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住宅ローン、固定型にシフト 金利の底打ち逃さず

2017/3/11

 住宅ローンで、ここ数年間急ピッチで低下してきた固定型の適用金利が足元で底打ちしつつある。銀行が参考にする長期国債の利回りがここ半年ほどでじわり上昇したのが大きい。金利水準が低いうちに、現在のローンから借り換えようとする人も増えている。借り換えによる返済負担の軽減効果を試算してみた。

 東京・日本橋にある大手銀行の住宅ローンセンター。相談を終えた会社員(44)は「4年前に組んだローンを早めに借り換えようと思い、銀行数行を回って試算を頼んでいる」と話す。ローン金利が一段と低下するのを待っていたが、「反対に一部の銀行で上がり始めているため」だ。

 住宅ローンの金利タイプは主に3つある。(1)半年ごとに金利水準が見直される変動型(2)当初の一定期間は固定され、その後は原則として変動に切り替わる当初固定型(3)ずっと同じ水準が続く全期間固定型――だ。

 大手銀行の多くは3月、当初10年固定型などの適用金利を引き上げた。35年の全期間固定型でみると、金利水準は昨夏と比べて0.1~0.5%ほど高い。

■金利じわり上昇

 銀行が参考にする長期国債利回りが、昨夏を底にじわり上昇したためだ。専門家の間では「日銀が今後、期間の長い国債利回りの大幅な低下を促す可能性は低い」(SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリスト)との見方が有力。住宅ローンの固定金利は、ほぼ底打ちしつつあるようだ。

 金利情勢の変化を察知して借り手は変動型から固定型へシフトし始めている。

 三菱東京UFJ銀行によると、借り換え時に固定型を選んだ人の比率は、2015年12月に69%(当初固定と全期間固定の合計)だったのが、16年12月には99%まで高まった。特に金利が安い当初10年固定型(今年3月の最優遇で0.55%)の人気が高いという。

 その一方で様子見という人もなお多い。ある大手行では残高ベースでは変動型が依然7割ほどを占める。変動型の金利は、日銀が誘導する短期市場金利に影響される。日銀は物価が安定的に2%を超えるまで緩和を続ける構えで、変動金利が上昇に転じる可能性は当面低いとの見方が多い。

 ただし、リスクには留意が必要だ。大手行出身で久留米大学教授の塚崎公義氏は「労働力不足による賃金上昇などの影響から、日銀が5年以内に短期金利の誘導目標を引き上げる確率は3割強ある」とみる。

 固定型への借り換えを考えているうちに時機を逸するリスクも考慮したい。固定金利を左右する長期国債利回りは、市場の環境変化を先読みして動きやすく、「いったん上昇を始めると急ピッチに進む可能性がある」(末沢氏)ためだ。

 かつては固定型の金利が変動型より大幅に高かった(図A)。このため、変動型から固定型へ借り換えると総返済額が膨れあがる計算になっていた(変動型の金利が不変と仮定)。

 ここ数年、固定金利が急ピッチで低下した結果、変動との金利差は小さい。住宅ローンアドバイザーの淡河範明氏は「残りの返済期間が短い場合は当初固定型でもいいが、例えば20年を超えるなら原則全期間固定型を選びたい」と話す。

■完済時期早める

 図Bは、借り換えの前後で適用金利がどう変化したかを聞いた結果だ。1%超下がった例は3割弱あり、この場合、総返済額を大きく減らせる。一方で変わらないか高くなった人も2割弱。変動から固定への切り替えで金利上昇リスクを減らしたようだ。

 固定型に借り換えた場合、返済負担がどう変わるかを試算した。5年前に返済期間35年で3000万円を借りたという想定だ。借換先の金利は、メガバンクのなかで超長期の全期間固定が最も低いみずほ銀行の水準を例としている。

 まず図Cは、5年前にも全期間固定で借りていた例だ。金利が当時より大幅に低くなった恩恵で月々の返済額は約1万7000円、総返済額は約620万円減る(ケースa)。

 これだけでも借り換え効果は大きいが、「月々の返済額をあまり減らさず完済時期を早める手もある」(ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏)。5年縮めると、支払利息の一段の軽減により総返済額を約710万円減らせる(b)。

 図Dは、5年前に変動型で借りていた例だ。借り換えにより、総返済額は11万円とわずかに増えるものの、将来の金利上昇リスクを回避できる。月々の返済額を増やす余裕があるなら期間を短縮して総返済額を減らすことも可能だ。

 図にはないが、借り換えをせず変動型のままだと、5年後、6年後に仮に金利が0.5%ずつ上昇しただけで総返済額は約260万円膨らむ。「ローン返済は長く続く。予想外の金利上昇にも備えるべきだ」(塚崎氏)という指摘は多い。

(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2017年3月4日付]

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