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リゾート列車の至福 糸魚川の老舗割烹、大火から復活

温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト 石井宏子

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NIKKEI STYLE

真っ赤な列車がゆっくり近づいてくると、とても気分が高揚してくる。「『えちごトキめきリゾート雪月花』は、なぜ印象的な赤い色なんですか?」。専属車掌の樋浦重一さんに尋ねてみた。

「この路線は、地域の人たちが暮らす日常を走ります。山々に抱かれた田園風景や海辺の暮らしを感じる日本海沿岸は、いわば日本の原風景です。そこに一番映える色と考えたのが『朱色』ということです。神社の鳥居は朱色ですよね。あれは自然の中で神様が天空から見つけやすいように塗られているのだそうです」

「雪月花」の車体はラッピングではなく、手塗りで仕上げられている。日本の伝統的な朱色に、銀色のきらめきを練り込んだ「銀朱色」というオリジナルカラーの鉄製ボディー。そこに、何度も何度も色を重ねた手塗りならではの重厚な光沢が、目にした人みんなをワクワクさせる独特な高揚感をもたらしているようだ。

地域の誇りが結集したリゾート列車

越後の鉄道の歴史は、1886年(明治19年)に直江津から始まった。直江津駅の2番ホームには、今も鉄道スタートの起点の証しである「0キロポスト」が残っている。えちごトキめき鉄道はこの直江津を分岐点として、日本海沿いに糸魚川を経て市振駅までつながる「日本海ひすいライン」と、妙高の山々と田園風景を進み妙高高原駅に至る「妙高はねうまライン」の路線がある。

この両方の風景を眺めつつ、日本海の恵み、越後の山の恵みが詰まった地域の食事を楽しめるリゾート列車が2016年4月に誕生した。最も新しい鉄道、北陸新幹線の糸魚川駅と上越妙高駅の間を、新潟で一番古い線路がつなぐ、地域の誇りが結集したプロジェクトでもある。

運行は土日が中心。4カ月先までの月間運行スケジュールが発表されている。午前便は上越妙高駅から糸魚川駅へ。こちらは優雅なブランチ気分でいただく洋食で、ミシュラン二つ星シェフが供する越後上越フルコースだ。午後便は糸魚川駅から上越妙高駅へ。江戸時代から続く糸魚川の老舗割烹(かっぽう)「鶴来家(つるぎや)」の200年の伝統が織りなす和食の三段重。ぜいたくな週末の昼下がりを楽しめる。

糸魚川大火の被災を越えて

昨年12月22日、糸魚川市の駅北に発生した大火災によって、「雪月花」に料理を提供している鶴来家も被害を受け店舗が全焼した。5代目店主の青木孝夫さんは、出火当時、年末用の食材の買い出しで東京へ出かけていたそうだ。延焼の連絡を受けて急いで戻ったが、何も持ち出すことができないまま無念にも店舗は焼け落ちてしまった。

まだ火の手が収まらない中、えちごトキめき鉄道の本社事務所に1本の電話が入った。青木さんからだった。「1月8日から始まる『雪月花』の料理は、必ずこれまで通り納めさせてもらいます」。青木さんの思いに応えよう、鶴来家の味を「雪月花」で楽しんでもらいたい――みんなの思いは一つだった。

青木さんはすぐに行政機関を回り、調理設備や食材を調達。店舗から1キロほどの自宅の庭に仮の調理場を建て営業許可を取った。えちごトキめき鉄道関係者の協力もあって、食器などの資材も間に合わせることができた。こうして糸魚川を出発する大火後最初の「雪月花」に、通常通り鶴来家の三段重弁当が並んだのだ。

「何ひとつ変わらない、素晴らしいお料理でした。200年続く老舗の仕事とはこういうものなのだと、あらためて地域の誇りを感じました」(車掌の樋浦さん)

地域鉄道、観光列車の存在意義はひじょうに大きい。「雪月花」のプロジェクトがなかったら、こんなに早く鶴来家の味を再開することはできなかっただろう。現在、鶴来家は仮店舗の調理場で「雪月花」以外のお弁当・仕出しでの営業も再開している。将来、糸魚川での店舗再開を目指しつつ、当面は自宅の一部を改装して料理をふるまうスペースを用意する予定だという。

パノラマビューと越後づくしの車両

糸魚川から「雪月花」に乗車。銀朱色の車両に入ると、中は地元の木を使ったナチュラルなインテリア。国内の電車では最大級の展望といわれる大パノラマビューが魅力だ。背高のっぽの車両に天井近くまで広がる窓、ガラスはUVカット加工されており安心して景色を堪能することができる。

川西康之氏の設計デザインによるインテリアは越後づくし。1号車は越後杉を使い田園の実りをイメージ、海側へ向かってカウンター風に席が作られている。先頭部分はフリースペースの展望ハイデッキになっていて、運転席越しに線路が見え、まるで自分が運転しているような気分になれる。2号車にはブナ材が使われ、シックなレストラン・カー形式。2人席、4人席のほかに、コンパートメントになった指定席の展望ハイデッキ席(別料金)もある。

中間にはカフェバーカウンターの「さくらラウンジ」。こちらは桜材の壁、床は豪雪に耐える越後の名瓦「安田瓦」という、ぜいたくな越後三昧のしつらえ。列車内をうろうろ探索してみると、雪ダルマや桜、月といったモチーフが施されていたり、大きめの荷物をさりげなく収納できる棚があったりと、細かいこだわりが感じられる。

テーブルの上には木製の三段重、上に添えられた「鶴来家」の名前に感激もひとしお。列車旅の始まりは新潟のスパークリングワインだ。角田浜にある「フェルミエ」はこだわりのワインをナチュラル志向でていねいに造る評判の醸造家、本多孝さんが家族で営む小さなワイナリー。ここで造られた「雪月花」オリジナルボトル入りのスパークリングワインは、この車内で出発のときだけいただける。

日本海と越後の山の恵みがぎっしり

鶴来家の和食フルコースは、日本海の恵みと山の恵みが詰まっていた。一の重は糸魚川市の名産、紅ズワイガニのちらし寿し。ふんわりぷりっとした身をまるごとほおばると、甘みのあるカニの味わいが口いっぱいに広がる。酢飯の上に敷かれた錦糸卵は、糸魚川市にある新潟県立海洋高校の生物資源研究部が開発した魚醤(ぎょしょう)「最後の一滴」が隠し味になっている。

二の重は野菜や山菜の料理。「こくしょ」は汁なしののっぺ汁のような糸魚川地域の郷土料理。ニンジン、里芋、こんにゃくなどにだしの味が染み込んでいる。「えご練りと厚薄なますの蜜柑釜」は、日本海で採れる海藻「えご草」を使った新潟料理、えご練りと、かんきつの香り豊かな紅白なますとの相性が抜群。食べ始めると、温かいイワシのつみれ汁が運ばれてきた。

三の重は海の幸。マダイのうまみが凝縮されていて感激した山椒(さんしょう)焼き。北大路魯山人が糸魚川に来た時にふるまったマダイの調理法から考案された料理だそうで、ぴりりとした山椒の程よいパンチは、越後の地酒を注文したくなる。脂の乗ったブリは地酒「謙信」を使った幽庵(ゆうあん)焼き。大盛りのいくらがぜいたくな茶わん蒸し、幻魚(げんぎょ)、粟麩(あわぶ)の田楽添えなど、腰を据えて楽しみたい渾身(こんしん)の料理が詰まっている。

リゾート列車の旅を楽しくしてくれるのは…

単線箇所の待ち合わせなどを活用してホームに停車し、地元のみなさんが迎えてくれるお楽しみも待っている。直江津駅では、駅長さんと駅弁の立ち売りがお出迎え、気軽に記念写真に応じてくれる。駅弁の立ち売りは全国で他に4人ほどしか残っていないそうで、北陸新幹線の開業に伴い一度は消えた直江津駅の駅弁立ち売りが、「雪月花」の誕生により復活。これを知ったら、どうしてもお土産に駅弁を買いたくなる。

「新幹線では15分ほどですが、およそ3時間かけてゆっくりと越後を楽しんでいただく旅はいかがでしたでしょうか」。クルーのみなさんのおもてなしにも感激。沿線の風景や文化を絶妙のトークで説明し大爆笑させてくれる車掌さん。お客様それぞれのスピードに合わせて食事を運んでくれるアテンダントさん。停車待ち時間中には記念写真にも応じてくれる運転士さん。みんながこの列車や地域を心から愛している気持ちが伝わってくる。

二本木駅でスイッチバック。駅では地元各店の味自慢が並ぶ。妙高山の優美な姿が現れるころにはデザート、雪室コーヒー、そしてお土産に桑取産の特別栽培米までいただき、越後尽くしのリゾート列車は上越妙高駅へと到着した。

【えちごトキめきリゾート雪月花予約センター】 電話025-543-8988(受付時間・平日10:00~17:00)

石井宏子
 温泉ビューティ研究家、トラベルジャーナリスト。日本の温泉・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅の研究家。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)。

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