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北島流は「楽しく長く」 スイミングスクール王国育む

2017/3/9 日本経済新聞 朝刊

北島氏は自らの経験に基づいてスイミングクラブを立ち上げた(IMPRINT提供)

 子供たちの歓声がこだまする東京都内のプール。輪の中心にいるのは2004年アテネ、08年北京両五輪金メダリストの北島康介氏(34)だ。まだ現役選手だった11年、スイミングスクール「KITAJIMAQUATICS」を立ち上げた。

 「教育と違った視点で指導し、強い選手を輩出してきた既存のスイミングスクールと勝負する気はなく、水泳の底辺を広げたい」。こう語る北島氏自身も、1968年創設の東京スイミングセンター(SC、東京・豊島)で5歳から水泳を始め、北京五輪まで練習拠点にした。ここで平井伯昌コーチに出会い、目先の結果に一喜一憂せず、大きな目標への挑戦に集中する環境をもらったのからこそ、今があると思っている。そして今度は自分が環境を提供する番と、スクールを始めた。

 水泳は小学生の約30%が通う習い事だが、泳げるようになるとやめてしまう。「僕のばあちゃんは70歳を過ぎて水泳を始めた。長く水泳を楽しんで、好きになってもらえるプログラムを作ろうと思った」

1968年完成の東京スイミングセンターのプール全景(東京都豊島区)

 北京後に練習拠点を移した米国で、新たな水泳の楽しみ方を知った。決められたペースで泳ぎ続ける日本と違い、水底に沈んだ輪っかを競争して取ったり、ボールを使って泳いだり。トップ選手でも水泳を始めた頃の遊びのような内容があった。「ちょっと気を緩めても必死になれる自分を思い出させてくれた。これならずっと続けられると思った」。この経験を基に、自身でプログラムを組む。

 マスターズ大会に出る大人を対象に始めたが、「小中高生が増えてきた」と会員は400人を超える。「速く泳ぐことに飽きたらフィンを使って泳いでもいい。色々な選択肢を提供したい」とライフセーバーや遠泳のコースもある。

 スクールは都営プールなどを借りている。「もう少し柔軟になってほしいな~って思う」。借りられる公営プールが少ないのが頭痛の種だが、自前のプールを持たないのは資金の壁だけが理由ではない。「インストラクターがプログラムの枠に自分をはめ込んで、自分で考えようとしなくなる気がして」。他のスポーツクラブにも出張し、今春から都立高校の部活指導も請け負う。「学校での指導はもっとやりたい。スポーツを楽しむ幅を広げてあげたい」(原真子)

[日本経済新聞2017年3月9日付]

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