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顧客本位の「中立」FP 相談料だけで頑張る

2017/3/11

 資産運用や保険選びなどの助言をしてくれるファイナンシャルプランナー(FP)。銀行・証券・保険会社などの社員でない独立系FPでも、実は証券会社の商品仲介や保険会社の代理店をしてコミッション(手数料)を得ていることが多い。「それでは中立的な助言はできない」と考え、金融機関と契約せず顧客からの相談料(フィー)だけで頑張るFPもいる。

 高橋忠寛氏はかつて銀行員だった。「顧客のためにならない商品も売らなければならない」と悩み、2014年秋に辞めてFPになった。独立の際に相談した先輩FPたちは「保険代理店や証券仲介業をして手数料を得ないと経営が苦しいよ」と口をそろえた。

 例えば独立系金融アドバイザー(IFA)をしているFPの多くは、投資信託の販売量などに応じて金融機関から手数料をもらう証券仲介を手掛ける。「しかし手数料が収入の主体なら、高い手数料の商品を販売する誘惑が出る。顧客に中立とは言い切れない面がある」(千葉商科大学の伊藤宏一教授)

 高橋氏は投資助言・代理業の登録を選んだ。顧客からの助言料だけが収入で金融商品の販売が許されない業務だ。やはり経営は苦しかったが「中立的な意見を聞きたいという顧客が増え、やっていける気がしてきた」(高橋氏)。

 早くから投資助言・代理業として投資アドバイスをしてきたのが尾藤峰男氏だ。大手証券会社の海外法人の社長を経て2000年に独立。証券アナリストの難関資格であるCFA保有者でもある。「お客様の利益だけを考えて助言できる」と後悔していない。

 投資助言・代理業登録しているFPとしてはイデア・ファンド・コンサルティングの吉井崇裕氏やコバヤシ・アセット・マネージメントの小林治行氏なども著名。しかし個人でこの登録をするFPはごく少数だ。

 多くのFPの収入源は保険代理店としての活動だ。しかし09年にFPになった岩城みずほ氏は代理店はやらないと決めた。かつて研修講師をしていた際、大手保険会社での仕事で顧客に向いていない保険商品を販売する現場を見て、「販売ありきにはなりたくなかった」。竹下さくら氏も「代理店をしないことで、安価な団体保険や共済などを薦めやすい」と話す。

 「大きなお金が動く不動産の世界では、相談客を不動産会社などに紹介して高額の収入を得ているFPも多い。すべてが顧客本位の判断になっているか疑問」と話すのは住宅ローン相談を主に手掛ける中嶋よしふみ氏。利益相反を避けるため、顧客からの相談料以外はもらわない。金融機関のセミナー講師や広告すら引き受けない徹底ぶりだ。

 保険相談の内藤真弓氏や住宅ローン相談の深田晶恵氏ら著名FP5人などで運営するFP集団「生活設計塾クルー」は02年の開業以来、手数料をもらわずにやってきた老舗だ。「商品販売にかかわると、良くないと思う商品でも批判できなくなる」(代表で資産運用に強い目黒政明氏)という思いからだった。

 もちろん保険代理店や証券仲介をしているFPにも、顧客本位で頑張っている人は数多い。ただ手数料収入の有無は少なくとも顧客に知らせるべきだ。日本ファイナンシャル・プランナーズ協会の規程では、手数料を得ている場合は顧客に書面で開示することになっているが、「有名無実化している」(著名FP)。協会は開示を広げる取り組みを強化する方針だ。

 千葉商科大学の伊藤教授は「米国のFPは近年、手数料収入主体から相談料収入主体へ急速にシフトしつつある」と指摘する。日本でも今回紹介したFP以外にも手数料をもらわないFPは多くいる。この流れが加速するには「良質で中立的な助言を得るには、きちんと相談料を払うことが必要」という認識が顧客に広がることも重要だ。

(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞夕刊2017年3月3日付]

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