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ジェーン・スーさん

ジェーン・スーさん

エッセイストとして雑誌やラジオなどで活躍しているジェーン・スーさん。ソニー・ミュージックエンタテインメントを皮切りに、プロモーション担当者として順風満帆なキャリアを重ねていましたが突如、異業種へ転職。さらに独立して今日に至ります。会社員時代を振り返ると「経営者に甘えていた」と話すジェーンさんに、キャリアに悩む女性たちへのアドバイスを聞きました。

出世、転職、やりたいこと追求 どれ選ぶ

――これまでのキャリアを教えてください。

「新卒でソニー・ミュージックに入社し28歳ぐらいのときに別のレコード会社に転職しました。31歳か32歳のときにメガネ製造販売のベンチャー企業に入社。異業種への転職も含めて3社経験しましたね。ソニーではプロモーションを担当していました。音源をラジオでかけたり、アーティストに雑誌のインタビューに出てもらったり。次のレコード会社では、特定のアーティストの宣伝の統括をやっていました。今までやった仕事の集大成のような形です」

――音楽プロモーションの仕事は、憧れの仕事の1つだと思います。なぜ異業種への転職を決めたのですか。

「1つは、音楽業界で培ったスキルが他の場所で通用するのか試したかった。2つ目は、風上から風下までが見える仕事を経験してみたかったのです。その前の2社は、大きな組織だったので自分の部署のことしかわからない。本当はいろんな人たちが関わっているのに、まったくその部分が見えなかったですね」

――その後、独立されています。なぜ、独立を決めたのですか。

「35歳で眼鏡の会社をやめて、ここで会社員としてのキャリアを終えました。実家が自営業をやっていたので家の手伝いをしていたのですが、ソニー・ミュージックの同僚だった玉井健二さんが音楽制作会社を立ち上げたので手伝ってくれ、といわれてアルバイト感覚で手伝い始めて。その前後からコラムの仕事も入るようになりました」

――キャリアを描く上で最も大切なものはなんでしょうか。

「まず、今の会社で出世したいのか、転職してキャリアアップをしたいのか、やりたいことをしていくのか、でずいぶん変わります。転職して仕事のランクを上げていきたいのであれば、ある程度のスペシャリストになったほうがいい。同じ会社のなかであれば、社内の政治にも敏感である必要があります。私は会社のなかで位をあげていくことにまったく興味がありませんでした。やりたいことをやるほうに興味があった。だから今、スペシャリストとしてやれるものは1個もない。ジェネラリストとまではいかないけれど、あっちこっち手を出しています。どうなりたいか、でしょうね」

キャリアは常に「アップ」じゃなくても

「キャリアって単語には必ず後ろに『アップ』がつきますよね。でも、永遠にあげ続けていたら最後爆発しちゃう。自分の一番居心地のいい働き方を探すのが一番です。アップではなく、横道にそれてキャリア『サーチ』とか、キャリア『チェンジ』とか、みんなそっちを意識したほうがいい」

「年収が下がるのも時には気にしない。私は、ベンチャーに転職してたとき、経験者ではなかったこともあって100万円単位で給料が下がりました。でもすごく仕事が面白かった。だから、とにかくたくさん稼げればいいと自分は思っているわけではない、とわかりました。2つ目のレコード会社も、仕事はやりがいがあったけれど、自由な時間がほぼありませんでした。夜11時まで会社に残り、ロンドンと連絡をとっていたらニューヨークが起きてくる。そうするうちに東京が朝になって、あわてて着替えるため家に帰って、トラブル対応ですぐ会社に戻るような生活です。転職したら、遊ぶ時間ができたので、お金がなくなっちゃった」

お金で買えるものと買えないものを分けて

ジェーン・スーさんの新刊「今夜もカネで解決だ」(朝日新聞出版)は3月22日に発売予定

ジェーン・スーさんの新刊「今夜もカネで解決だ」(朝日新聞出版)は3月22日に発売予定

――スーさんは、会社員だったとき、社外の人脈作りなどに積極的でしたか

「ないですね。私の場合は、大学時代のサークルが大きな財産です。2つ目の会社に誘ってくれたのも、ラジオ(TBSラジオ『生活は踊る』)に出ているのもサークルの縁です。縁はあるけれど人脈といえるかどうか」

――昔から、将来的に自分のキャリアにメリットがある、と異業種交流会などにいく人もいます。

「異業種交流や名刺交換会って、結局は『何かがほしい』というコンプレックスをビジネスにしているものだから、元締めがもうかっているだけであまり意味はないと思います。行ったこともありますが、開催している人がもうかるか、主催者の人脈が広がっただけだと思いました。自分の精神的なコンプレックスを金で解決しないほうがいいと思います」

――逆にお金で解決できるものはなんですか。

「体の疲れ、つまり癒やし。あとは時間ですね。移動ならタクシーを使うとか、職場から近いところに住むとか、そういうものはお金が解決するものですよね。私は、不便なものに都合をつけるのがお金だと考えています。たいていのことはお金で解決できる。ただ、自分の幹を育てるようなもの、これを払えば人生が変わる、みたいなものは信じない方がいい」

独立は、仕事が死ぬほど好きな人でないと無理

――最近、独立する人も含めて自由な働き方をする人が増えています。独立のリスクはありますか。

「私は結婚もしていないし、子どももいないので、最後は私一人がどうにかなればいい。気楽だと思います。とはいえ、会社の看板がなくなるので、家を借りるとき少し難しくなったり、ローンを組むのも難しくなったりする。会社の看板に守られていると、何者でもない人でも何者かになれるので、社会の信用を得られる、という意味で大きいです。もちろん、食べていけるのかな、継続的に仕事があるのかな、という不安は常にありました」

――独立に向いている人、向いていない人ってありますか。

「独立は、仕事が死ぬほど好きな人じゃないと勧めません。ちゃんと働いても働かなくても給与が入るのが会社員です。長いスパンで見れば収入の開きはありますが、基本的には今月さぼっても給料が出る。でも独立したらよほどの既得権益がないかぎり、一生懸命働かないとお金はもらえない。プライベートと仕事の区別もできなくなるし」

――独立、他につらいことはありますか。

「誰にも叱ってもらえない、ということですね。これまで、どれだけ経営者に甘えていたかも独立するとよくわかると思いますよ。会社員は考えようによっては楽です。楽しいかどうかは人それぞれだと思いますが。独立したいと思う人のなかには、『自分たちの意見が通らない』『会社に勤めていて楽しくない』という人もいるかもしれません。しかし、真剣に自分の雇い主の立場になってものを見てみると、どういう自分だったら重宝されるか見えてくると思います。売り上げをあげることが会社の使命で、一番経費がかさむのが人件費です。その人件費分働けているのか、と26、7の自分に問いたい(笑)。ただ、会社のなかにいると気付けない視点でしたね」

ジェーン・スー
 1973年東京生まれ、東京育ちの日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。音楽クリエイター集団「agehasprings」での作詞家としての活動に加え、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」でパーソナリティーを務める。3月21日に『今夜もカネで解決だ』(朝日新聞出版)が発売予定。

(松本千恵)

◆ジェーン・スーさんが登壇する「日経・オトナ女子の会」が3月22日(水)、東京・六本木で開催予定です。

「キャリアコラム」は随時掲載です。

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