トラベル sponsored by アメリカン・エキスプレス

クローズアップ

カステラと金平糖の故郷 「買い食い天国」ポルトガル

2017/3/10

エンリケ航海王子の500回忌を記念してつくられた「発見のモニュメント」

 なんとも居心地のよい街である。子どものころ、学校帰りに道草をして駄菓子屋さんに行き、友達とおしゃべりして、買ったお菓子を食べながら帰った。ポルトガルの街を歩くと、そんな記憶がよみがえってくる。ポルトガルといえば、今や日本の伝統菓子となったカステラや金平糖を16世紀に伝えた国でもある。どこか懐かしく思うのは、そういうルーツが関係しているのかもしれない。昭和の日本にも通じる、ゆったりした空気が漂うポルトガルを旅した。

■お菓子屋さんでビールが飲める居心地のよさ

パステラリアでビールを飲みながら、お菓子を食べる

 ポルトガルの街には、駄菓子店ではないが、人々に親しまれている「パステラリア」という業態のお菓子屋さんがある。焼き菓子や生菓子などがショーウインドーに何種類も並んでいる様子は、日本の洋菓子店のような店構え。ただ、テークアウトをする物販だけの店というより、たいていイートインスペースがあり、コーヒーやお茶も頼んで、買ったお菓子をそこで食べるというスタイルだ。

 そんなパステラリアが、ポルトガルのどの街にもやたらとある。統計を確認したわけではないが、街歩きをして、ふと疲れたなと思って周囲を見回すと、目の前に1軒、斜め後ろに1軒、あっちの交差点の角にも1軒という具合。そういえば、世界のどの街でも見かけるあのチェーン系のカフェをほとんど見かけなかった。そうしたカフェが進出する余地がないほど、伝統的なパステラリアが地域の生活に深く根付いているのだろう。

 パステラリアでは、お菓子のほかにサンドイッチや総菜なども置いてあり、小腹を満たすこともできる。よくよく店の奥に目をやると、ワインやお酒のボトルが並んでいるではないか。お菓子と一緒に頼むのは普通、コーヒーか紅茶だろうが、昼間とはいえ、街歩きで喉が渇いた筆者には、もっと飲みたいものがある。思い切って「ビール、頼んでいいのかしら?」と聞いてみた。返ってきた答えは「もちろんだよ。ポルトガルはビールもうまいよ」。

■いつでも、どこでも、何回もナタを食べる

 決してスイーツとアルコールが合うといっているのではない。「このようにしなければいけない」というお仕着せを軽くかわせる雰囲気がこの国にはあり、それをささやかに楽しませてくれるのがポルトガルなのだ。パステラリアで軽い食事もできて、お酒も飲めるという、庶民に親しまれている地域の店という意味では、スペインのバルや米国のダイナーとコンセプトが似ているが、大きな違いはやはりお菓子が主体というところか。

 パステラリアでの一番人気、というよりポルトガルを代表するお菓子が「パステル・デ・ナタ(以下ナタ)」だ。英語で言うところの「エッグタルト」で、甘いカスタードクリームがサクサクのパイ生地におさまっている(名前はタルトだが、実際はパイのよう)。レストランの食事の後のデザートとしてはもちろん、パステラリアでお茶とナタでひと休みというのが、ポルトガルでよく見かける光景だ。ナタは、市場や観光地の屋台、駅の売店でも、必ず売っている。高くても観光地でせいぜい1個2ユーロ(約240円)ほど。田舎の市場では50セント(約60円)くらいだったろうか。

ポルトガルを代表するお菓子、ナタ

 ナタは直径が5センチメートルほどのフィンガーサイズ。大きすぎず、片手で持って歩きながら食べることができる。日本人の感覚だと、例えば洋菓子店で買った生クリームたっぷりのイチゴのショートケーキを手づかみで歩きながら食べるのは難しい。マナーに障るだろうし、下手をすると生クリームが顔や手にべったりついて、カッコ悪い。ところが、ナタはそれができる。サクサクのパイ生地が多少、ぱらぱらとこぼれ落ちるものの、気にならない。多少の行儀の悪さは旅行中ということで免じてもらい、1日に3回、場所をわきまえずナタを食べただろうか。堅いことは言わずに、たいていのことは許してくれるポルトガルの寛容さが、ここにも感じられるのだ。

■屋外で世界遺産を眺めながらワインが飲める

 許してくれるといえば、ポルトガルではお酒に対しても寛容だ。

 首都リスボンの中心街からテージョ川沿いに6キロメートルほど西に行ったところのベレン地区。ここの河岸には、歴史の教科書で見た記憶がある「発見のモニュメント」がそびえる。大航海時代の象徴とされるエンリケ航海王子の500回忌を記念して1960年につくられたものだが、王子はじめ、バスコ・ダ・ガマ、マゼランなど、世界史のヒーローたちの像が刻まれている。

トラベル新着記事