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不動産リポート

築40年、50年でも 価値を持ち続ける住宅の条件 不動産コンサルタント 長嶋修

2017/3/15

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 日本の住宅といえば「25年程度で建物価値ゼロ」が常識だったが、これを覆そうとする動きがある。簡単にいえば「築年数を無視した建物評価の仕組みの導入」だ。例えば築30年の住宅は、従来であれば一律「ゼロ評価」となったが、「事実上の築年数」を勘案して評価する仕組みを国が徐々につくりあげようとしている。

■あちこちに散らばる情報を一元化

 最も注目されるのは、国による「住宅データベースの整備」だ。これまでは自治体や法務局、国土交通省のウェブサイトなどを回って収集する必要があった各種の情報を一元化、そこに「住宅履歴情報」を組み込む。

 住宅履歴情報とは「竣工(設計)図書」「リフォーム図面」「ホームインスペクション(住宅診断)リポート」など、建物評価につながる図書一式のことだ。これらが整備されていれば裏付けを持って一定の建物評価ができる。このデータベースは既に完成しており、実証実験を経て早ければ2018年度には順次、全国で稼働する。

 このとき大事になるのは、具体的にどうやって建物を評価するのかだ。例えば建物を柱や骨組みなどの「主要構造部」、コンディションが一定であれば価値が変わらない「雨漏り防止部分」、経年で減価していくキッチンやユニットバスなどの「設備」、床材やクロスといった「内装」に分ける。

 主要構造部や雨漏り防止部分は、具体的に劣化や損傷が見られない限りは、常に一定の価値を持ち続けると定義する。一方、経年で減価するものについては部位ごとに15~20年などの償却期間を設定。後で修繕やリフォームなどの交換をしていれば、その分バリューアップしたとみなすといった手法が考えられる。

 現在こうした実証実験的な補助事業が全国39カ所で行われており、様々な手法で建物評価を行う試行錯誤が始まっている。具体的な動きはこれからだし、すべての実証実験が成功するとも思えないが、導入可能な手法が一つでも見つかればそれを全面的に採用することも可能だろう。

■自宅が「価値貯蔵機能」を持つ日

 いずれにせよそう遠くない未来の住宅市場では、前述した図面一式がない、点検や必要に応じたメンテナンスを行っていないという建物については、相変わらず建物評価はゼロ。一方で各種図面が整い、点検・メンテナンスが適切に行われている建物は築40年、50年であっても一定の価値を保ち続けるといった状況が生まれるのは間違いない。

 先進国に後れを取りながらも、価値の落ちない建物評価の仕組みが完成すると、その建物は具体的な「価値貯蔵機能」を持つことになる。そうなると、住宅ローンの支払い元金部分はまさに貯金をしているのと同じで、そこから生まれる資産効果、つまり資産を所有している安心感から生まれる消費効果を期待する声も大きい。

 住宅を所有する皆さんにはこうした状況を受けて、適度な建物の点検と必要に応じた修繕を行い、その記録を保管しておくことを強くお勧めする。こうした労力と出費は将来、建物の価値として加算されるのだから損することはない。具体的な点検個所や時期、交換時期の目安については、住宅金融支援機構のサイトにある「マイホーム維持管理ガイドライン」を参照するとよいだろう。

 これから住宅購入を検討する方は、新築であればとりわけ建築プロセスをしっかりとチェックし、それを記録に残しておくこと。中古であれば購入前に建物のコンディションを把握するホームインスペクションをしっかり行い、よく見極めたうえで購入の可否を決断したい。

 国は売買時におけるインスペクションの有無やその内容について、早ければ18年度から説明を義務化する方針だ。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)、『不動産投資 成功の実践法則50』(ソーテック社)など、著書多数。http://sakurajimusyo.com/

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