トラベル

クローズアップ

震災復興6年目 三陸縦断 鉄道とバス乗り継ぎの旅 フリーライター 二村高史

2017/3/6

志津川に到着するBRTのバス。気仙沼線・大船渡線BRTは、地方の新しい公共交通の可能性を示したとして、2016年度グッドデザイン金賞を受賞した

 「バスと鉄道で八戸まで行くんですか!? ご苦労さまです」

 応対してくれた女性は笑顔でそう言って、南三陸町の観光写真を印刷したきれいなクリアファイルを付けてくれた。物産館の近くには、昨年暮れに閉鎖された「南三陸さんさん商店街」の仮設店舗が並んでいた。そして3月3日、かさ上げが終わった中心部でオープンだ。

気仙沼付近のBRTの専用道路。専用道の側に遮断機が付いているのがわかる

 「BRTの停留所もそっちに移転するんですよ。ここはちょっと不便になっちゃうけど」

 もっとも、ここには大きな駐車場もある。車で来る人が圧倒的だから、そう大きな問題はないに違いない。少しずつだが、復興は着実に進んでいるという印象を受けた。

 この日の宿泊地である気仙沼に着いたのは17時すぎ。すでに冬の日はとっぷりと暮れていた。気仙沼線BRTは専用道からそのまま気仙沼駅に乗り入れている。バスが鉄道の駅に発着するのは、ちょっと不思議な光景だ。とはいえ、気仙沼線BRTと大船渡線BRT、そして一関から来る鉄道の大船渡線が、隣接するホームですぐに乗り換えられるのは便利である。

■かさ上げの大規模工事進む陸前高田では昔の思い出が更地に

 2日目は、9時50分発の大船渡線BRTに乗って岩手県の陸前高田に向かった。大船渡線も気仙沼線と同じく、海岸を走る部分が津波でやられてしまったためにBRTが運行されている。車窓は、実にのどかで美しいのだが、海が見える場所に出るたびに、津波の爪痕らしき更地やかさ上げ工事の現場が目に入ってくる。

 30分ほど走り、行く手に大規模な工事現場が見えてくると、まもなく陸前高田に到着である。鉄道時代の陸前高田駅は、海から500メートルほどの地点にあったが、BRTはそこから約1.5キロメートル北側の丘の上に止まる。

 私は、この陸前高田に1993年にたまたま訪れ、味わいのある街並みが気に入って、20枚程度ではあるがモノクロフィルムで写真を撮っている。それも何かの縁かと思い、2013年にここを訪れて、以前と同じアングルでの定点比較写真を撮影。家々がぎっしりと並んでいた場所が、ほとんど更地になってしまっていたのは悲しかった。

 それから3年半。今回も定点写真を撮ろうと、工事車両が行き交うほこりっぽい旧市街地を歩き回った。最大12メートルになるという、かさ上げ工事はかなり進んでおり、一部では新しい建物が姿を現していた。

 ただ、ひとつ気になることがあった。市の中心部には市民に親しまれていた市神宮(いちじんぐう)の祠(ほこら)があり、その礎石は津波にも残されていたのだが、それはどうなったのか。かさ上げ工事による盛り土で埋められてしまったのか、バス停近くにある観光案内所で尋ねた。

 「石は保管してあります。町が復興したら、しかるべき場所に置く予定ではありますが、まだどうなるかは決定していません」

 中年の職員の方が、昔の写真集を出して丁寧に教えてくれた。

1993年の陸前高田中心部。中央右には、市神(いちがみ)様と親しまれた市神宮の祠が見える
2013年の同じ場所。家々は津波で流され、市神宮は礎石だけが残っている

■南リアス線で乗った「奇跡の車両」

 陸前高田から再び大船渡線BRTで向かったのは終点の盛(さかり)。大船渡市の中心部に位置する駅だ。大船渡は「さんまラーメン」で町おこしをしているようで、「さんまラーメンMAP」なる案内まで用意されている。前回は、盛駅近くで、さんまのすり身入りの、意外にさっぱりしたラーメンを食べた。

 盛駅には大船渡線BRTと三陸鉄道南リアス線が乗り入れており、気仙沼駅と同じく同一のホームで乗り換えられる。

 南リアス線の列車を待っていると、到着したのは3年前にできたばかりのレトロ型車両36R-3。その車体には、震災直後にクウェートからの支援によって3両(36-700形)の車両が新造されたことに対する感謝の言葉が、アラビア語・英語・日本語で記されていた。

夕暮れの釜石駅に到着した三陸鉄道の「奇跡の車両」。左側はJR釜石駅のホーム

 座席や内装もセンスがよさそうで、「これはラッキー!」と思っていたが、なんとそのまま入庫。代わりに車庫から出てきたのが、イオンの広告ラッピングをほどこした旧型の36-100形だった。

 ちょっとがっかりしたが、よく見ると105号車ではないか。実は、この車両こそが、大津波の際にトンネル内で停車して難を逃れた「奇跡の車両」なのだ。震災当時、北リアス線内を走っていたこの車両は、トンネル内で警報を受信して緊急停止した。もし停止していなければ、トンネルの先にあった橋が落ちていたために大惨事となるところだったのである。そのことを思い出し、がっかりした自分を少しだけ反省しつつ、この15時45分発の釜石行きに乗車したのであった。

トラベル新着記事