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過労死は「好きで仕事をしている人」にも起こる こちら「メンタル産業医」相談室(6)

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2017/4/13

いくら仕事が好きで苦に感じなくても、きちんと睡眠をとらないと、疲労はじわじわと心身をむしばんでいく(c)Dmitriy Shironosov-123rf
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 こんにちは。精神科医の奥田弘美です。前回「『過労』はサイレントキラー 体力がある人ほど注意」では、過労が知らず知らずのうちに私たちの心や体をむしばんでいくことを説明しました。そうした事態を防ぐために経営者が知っておくべきことについて、今日はお話ししましょう。

■「好きで仕事をしている人」も過労死やメンタル不調に陥る

 私は執筆業をしている関係で、中小企業の経営者の方とよく話す機会があるのですが、そこでしばしば耳にするのが「うちの社員は仕事が大好きなので、自ら喜んで残業している」「労働基準法の縛りはかえって社員の就労意欲の邪魔になっている」といった言葉です。これは過労の恐ろしさを認識していない、大変危険な意見だと思います。

 過労死は「好きで仕事をしている人」にも起こるときは起こります。また過労死だけではなく、仕事を継続できなくなるほどの重症な病気(メンタル不調も含む)も、疲労が蓄積すると「好きで仕事をしている人」にだって発生するのです。

 いくら仕事が大好きでも、きちんと休息し睡眠をとって疲労を回復させていかないと、疲労はじわじわ蓄積していき、心身をむしばんでいくのです。日本の中小企業系の経営者には、このあたりをご存じのない方がいまだ少なくありません。

経営者と雇われている人のストレスの質と量には、大きな違いがある(c)PaylessImages -123rf

 自らの意思でスケジュールや仕事内容を自由に設定できる経営者と違って、組織で働く社員は何らかの指揮命令系統に属し管理や制限を受けています。経営者には「仕事が好きでたまらない」とやる気をアピールしている社員でも、必ずといっていいほど「やりたくない仕事」を抱えていて、「無理して働いている時間」が存在するのです。

 つまり経営者と雇われている人のストレスの質・量には大きな違いがあるということ。当然ながら企業のトップと雇われている人とでは、仕事のストレスをコントロールできる裁量度(仕事のコントロール度、自由度)に大きな差があり、疲労のたまり具合も比べものになりません。

 このことは1979年にスウェーデンのストレス研究の第一人者である心理学者R.A.Karasek氏によって、「仕事の要求度-コントロールモデル」[注1]として示されており、産業医学では昔から認知されている有名な事実です。これは仕事のストレスを、仕事の要求度(仕事の量や質、時間)と仕事の裁量度(仕事のコントロール度、自由度)に分けて考えるモデルであり、次に示す図のように、仕事の要求度が高く裁量度が低いほど、ストレス度が高くなり、心身の不調を最もきたしやすくなります。

[注1]R.A.Karasek.Administrative Science Quarterly. 1979;24:285-311.

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