驚くほど集中力アップ 生産性が高まる3つの新発見
"もったいない"脱出の仕事術

コミュニケーション・コーチの岩田ヘレンです。うれしいことに最近、このコラムの読者からメールをいただくようになりました。コラムの読者の方たちをより理解するための助けにもなりますので、ご質問やご要望があればどんどんお送りください。
さて、前回の記事「実行するたび幸せ度上がる『後回しにしてたこと』」で、2月の私のキーワード「SYSTEM AND SPACE」についてお伝えしましたが、実際に「小さな目標」を立ててやってみた方はいますか? 結果はいかがだったでしょうか。
私自身の成果についてお知らせしましょう。まず、SYSTEMについてはかなりうまくいきました。仕事のテンプレートだけでなく、チェックリストもつくりました。いくつかのSYSTEMをつくったことで、自分だけでなく、一緒に仕事をしているチームの人たちの効率も上がりました。
では、もう1つのキーワードのSPACEはどうなったでしょうか。物理的なSPACE、例の玄関そばの収納スペースはどうなったかといいますと、みごとに片付いたのです! プリンターの周囲だけではなく、すべてです!
前回お伝えしたように、「目標を小さくして少しずつやる」ことはもちろん、効果がありました。ところが、実はもっと効果のある方法を発見したのです。
「誰かと一緒に」「時間限定で」取り組んだら、驚きの結果が
ある日、私はテレビ電話を介して、ある女性起業家と話をしていました。その日は朝からずっと、何となく疲れていて元気が出ないと感じていました。テレビ電話で「今日は何だか調子が上がらない。片付けが終わっていないのも気になるし……」と話すと、相手は「じゃあ、片付けを先にやってみたら?」と言ってくれたのです。
そこで私たちはすぐに、テレビ電話の両側でco-workingを始めました。私は片付けについて、相手は別のことについて小さな目標を設定し、「よーいどん」で25分間、集中して取り組みました。その間はパソコンの画面とマイクもオフに。25分たったら休憩を入れ、テレビ電話で「どうだった?」と結果をお互いに報告。これを繰り返したら、驚くほどの成果が上がったのです。
25分間の作業がたった2回で、なんと玄関そばの収納スペースが「全部」片付いてしまったのです。同時に、私が感じていたストレスはすべて消えてリフレッシュし、エネルギーのレベルがぐんと上がったのが分かりました。
25分間の集中タイムと5分間の休憩を繰り返すこの時間管理手法は「ポモドーロ・テクニック(Pomodoro technique)」という名前がついています。ポモドーロとはイタリア語でトマトのこと。手法を考案した起業家Francesco Cirilloが、トマト型のキッチンタイマーを使っていたのが由来だそうです。25分間は、ほとんどの人が何かに集中できる時間の単位だといいます。集中タイムが終わったら必ず5分間の休憩をします。
この手法は1人でももちろんできますが、私にとっては、誰かと一緒に同時にやることではるかに効果が上がりました。これは第一の発見でした。
別の仕事のパートナーとも一緒に、同じオフィスの中でそれぞれ別のことをしながらポモドーロ・テクニックをやってみたことがあります。スタートして数分後、彼女が何気なく席を立ち、トイレに行こうとしたのです! 私が驚いて彼女を見つめると、彼女はすぐに気がつきました。25分間を始めるときは、あらかじめ用事をすませる、飲み物を用意する、メールが気になるならオフにしておくなど、集中するための準備が大事です。慣れていないとつい、それを忘れてしまうのです。
集中する時間は、25分より長くても、逆に短くても自分に合わせてかまいませんが、重要なのは必ず休憩をとるということです。1人でやると25分がすぎても「やめるにはちょっと区切りが悪い」と思ってつい続けてしまい、休憩を忘れがちになります。ほかの人と一緒にやればきちんと時間を守れるというメリットもあります。
時間をきっちり守って必ず休憩を入れることは、集中力の維持に役立ちます。作家のアーネスト・ヘミングウェイは執筆をするときに終了時間をあらかじめ決めておいて、文の途中であっても必ずそこで終えたそうです。わざと中途半端に終わらせることで、次にそこから執筆を始めるとすぐに没頭できたのです。
さらに集中度を高めるための簡単なリスト
ポモドーロ・テクニックとあわせて生産性をアップするための2つめの発見は、To doリストに関することです。
仕事をするときにTo do リストを作る人は多いと思います。世の中にはいろいろなTo do リストを作っている人がいて、例えば「Don't do リスト(やらないことリスト)」というのがあります。「朝起きてすぐメールチェックをしない」「頼まれごとにすぐYesと言わない」など。一種のリマインダーですね。
最近私が実践しているのは、「Ta-daah! リスト」(できたー! リスト)あるいは「Done リスト」(完了したことリスト)です。夜、その日1日で何ができたかをリストアップして書いてみると、達成感が得られます。たくさん書くのは思い出すのも大変ですから、特に自分でもすばらしいと思えることを3つ、書くようにしています。
そして最近もう1つ、自分自身で編み出して、大きな効果を感じているのが、名付けて「Doing & Done リスト」です。これから何をやるかを1つだけ書き出して、それに集中するのです。終わったら線を引いて消して、また次にやることを書きます。
コンピューターの中にはいつもたくさんのTo do リストがあるのですが、それを見るとやることが多すぎるので気が散ってしまいます。そこで、たくさんのTo do リストを見ないですむように、そのときにやることを1つだけ付箋などに手書きで書いて取りかかると、集中度がとても上がるのです。「ランチをとる」「メールをチェックする」などもその都度書いて取りかかります。そのためにメールのチェックも1日数回に減らしましたが、ほかの仕事の合間にダラダラとメールをチェックするのに比べて、効率が大きく上がりました。
「しっかり休みをとる」のを邪魔しているのは自分自身かも
さて、先月のキーワードのSPACE。「場所」(の片付け)のほかにもう1つ、SPACEにこめていた意味は「余裕」でした。SYSTEMで仕事の効率を上げ、時間的な余裕をつくり、しっかり休みをとることも狙いの1つでしたが、ここでも発見がありました。
日本人と日本企業の「働き方改革」が大きな話題になっていますね。また、毎月最後の金曜日を「プレミアムフライデー」と呼んで、仕事を早めに切り上げようという提案もされています。たまたま2月の最後の金曜日は娘の学校が休みだったので、私も休みをとり、娘と娘の友人との3人で、日帰りでスノーボードに行きました(といってもまだそんなに上手ではありません。昨年、47歳から始めたばかりですから)。
そして、気付いたのです。「金曜日に1日休んでスノボに行った」というだけのことが、他人には言いづらいのです。「だけど、土曜日は仕事しましたよ!」などと、言わなくてもいいのについ付け足してしまうのです。社会と個人にとって「仕事は常に一生懸命、時間の許す限り、やらなくてはいけない」という刷り込みがいかに強いかの証明ではないでしょうか。「ちゃんと休みをとる」ことを妨げているのは自分自身だったのですね。これは3番目の大きな発見でした。
(実は、2月はこのほかにあと2度、休みをとっていたのです。娘が修学旅行に行っている間に夫とタイのバンコクに旅行しましたし、週末を利用して京都にも行きました。でも、この記事のために編集者と話をしていたときはなぜかそれらを言い出せませんでした。「休みをとって楽しんだ」ことを自分自身に対して認めるのがいかに難しいか、さらなる傍証といえそうです!)
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3月の私のキーワードは、「WARMTH AND WEALTH」(暖かさと富)にしました。2月の「SYSTEM AND SPACE」で役に立つ基盤がつくれたので、次は本業のビジネスであるコミュニケーション・スキルのトレーニングとコーチングでさらにたくさんの人を支援し、収益につなげることに集中したいと思ったので、「WEALTH」。でもそれだけでは冷たいイメージなので、もう1つ「家の環境」にもフォーカスしようと考えました。片付けはできたけど、もう少し家族のための暖かい環境や、人間関係も含めた「暖かさ」にフォーカスしたいと考えています。
さて、あなたは効率や生産性を上げるために、しっかり休みをとるために、どんなことをしていますか。ぜひメールで教えてください( helen@sasugacommunications.com )。あなたからのアイデアやリクエストをとても楽しみにしています。

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