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南極のペンギン、実は590万羽いた 従来推定の2倍超

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/3/25

ナショナルジオグラフィック日本版

海から上がってくるアデリーペンギン。冬の間はオキアミと魚を求めて海氷の端に移住する。(PHOTOGRAPH BY CRISTINA MITTERMEIER, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 東南極(南極大陸のうち東半球にある部分)には、従来の推定個体数の2倍以上のアデリーペンギンが生息しているらしいことが、オーストラリア、アデレード大学の研究者の調査で判明した。新たなデータによると、その個体数は約590万羽で、従来の推定より約360万羽も多い。

 従来の手法では、繁殖しているペアを数えることでペンギンの個体数を予想していた。つまり、繁殖中でないペンギンは数えられていなかったことになる。「繁殖中でないペンギンは海に餌をとりに行っていて陸上のコロニーにはいないので、数えるのが難しいのです」と、オーストラリア南極局の海鳥生態学者ルイーズ・エマーソン氏は説明する。

 研究チームは今回、上空と地上からの調査および自動撮影した画像の情報を組み合わせて、数回の繁殖シーズンにわたってペンギンの個体数を調べ、推定個体数を更新した。

■海岸は大混雑

 個体数が予想外に多かったことに喜んでばかりはいられない。アデリーペンギンのコロニーは南極大陸の全域に広がっていて、南極の夏に相当する10月から2月までは、ペンギンたちはほとんど陸上にいて巣作りと繁殖にいそしんでいる。その間、おとなのペンギンは、海に魚やオキアミを食べに行くのに50キロ近く歩かなければならないこともある。

 ペンギンの個体数がこれだけ多く、活動範囲も広いことから、ペンギンと人間の相互作用はこれまで考えられていたより頻繁に起きている可能性がある。論文の筆頭著者で海鳥生態学者のコリン・サウスウェル氏によると、アデリーペンギンは氷がない岩場に巣を作るのを好むが、研究者らもキャンプを設営する際にはまさに同じような場所を選ぶからだ。

 サウスウェル氏は、研究ステーションから20キロ圏内で100万羽以上のペンギンが繁殖していると推定する。「研究ステーションの近くで重要な繁殖集団を特定すれば、将来、重点的に保護すべき地域が見えてきます」とサウスウェル氏。

■激増から激減へ

 個体数がこれだけ多ければなんの心配もないように思われるかもしれないが、アデリーペンギンは重大な問題に直面している。南極大陸は気候変動の影響を受けやすいからだ。氷が移動し氷河が融解すればペンギンの生息地は減少するし、海水が温暖化すれば採餌は困難になるおそれがある。

 さらに、南極大陸の温暖化により、繁殖期に雨が降ったり氷が解ける時期が早まったりすれば、生まれたヒナがまだ十分に成長していない時期にコロニーに水たまりができてしまうかもしれない。水たまりができると、水をはじく羽毛をもたないヒナの体が濡れて、低体温症を引き起こすおそれがある。

 米デラウェア大学の研究者が昨年発表した研究によると、現在あるアデリーペンギンの生息地の半分以上が、今世紀末までにペンギンのコロニーに適さなくなるかもしれないという。(参考記事:「ペンギン繁殖地、今世紀中に最大60%が不適に」

 2015年のインタビューでサウスウェル氏は、海氷が解けると東南極のペンギンがオキアミや魚を食べやすくなり、個体数が激増する可能性があると語っていた。一方で、その傾向が長期にわたると、メリットよりもデメリットが勝るとも警告していた。

 「私たち人間にも言えることですが、どんなに良いものでもありすぎると困るのです」とサウスウェル氏。

 ちなみに、南極大陸の別の地域のアデリーペンギンは厳しい状況にある。南極西側にある米国のパーマー基地周辺では、この30年にペンギンの個体数が80%も減少している。

(文 Sarah Gibbens、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年3月16日付]

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