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なやみのとびら、著名人が解決!

夫が私の料理をうまいともまずいとも言いません 著述家、湯山玲子

2017/3/16 NIKKEIプラス1

ゆやま・れいこ 著述家、プロデューサー。東京都生まれ。「女装する女」など著作多数。クラシック音楽のイベント「爆クラ!」を主宰。テレビのコメンテーターとしても活躍。

 夫が私の料理をうまいともまずいとも言いません。「感想を聞かないと腕があがらない」と頼んでも、「黙って食べてる時はうまいんだよ」とのこと。私はもっと「ここがもう少し……」とか言ってほしいのです。ずっとこの調子だと思うと憂鬱です。(埼玉県・70代・女性)

 妻がつくる料理に関して無反応の夫。お悩みの内容は、日本の夫婦関係では「どこの家庭でも、そんなもんでしょ」ぐらいの話ですが、それが70代の女性の悩みだとすると、そこからは別の問題が見えてきそうです。

 今まで妻は夫の料理に対する反応が一切なくても料理を作り続けてきたわけです。しかし、彼女はここにきて「ずっと、この調子だと思うと憂鬱」という気持ちが芽生えてしまったという点に注目したい。

 70代ならば余生を見つめざるを得ない。相談者は長年改良を重ねてきた壮大なワークである家事としての料理に、唯一の食べ手である夫からの反応をもって、ビビットな生きた証しにしたいのではないか。

 他人から承認されることは、生きることの原動力になります。「今までもそうだったのだから、続けて我慢できるでしょ」というのは間違いで、年を取って、自発的なエネルギーがどんどん失われていくことが自覚できるからこそ、相談者はその承認を自身の活動の中で努力を重ねてきた家庭料理に求めたのではないか、と私は思うのです。

 この解決法は簡単です。承認を夫ではなく、他人に求めればいい。友達を呼んで自宅で料理をふるまってもいい。なにせ、他人に味わってもらうのだから、料理の創意工夫もより真剣に取り組まなくてはなりません。厳しい意見も出してもらって、より研さんに努めるのも目標ができて、おもしろい。

 料理自慢で知られた、脚本家の故・向田邦子さんには、友達が風邪をひいて寝込んでいると聞くと、鍋いっぱいにスープを作って届けたり、急に友人を呼び出して、思いついたレシピをごちそうしたり、といったエピソードがあります。相談者も料理の腕前を、いろんな人をハッピーにするようなやり方で披露していくというのは、晩年の生き方として、非常に望ましいのではないか。

 今、子どもの貧困が問題になっています。家庭での食事の内容が非常に貧しく、かつひとりぼっちで食べなければならないような子どもたちに、食事を作ってあげる地域ボランティアがありますが、思い切って、そんな「大きい愛」の発信者を目指してみるのも、人生の最終章にはいいかもしれません。

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[NIKKEIプラス1 2017年3月11日付]

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