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AndroidとFeliCaで再挑戦 SIMフリースマホNuAns

2017/3/13

2016年にトリニティが発売した「NuAns NEO」。コアとなるスマホの部分に、さまざまなカバーを装着してカスタマイズできるのが特徴だ

 スマートフォン(スマホ)周辺機器メーカーのトリニティが手掛けるスマホ「NuAns Neo」シリーズの新機種「NuAns NEO [Reloaded]」が2017年2月に発表された。コアとなるボディーをカバーでカスタマイズするというデザインのコンセプトはそのままに、OSをAndroidに変更し、さらにFeliCaを搭載しておサイフケータイ対応を進めるなど、意欲的なアップデートを実施した新機種から、同社の狙いを見る。

■前機種「NuAns NEO」はデザインが高評価

 「格安SIM」「格安スマホ」の人気が高まっていることを受け、SIMフリースマホを手掛けるメーカーが急増している。中国・台湾など海外企業の製品が中心だが、日本のメーカーもいくつか現れている。スマホの設計自体は自身で手掛けながらも、中国などのODM(相手先ブランドによる設計・生産)メーカーを活用することで、製品を安価に提供する。

 そうした企業の一つがトリニティである。トリニティはもともと、iPhoneを中心としたスマホの周辺機器を手掛けるメーカーであり、デザインに特徴のある周辺機器を多く提供してきた。だが、16年にSIMフリースマホへの参入を表明。登場した「NuAns NEO」というスマホは、かなり話題になった。

 NuAns NEOの最大の特長はデザイン性だ。NuAns NEOはコアとなる本体部分と、カバーが別々に用意されており、コアにさまざまな種類のカバーを装着することにより、本体デザインを自由にカスタマイズできる。カバーには木製のものやレザー調のものなど、多彩な種類のものが用意されているのに加え、上下に別々の色・素材を用いたカバーを取り付けることで、従来のスマホにはない大胆なデザインも実現可能になる。

 コア部分も、スマホの薄型化が進む中にありながら、あえてホールド感を重視して約11.3mmと厚みのあるボディーとしている。こうした点からも、トリニティ側のデザインに対する強いこだわりを見て取ることができる。

NuAns NEOのコア部分。持ちやすさを重視し、側面にあえて厚みを持たせているほか、電子マネーカードを置くスペースを背面に用意するなどの工夫もなされている

 また、NuAns NEOはFeliCaに非対応であったことから、コアの裏側にクレジットカードが1枚入る程度のスペースを用意。ここに電子マネーカードを置き、その上にカバーを装着することで、おサイフケータイのような使い方を可能にするなど、実用面での工夫も多くなされている。

 そうしたデザインに対する強いこだわりと独自性が高く評価されたようで、NuAns NEOは16年、グッドデザイン賞の中でも、特に高い評価を得た100件に与えられる「グッドデザイン・ベスト100」に選出されている。

■95%がWindowsではなくAndroidの搭載を望んだ

 だが一方で、NuAns NEOはその強いこだわりと独自性が、裏目に出た部分もあったようだ。そのことを象徴するのがOSである。

 NuAns NEOは、OSにマイクロソフトの「Windows 10 Mobile」を採用。Windows 10 Mobileの大きな特徴でもある、スマホをディスプレーやキーボードなどに接続することで、パソコンと同じように利用できる「Continuum」という機能に対応したことを、大きな特徴として打ち出していた。

Windows 10 Mobileを採用していたNuAns NEO

 だがWindows 10 Mobileは、15年末から16年にかけて対応機種が急増し、大きな話題になったものの、日本ではマイナーなOSである。iOSやAndroid等と比べるとアプリ開発者の数が非常に少なく、特にゲームやSNSなど、一般コンシューマーからのニーズが高いアプリの数が極めて少ないという弱点を抱えていた。

 それゆえWindows 10 Mobileは、マイクロソフトが強みを持つ法人向け用途としては一定の存在感を発揮するようになったものの、コンシューマー向けとしての人気はいまひとつ伸びなかったようだ。実際NuAns NEOも、Windows 10 Mobileではなく、コンシューマー向けのアプリが多く提供されているAndroidの採用を望む声が多かったようで、トリニティの説明によると、NuAns NEOを購入したい人の95%が、Androidを希望していたとのことだ。

 そこでトリニティの星川哲視社長は、新機種を発表するに当たって「プロダクトアウト」と「マーケットイン」の2つの考え方を取り入れたとのこと。NuAns NEOはプロダクトアウト、つまりトリニティ側の考えを強く反映させたスマホだが、新機種となる「NuAns NEO [Reloaded]」では、プロダクトアウトの良い所を生かしつつ、マーケットイン、つまり市場の声やニーズも取り入れて開発したスマホになっているという。

トリニティの星川氏は、NuAns NEOの新機種を投入するに当たって「プロダクトアウト」だけでなく、「マーケットイン」の発想も取り入れたとのこと

■デザインはそのままにスペックアップを図る

 NuAns NEO [Reloaded]を見ると、コアとカバーが分離したデザイン面は、前機種のNuAns NEOとほぼ同じだ。デザインコンセプトは高い評価を得ていることから、新機種でもこの部分は大きく変えないという選択をしたようだ。

NuAns NEO [Reloaded]の背面。デザインは好評だったことからあえて前機種と共通化。カバーも同じものが流用できるとのこと

 一方で大きく変わったのが中身だ。OSはWindows 10 Mobileから、要望の多かったAndroidに変更され、最新のAndroid 7 Nougatを採用。一方で、Androidはメーカーごとにカスタマイズできる要素が多く、それがOSやセキュリティーのアップデートの妨げとなってしまう可能性があることから、アップデートを重視しAndroid自体にカスタマイズは加えないという選択をしたようだ。

ユーザーの要望に応える形で、OSはWindows 10 MobileからAndroidに変更。アップデートを重視し、Android自体にカスタマイズは加えていないという

 また、NuAns NEO [Reloaded]はハード面でも仕様の向上が図られている。本体サイズは変わっていないながらも、新たにシャープ製の液晶ディスプレーを採用した狭額縁設計によって、ディスプレーサイズを5インチ・HD画質から、5.2インチ・フルHD画質へと進化。その上に旭硝子の強化ガラス「Dragontrail Pro」を載せることで、ディスプレーの強度も高めている。

 チップセットにはミドルハイクラスの最新版「Snapdragon 625」を採用したほか、メモリーも3GBに増量。新たに指紋センサーを搭載したのに加え、インカメラは800万画素に強化。メインカメラも1300万画素と画素数こそ変わっていないものの、新たにソニー製のセンサーを採用することで、オートフォーカスが高速になるなど機能向上が図られている。

 さらにLTEの対応バンド(周波数帯)も大幅な拡充を図り、NTTドコモやソフトバンクだけでなく、auの主要バンドもカバー。auのVoLTEにも対応させる方針とのことで、日本の3キャリアのネットワークをほぼカバーできるようにしている。

 これだけ大幅に性能を進化させたことから、見かけは前作とほぼ同様でありながら、内部の設計は大幅に変更する必要があったとのこと。デザインの制約がある分、ある意味新規にデザインを起こすよりも開発は大変だったようだ。

■SIMフリーメーカーでいち早くFeliCa対応できた理由

 そしてもう一つ、NuAns NEO [Reloaded]が前機種と大きく変化したポイントが、日本のスマホならではの機能・性能を備えたことだ。

 一つは防水性能である。NuAns NEO [Reloaded]では、新たにIP54の防滴・防じん性能に対応した。アップルのiPhone 7の防水・防じん性能はIP67で、防じんでは1ランク、防水では3ランク下回る[注]がSIMフリースマホで何らかの防水性能を実現した機種は数が非常に少ないだけにメリットは大きい。

[注]IPxxの最初の数字が防じん性能、2番目の数字が防水性能を示す。IP54は「機器の正常な作動に支障をきたしたり、安全を損なうほどの量の粉じんが内部に侵入しない」「いかなる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を受けない」レベル。

IP54の防滴・防じん性能に対応。大手メーカーのスマホには劣るが、キッチンなどで利用する時の安心感は高い

 そして防水よりも大きな意味を持つのがFeliCaの搭載、ひいては「おサイフケータイ」への対応である。FeliCaは昨年iPhone 7/7 Plusが採用し、国内で「Apple Pay」の提供を実現したことから、改めて注目が集まっている機能だ。だが現状、FeliCaを採用したSIMフリースマホを提供しているのは、富士通コネクテッドテクノロジーズやシャープなど、大手キャリアにスマホを提供しているメーカーに限られる。それだけに、スマホメーカーとしては規模が非常に小さいトリニティが、FeliCaの搭載を実現してきたことには驚きがある。

 FeliCaを推進するフェリカネットワークスにとっても、ある意味最大の障壁でもあったiPhoneのFeliCa対応が実現した今、大きな課題となっているのが、急速に利用が広まっているSIMフリースマホへの対応であるという。それゆえフェリカネットワークにとって、NuAns NEO [Reloaded]がFeliCaに対応したことには大きな意味があったようだ。

FeliCaを搭載し「おサイフケータイ」にも対応。純粋なSIMフリースマホメーカーとしては、初めての対応になるという

 なぜ、トリニティがいち早くFeliCaの搭載を実現できたのかというと、それは規模の小さい国内メーカーだからこそといえる。SIMフリースマホメーカーの大手は海外メーカー、あるいは海外展開を重視しているメーカーであるため、グローバルでのコスト効率を重視する傾向にある。それゆえ日本でFeliCaに強いニーズあることは把握していても、グローバルモデルとの共通化を図ることができない限り積極的には導入したがらないのだ。

 だがトリニティはもともと国内向けにスマホを提供しているメーカーであるため、ローカルニーズに応えやすい。しかもNuAns NEO自体、プロダクトアウトの発想で生まれたものであることから、「FeliCaはどうしても対応したかった」という星川氏の意向も反映させやすかったといえよう。

 もっとも、NuAns NEO [Reloaded]の発売は5月とやや先であり、FeliCaに対応したといっても、各電子マネーサービスの評価や試験が完了していないことから、具体的にどのようなサービスが利用できるかはまだ分からないという。強い個性は維持しながらも、ユーザーニーズを捉えたことでより使い勝手のよいスマホに仕上がっていると感じるだけに、主要なFeliCaのサービスにもしっかり対応せた上で、NuAns NEO [Reloaded]が登場することを期待したい。

佐野正弘(さの・まさひろ)
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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