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4年目も予約殺到 東北レストラン列車が若者呼ぶ理由

温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト 石井宏子

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NIKKEI STYLE

列車に乗るのではなく、ココはレストランの玄関

「お待たせいたしました。東北レストラン鉄道、『東北エモーション』ご乗車の準備が整いました」

乗車時刻が近づいてくると、ホームに赤いじゅうたんが敷かれる。ドアの上にはランプがかけられ、入り口にはおしゃれなテントも取り付けられている。黒服に蝶(ちょう)ネクタイ、白い手袋姿の支配人が立ち、本日のオープンコール。全席レストラン空間の鉄道旅の始まりだ。

レストラン列車は観光列車とは大きく違うところがある。それはもちろん「食事」。観光列車で提供されるのは別の場所で調理して運び込まれるケータリング式の「お弁当」だが、レストラン列車では「料理」。東北エモーションは3両編成の真ん中にある2号車が丸ごとキッチンカーになっていて、シェフたちが列車内で料理をつくっている。乗車の際は全員が2号車の扉から乗り込むので、よい香りが漂うこのオープンキッチンを眺めてワクワクしながら席に着くことになる。

東北エモーションはシーズンごとにシェフが代わるため、繰り返し乗車するファンづくりに役立っている(筆者もその一人だが)。ことし3月から9月の期間は、異例の親子競演が実現した。宮城県塩釜市のフランス料理店「レストラン・シュヌー」のオーナーシェフ赤間善久さんと、長男の赤間善太さんが前半・後半をリレーで担当する。これは話題となっており、今回お父さんの料理をいただいたら、7月ごろにまた息子さんの料理を食べ比べに乗車したいという声を車内でも聞いた。

若者のグループやカップルにも大人気の理由

東日本大震災の復興支援と地域活性化を目的に誕生してから4年目を迎えた今も、相変わらず予約が取りにくい人気が続いている。しかも他の地域の観光列車に比べて若い世代の客層が目立つ。価格の手ごろさもあると思うが、大きな理由は魅力的なデザイン性。レストランをイメージした外装はエレガントな白。手書き風のイラストタッチでれんがの壁を表現している。だまし絵のようなテクニックで描かれた線画の立体感に心を奪われる。三陸海岸の青い海、青い空を走る景色にスッキリと浮かび上がるデザインだ。

プロジェクトマネジメントは、「CLASKA」「堂島ホテル」「木屋旅館」など次々とヒットを飛ばしたトランジットジェネラルオフィスの中村貞裕氏と岡田光氏のコンビ。外装デザインには高級車フェラーリやポルシェなども手がけた工業デザイナー、奥山清行氏など多くのクリエーターたちが関わり、列車に乗ることが目的のひとつになる「新しい旅のカタチ」を目指した。

1号車は7室のコンパートメント個室車両でリッチな気分が味わえる。個室の入り口には専用のクローゼット収納があり、長旅にでかけるような旅情を誘う。廊下に通じる秘密の扉がありサプライズの仕掛けになっていた。壁面は福島の刺子織をモチーフにして温かみを感じさせるつくり。

3号車はオープンダイニング車両。椅子は作り付けではなく、とても座り心地のよいしっかりとしたもの。岩手の琥珀(こはく)をイメージした照明は安らぎを感じるやわらかな光、床の紋様は青森のこぎん刺しをモチーフにしている。小さな列車の中とは思えない「レストラン空間」に感激した。1、3号車のどちらからも2号車のライブキッチンへ行き来できるので、料理人たちのイキイキした躍動感と熱々の料理の香りが楽しめる。

東北の伝統工芸は美食の玉手箱

列車は八戸と久慈の区間を2時間弱で走る。景色をゆっくり楽しんでもらうために、景勝地では特にスピードを落として走行する。八戸発の往路はランチコース付きで、復路はデザートビュッフェ付き。この往復両方を楽しむ人も多い。

ウエルカムはりんごのスパークリング。画家のパレットのようなトレーでサービスされる。次に運ばれたのは秋田の大館曲げわっぱ。柴田慶信商店の作で、手にしっくりとなじむなめらかな曲線、ふたをあけると秋田杉の香りがふわっと広がる。天然秋田杉を白木で使うことによりごはんや食品の水分を程よくおいしく保ち、殺菌効果で傷まないという伝統のお弁当箱。日本の知恵は美しくて素晴らしいなあとほれぼれと見とれてしまった。中にはエビとモッツアレラチーズのパートブリック包み。パリッとした皮の中にチーズのとろりと濃厚な味わい、ぷりぷりのエビがアクセントになっている。

前菜のアソートは福島・会津桐。俳優・伊勢谷友介氏が代表を務めるリバースプロジェクトのデザインだ。会津塗のふたをスライドさせると6種類の料理が登場する。三陸のウニのムース仕立てコンソメゼリーは、とろける食感。白身魚とタコのマリネなど、色とりどりの新鮮な魚や野菜などがいただけるのも列車内で調理するレストラン列車ならではだ。あおもりシードルとの相性も抜群で、ほかに山形の高畠ワインやビール、ソフトドリンクなども「お好きなだけ」注文が可能。

メイン料理のおいしい香りが漂ってきた。熱々で運ばれる料理はスピードも勝負。料理人と車内クルーの連携も見事だ。岩手・小久慈焼の皿にのった川俣シャモ胸肉のローストは、飴(あめ)色にしっとりと焼かれ、もっちりとしたうまみ。モモ肉の詰め物は複雑な味わいが重なるフレンチならではの逸品で、上にはフォアグラがのる。添えられたササニシキのリゾットもかみしめるほどにお米のうまみが感じられ、絶品だった。

大漁旗を振って出迎える洋野町の人々

列車内には料理のお品書きのほかに「景観のおしながき」がある。八戸線沿線の豆知識や速度を落として運転する見どころの場所、通過時間が記載されている。岩手県沿岸部の最北端に位置する洋野町では、宿戸駅から陸中八木駅の間の海岸に復興ドラム缶が並ぶ。東日本大震災の約1年後に八戸-久慈間の全線でレールがつながったという早期復旧への感謝の思いから作成されたメッセージだ。

東北エモーションが通過する時間には、地域の人々がこの場所で出迎え、歓迎してくれる。大漁旗をはためかせて走って追いかけてくれる姿に、乗客も乗務員も窓辺に総立ち。雨の日も雪の日も真夏の暑い最中でも、4年目に入っても、ずっとこの歓迎は続く。電車の姿が岬のカーブに見え始めたときから、遠ざかって見えなくなるまで、乗客も地域の人々も皆が手を振っている。何度経験しても感極まってしまう瞬間だ。

白いレストラン列車の白い宝石箱

料理の最後は、白い宝石箱。会津塗が世界で評価されるきっかけとなった「BITOWA」の宝石箱の中に4種類のプチフールが。春を感じる桜の花のマドレーヌ、シナモンとココナツのクロタン・ココ、濃厚なチーズのタルト、チョコレートサブレ。弘前のブナコの小皿は、やさしい風合いが窓辺の自然景観とマッチする。コーヒーや紅茶と楽しむフィナーレで、東北づくしの美食ランチを締めくくり、久慈駅へと到着した。

復路はゆっくり会話も楽しんで

復路は気分を変えてコンパートメントの個室に乗車。往路は興奮しがちなので、復路は少し余裕をもって会話も楽しみたい。多彩なデザートを食べ比べたり、オードブルをつまみに高畠ワインをいただいたりして、ゆっくりと景色を眺めて過ごそう。

最初にデザートのアソートプレートが運ばれる。中央には、三陸の「のだ塩」を使ったキャトルカール。ホワイトチョコで作られた東北エモーションのマークに気分が上がる。赤い果実のムースとほうじ茶のブランマンジュ。紅茶にもワインにも合うデザートだ。

「デザートとオードブルのビュッフェのご用意が整いました。みなさま2号車のキッチンへお越しください」

ジャズが流れるレストラン列車は、午後のティータイムも優雅なのである。

【東北レストラン鉄道・TOHOKU EMOTION】 びゅう予約センター 電話:03-3843-2001

石井宏子
 温泉ビューティ研究家、トラベルジャーナリスト。国内外の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆、テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)。

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