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ビジネス書・今週の平台

新刊相次ぐバブル回顧本 大手町で再浮上 紀伊国屋書店大手町ビル店

2017/3/3

 ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店に戻る。ビジネス書とは離れるが、先週末の金曜日は村上春樹氏の話題の新刊『騎士団長殺し』上下巻が発売され、多くの書店で売り上げトップを走る。ビジネス書に強い紀伊国屋書店大手町ビル店でもその光景は変わらない。メインの平台は村上氏の新刊がうずたかく積まれていた。一方、ビジネス書ゾーンの平台に目をやると、『騎士団長殺し』に引けをとらない規模で平積みされた本が目を引いた。

80~90年証券営業の最前線を描く

 その本は横尾宣政『野村證券第2事業法人部』(講談社)。著者はオリンパス巨額粉飾事件で指南役とされた人物。二審でも有罪判決を受け、現在最高裁に上告中だ。その無罪の主張が本書後半の中核をなすが、前半はタイトルの通り、野村のすご腕営業マンだった著者の仕事ぶりを中心に「80年代から90年代にかけて、善くも悪くも世間の注目を浴びた野村証券の最前線の実態」が活写される。「今の日本に比べると、当時はなんと活気に満ちあふれていたことか」と本人が述懐するように、バブル期の活力を回顧する内容で、コンプライアンスもハラスメントもまったく意識されなかった粗削りな時代の、証券営業のすさまじさが読みどころのひとつだ。

 イトマン事件と住友銀行のかかわりを回顧した当時の幹部社員による『住友銀行秘史』、同時期に取材者、編集者としてかかわった経済記者による回顧的検証本『バブル 日本迷走の原点』や『住友銀行暗黒史』、当時の日銀マンによる回顧録『バブルと生きた男』と、昨年秋からバブル期の回顧本の出版が相次ぐ。本書も同じ流れに属する。当事者による回顧という点で、版元も同じ『住友銀行秘史』と作りは良く似ている。『住友銀行秘史』がイトマン事件への銀行の対応というところに集中していくのに対して、こちらのテーマは野村の営業手法であり、まさに最前線の営業マンがどう株や債券を顧客企業に買わせ、手数料収入を上げていくかというところに焦点が当たる。

『住友銀行秘史』に迫る初速

 営業成績の悪い社員の妻まで会社に呼び出して「こいつのために、みんなが迷惑してるんです。奥さん、どうにかしてください」と言い放つ上司。運用損を知らせないため客に郵送される運用報告書をポストで待ち受け内緒で破り捨てるといった、めちゃくちゃな支店営業の実態から始まり、花形部署の第2事業法人部でのコミッション(手数料)を稼ぐためのえげつない取引手法や担当企業との化かし合い……。バブルとバブル後の時代の空気が生々しい。「先週半ばに入荷して3日で驚くほど売れた。『住友銀行秘史』のときに迫る勢い」とビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。金融街、大手町らしい反応だ。ビジネス書コーナーにタワー状にディスプレーして平積みしたほか、金融関係の書棚脇の平台は先にあげた4冊と並べてバブル回顧本コーナーにする力の入れようだ。

3位に「セールス道」語る本

 それでは先週のベスト5を見ていこう。

(1)野村證券第2事業法人部横尾宣政著(講談社)
(2)「持ち家」という病井上明義著(PHP研究所)
(3)アメリカ本国を驚愕させたプルデンシャル生命の「売る力」2プルデンシャル生命保険株式会社 フェイスブック(日出ずる国の営業)運営事務局編(プレジデント社)
(4)地域通貨で実現する地方創生納村哲二著(幻冬舎新書)
(5)金利と経済翁邦雄著(ダイヤモンド社)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2017年2月20日~2月26日)

 1位が紹介した『野村證券第2事業法人部』。2位は土地・不動産神話からの脱却を提言する一冊。昨年11月の刊行で、息の長い売れ方だ。3位はセールスの極意を語る本。プルデンシャル生命が運営するフェイスブックページ「日のいずる国の営業」に寄せられたトップセールス30人による「セールス道」の金言集だ。4位はタイトル通り地域通貨を活用した地域活性化策を提言、指南する内容。5位は日銀金融研究所長などを務めた金融政策の第一人者による金融政策論。マイナス金利やトランプ政権の影響などを最近の動きまで追いながら今後の金融政策を展望している。

(水柿武志)

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