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おしゃれなだけじゃない 心底癒されるセラピー映画 『かもめ食堂』(2006年・日本)

2017/3/15

PIXTA

 春はなにかと、心がざわざわする季節。職場は年度末で多忙を極め、異動や組織変更など環境の変化が、神経をすり減らします。

 そんなとき、疲れた心身のデトックス映画としておすすめしたいのが、日本映画『かもめ食堂』(監督:荻上直子/原作:群ようこ)です。舞台は、ゆったりした時間が流れる北欧フィンランドの首都・ヘルシンキ。この町で日本食の食堂を営む日本人女性・サチエ(小林聡美)を主人公に、なんてことのない日常とちょっとした出会いを描く物語です。

 公開当時、本作を「スローライフ映画」「癒やし映画」と呼ぶ向きもありました。「ロハス」「オーガニック」「北欧」が多少のバズワード感も込みで、世の中に浸透した時期だったせいかもしれません。実際、『かもめ食堂』を理想的なライフスタイルのバイブルとしてあがめ、心酔する女性も筆者の周りに何人かいました。要は、現在でいうところの「ていねいな暮らし」の理想形というわけです。

 当時劇場に行かれたかたのなかには「ストーリーは覚えていないけど、料理は思い出せる!」という人もいることでしょう。サチエが1杯ずつ心を込めていれるハンドドリップコーヒー。生地から作るシナモンロール。パリパリののりを巻いた白米のおにぎり。どれも、すごくおいしそうでした。

 清潔でこぢんまりしたかもめ食堂の厨房、ぴかぴかに磨き上げられたフライパンや鍋、シンプルだけど温かみのあるテーブルや椅子も魅力的です。ああ、自宅があんなだったらいいなあと、家具屋や雑貨屋めぐりをした人もいるのではないでしょうか。

 サチエの生活ぶりにも憧れます。仕事のあとには室内プールでゆっくり泳ぎ、鍋でご飯を炊き、煮物をこしらえる。毎日をおだやかに、菩薩(ぼさつ)のごとく、心乱すことなく暮らしている……(ああ、私の今の生活と、なんて違うんだろう!)。

■一級のセラピー映画

 この映画には、パソコンもインターネットも、テレビすら登場しません。携帯電話は日本人旅行者のマサコ(もたいまさこ)がロストした荷物を空港に問い合わせる場面でちらりと登場しますが、ほとんど画面に映らないように撮られています。

 IT(情報技術)機器や携帯電話は、いつでもどこでも人や世界とつながれる便利な道具ですが、いつでもつながってしまえること自体が、むしろ現代人の心を疲労させ、息苦しくしています。それらが登場しない『かもめ食堂』は、ある種のデジタルデトックス映画なのです。

 それを象徴するかのように、サチエは誰とも積極的につながっていません。物語開始時点では、フィンランドに居を構えてしばらくたっているはずなのに、現地にはフィンランド人の知り合いも、日本人の友達もいない。旅行者のミドリ(片桐はいり)と出会ってようやく知り合いになりますが、それまでのサチエが孤独で寂しかったようには描かれていないのです。

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