マネー研究所

定年楽園への扉

老後資金 不安なのに行動しない不思議 経済コラムニスト 大江英樹

2017/3/9

PIXTA

 老後の生活について誰もが不安を抱えています。お金のことにしろ、健康のことにしろ、全く不安を持っていない人はいないと言っていいでしょう。ところが、お金については実に不思議な現象があります。それは「不安」はあるのに積極的に行動していないということです。

 健康については誰もが不安と同時に関心を持ち、日常の食事や運動についても相当の注意を払っています。ところが、お金に関しては事情が違うようです。

■お金に不安を感じる人は多い

 全国の20歳以上の男女1200人を対象に昨年10月実施した、NPO法人「日本ファイナンシャル・プランナーズ(FP)協会」の「老後とお金に関する調査」では興味深い結果が出ています。老後の生活資金について、全体の約8割の人が「不安に思う」と答えた一方、情報収集について「何もしていない」と答えた人が約3割に上ったのです。「セミナーに参加」「FPに相談」と積極的に情報収集している人は2%程度にすぎませんでした。不安を感じていても自ら動いている人は多くないようです。

 私も各地でシニア向けのセミナーを開催していますが、いつも参加された方々に聞くことがあります。

 「みなさん、老後のお金は不安ですか?」

 ほぼ全員が手をあげます。

 「ではどこが不安なのですか?」

 何人かの人が答えます。

 「年金が心配」「介護が不安」

 そこで、再度私はお聞きします。

 「では自分の年金がいくらぐらい受け取れるかわかっている方は?」

 今度はほとんど手を挙げません。

 「じゃあ、介護費用がどれぐらいかわかりますか?」

 これも全くと言っていいほど手は挙がりません。

 よく考えるとこれは変です。年金が不安ということは「これぐらいしかもらえないだろう。だから不安だ」と考えるはずです。しかしながら、多くの人が自分のもらえる年金額を知らないのに「不安だ」というのは一体どういうことでしょう?

■知らないからこそ不安になる

 いや、むしろ知らないからこそ不安なのです。つまり、冒頭の調査でいえば「何もしていない」から不安なのでしょう。「年金はややこしいからわからない」という人も多いでしょう。確かに年金制度全体は複雑ですが、それらを全て知る必要は全くありません。「自分がいくらもらえるか」ということだけが一般の人が知りたいことだからです。

 自分がいくら年金をもらえるのかは、毎年誕生日月に送られてくる「ねんきん定期便」を見ればちゃんと書いてあります。さらにもっと詳しく知りたければ、日本年金機構のサイト「ねんきんネット」にアクセスすることで将来のシミュレーションだってできます。調べた結果、その金額ではとても老後が賄えないということであれば、それに向けて準備を始めるべきです。なるべく早く自分の年金額を知り、行動を始めることが大切です。

 介護にしても厚生労働省のホームページを見ればわかりやすい資料が公開されています。要介護になった場合の自己負担がどれぐらいかかるかということも書いてあります。また介護保険ではカバーできない部分の金額についても、ネットで検索すればいくらでも情報はあります。年金や介護保険などについて、ネット情報の信ぴょう性を確かめたければ、日本年金機構や市町村の窓口に電話すれば親切に教えてくれますし、FPに聞いて教えてもらうこともできます(その場合は有料ですが)。

 要は「わからないこと」が不安の原因なのです。だとすれば、わからないことをわかるようにすることで不安はかなり解消されます。不安だけれど積極的に行動しない状態がずっと続けば、いつまでも不安がなくなることはありません。老後不安の解消に向けての第一歩は、まず行動することではないでしょうか。

 「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は3月23日付の予定です。
大江英樹(おおえ・ひでき)
 野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!

著者 : 大江 英樹, 井戸 美枝
出版 : 日経BP社
価格 : 1,512円 (税込み)


マネー研究所新着記事