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ラ・ラ・ランド、ムーンライト 独立系に勝利の戦略

日経エンタテインメント!

2017/3/2

 第89回アカデミー賞の作品賞を競った『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』。最後は大逆転で『ムーンライト』が受賞したが、いずれも芸術性や革新性で群を抜いた作品であることは間違いない。この2作品を製作や配給したのは、いずれも独立系とよばれる映画会社。メジャースタジオにはない独自のカラーで、クオリティーの高い作品を送り出している。それぞれの特徴や戦略を紹介しよう。

『ラ・ラ・ランド』(公開中/ギャガ、ポニーキャニオン配給)EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate. (c) 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

■ミニメジャーとも呼ばれる独立系最大手

 『ラ・ラ・ランド』を製作したサミット・エンタテインメントは、1991年に設立され、『トワイライト』シリーズの大ヒットで知られる。2012年にライオンズゲートに4億1250万ドルで買収された。同社の傘下に入ってからも、サミットレーベルで製作を続けている。

 親会社にあたるライオンズゲートは76年に設立された株式上場企業で、『ソウ』シリーズや『ハンガーゲーム』シリーズの大ヒットで知られる新興勢力だ。だが、近年はヒット作が減っており、昨年から体制を刷新して復活を期していた。その最初のラインナップである『ラ・ラ・ランド』が大ヒットして勢いづき、映画業界では再び注目を集めている。

 詳しく見ていこう。ライオンズゲートは『マッドメン』『オレンジ・イズ・ニューブラック』などのテレビドラマも製作し、1万6000タイトルの映画とテレビドラマのライブラリーを所有する。買収に積極的で、12年にサミット、16年に有料チャンネル「Starz」を44億ドルで買収した。ウォルト・ディズニーや20世紀フォックスと同様、映画会社の枠を超えた複合メディア企業だ。

 映画部門では16年に24本を配給し、年間興行収入シェアは5.8%。ハリウッドメジャー6社中6位のパラマウントの7.7%に次ぐ興行成績。独立系としては最大手で「ミニメジャー」と呼ばれることもある。

 米国ではライオンズゲートが『ラ・ラ・ランド』を配給した。配給作品が作品賞にノミネートされるのは、『クラッシュ』(05年)、『プレシャス』(09年)に続き3度目。今年のアカデミー賞では『ラ・ラ・ランド』のほかにも『ハクソー・リッジ』『最後の追跡』が作品賞にノミネートされた。

■監督の才能を信じて巨額の製作費を投入

『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督

 『ラ・ラ・ランド』製作のキーマンはパトリック・ワックスバーガーだ。93年にサミットを共同で設立。12年にサミットがライオンズゲートに買収されてからは、サミットと共にライオンズゲート・モーションピクチャー・グループの共同会長を兼ねている。

 ワックスバーガーは、サミット在籍時の07年に『トワイライト』の原作権をいち早く獲得。08~12年にかけてシリーズ5作を製作し、全世界で33億ドルを超す興収をあげる大ヒットとなった。ライオンズゲートでは『ハンガーゲーム』シリーズの製作を統括した。

 『ラ・ラ・ランド』の製作にあたり、ハリウッド・レポーター紙のインタビューでワックスバーガーは「リスクのない映画製作など存在しない。(青春ダンスムービー)『ステップ・アップ』シリーズを製作した経験からいえば、良いミュージカル映画は低予算では製作できない」と答えている。

 そして『セッション』で脚光を浴びたとはいえ、興行的には実績のないチャゼル監督の才能を信じ、『ラ・ラ・ランド』の製作費を『セッション』の10倍となる3000万ドルに増やした。そしてベテランプロデューサーのマーク・プラットを起用。ブロードウェイのミュージカル劇『ウィキッド』やミュージカル映画『イントゥ・ザ・ウッズ』などを手がけてきた彼のノウハウを『ラ・ラ・ランド』に投入した。

 この判断が当たり、米国で『ラ・ラ・ランド』は大ヒット。興収は1億4100万ドル(2月26日時点)。『シカゴ』の記録(1億7070万ドル)を抜き、ミュージカル映画最大のヒット作になりそうだ。

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