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疲れの原因は脳の疲労 ミトコンドリアが「さびる」

日経ヘルス

2017/3/26

(イラスト:sino)
日経ヘルス

 「体が疲れている」と感じていても、その疲れの正体は、実は「脳の疲れ」だという。仕事や運動などで疲労を感じるのは、自律神経の中枢と呼ばれる部分で、生体アラームとして疲労が体に現れる。どのようにケアすれば効率よく脳の疲れが取れるのか。最新情報を3回に分けて紹介する。まずは基礎知識について解説しよう。

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 デスクワークをすると目が疲れたり、肩が凝る。ジョギングやサイクリングをすれば足や腰の筋肉が痛くなる。実はどちらも「脳が、“これ以上仕事や運動などの作業を続けると体に害が及ぶ”という警報(生体アラーム)として疲労を感じている」と東京疲労・睡眠クリニックの梶本修身院長は解説する。

 「疲労とは、医学的には“痛み”や“発熱”と並ぶ生体アラームの一つ。だから運動後の疲労も、そのほとんどは脳の疲れから来ている」(梶本院長)。運動後の筋肉疲労が“脳の疲れ”からというのはにわかには信じがたいがどういうことだろうか。

 梶本院長がリーダーを務めた産官学連携のプロジェクトで、96人の健康な人を対象に、運動やデスクワーク時にどのくらいの疲労が生じているかを計測する負荷試験を行った。すると自転車こぎやジョギングなどの有酸素運動を4時間行った程度では、筋肉はほとんどダメージを受けないことがわかった(ウサギ跳びやスクワットのような筋肉を激しく傷める運動は除く)。

週末に出かけたり、熱いお風呂に入ったり、仕事帰りに体を動かしたり……。こうした行動は、仕事などで脳(自律神経)が疲れているところに、さらに自律神経を疲れさせることになり、疲労が蓄積する要因になる

■自律神経の中枢の細胞が傷つくと“疲労”になる

 疲れるのは脳のなかでも“自律神経の中枢”と呼ばれる視床下部と前帯状回という部分だという。「自律神経は、呼吸や消化、血液循環、心拍数といった生体機能を調整しており、睡眠中や安静中でも、生きている限り24時間働き続けている。運動を始めると、自律神経の働きで数秒後には心拍数が上がり、呼吸が速くなり、汗をかく。これを運動している間、休むことなく制御している。だから運動をすると、生体のコントロールタワーである自律神経が最も疲れる」と梶本院長は説明する。

仕事や運動をすると、筋肉や自律神経の中枢にある細胞のミトコンドリアが多くの酸素を取り込み、同時に活性酸素を発生させる。すると思考力の低下や頭痛、肩こり、目がかすむなどの症状が現れる。脳が生体アラームを発して休息させようとしているのだ(イラスト:三弓素青)

 自律神経は生体機能を維持するために常に働いている。そのため酸素の消費量が非常に高く、大量の活性酸素が生じる。「脳内で発生した活性酸素は、神経細胞を攻撃する。具体的には細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアを傷つけ(酸化させ)、さびつかせてしまう。この“さび”が疲労の正体で、さびにより自律神経の機能が低下した状態が“疲労”、さびがこびりついて取れなくなった状態(元に戻らなくなった状態)を“老化”と呼ぶ」と梶本院長。生じた活性酸素は、こびりついてしまう前に取り除くことが大切なようだ。

細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアは、酸素の消費量が高いので活性酸素が生じやすく傷つきやすい。最もその影響を受けるのは、図のような生体機能を維持するために休みなく働いている自律神経の細胞だ(イラスト:三弓素青)
梶本修身さん
 東京疲労・睡眠クリニック(東京都港区)院長。大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授。産官学連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。著書に『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)ほか。
倉恒弘彦さん
 関西福祉科学大学健康福祉学部学部長(大阪府柏原市)、大阪市立大学医学部客員教授。東京大学大学院特任教授。「慢性疲労症候群の病因病態解明と画期的診断・治療法の開発」(厚労省研究班)の代表研究者を務めるなど、同疾患の世界的研究者。

(ライター 渡邉由希、構成:日経ヘルス 羽田光)

[日経ヘルス2017年4月号の記事を再構成]

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