(ベネチア)は世界で最も美しい街の一つであることは認めるし、死ぬまでに1回くらいは行った方がよい。でも、私が育ったウプサラ(Uppsala)という街は、北欧で最も美しい街だから、お前が死ぬまでには必ず行くんだぞ」

 その数年後、私は博士号を取得し、ポスドクとして海外で武者修行をしようと思ったときに選んだのはウプサラ大学であった。その先生が退官されてスウェーデンに戻っていたこともあったし、なにしろそこまで美しいのなら、ぜひともこの目で見たかったのである。武者修行期間も1年間と決まっていたので、四季を感じるのにはもってこいだと考えて、ウプサラ大学への留学を決めた。

■北欧最古の大学

リンネ立像。植物学者であり分類学の祖であるリンネは、ウプサラの象徴と言える

 スウェーデンの首都ストックホルムから北西に40キロメートルほどのところにあるウプサラは、ウプサラ大学の存在なくしては語れない。東京と東京大学というような関係を考えると違和感があるかもしれないが、ウプサラの場合は街全体に大学のキャンパスがちりばめられており、教会があると思うとその隣は大学の建物、商店街があるかと思うとその先に大学の図書館が現れるような、街と大学が一体化したようなところなのである。東京大学が開校したのが1877年なのに対して、ウプサラ大学の創立はなんとそこから400年も前の1477年。学問を語るにはなくてはならない場所なのだ。

 多くの著名人を出しており、中でも私にとって身近な科学の分野で有名なのは、植物分類学の祖でラテン語を使った「学名」の仕組みを作ったカール・フォン・リンネと、水が凍る温度をセ氏0度、水が沸騰する温度をセ氏100度とし、現在も広く使われている「セルシウス度(℃)」を考え出したアンデルス・セルシウスであろうか。他にもアンデルス・オングストロームは原子間の距離を表すのに重要な単位(100億分の1メートル)にその名を刻まれている(Å、「オングストローム」と読む)ことを考えると、ウプサラ大学の有名人は皆、ルール作りがうまかったと言えるかもしれない。

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