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睡眠

歯ぎしり治療の成功例 「マーキング作戦」

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/3/21

 歯を食いしばる力はかなり強く、目が覚めているときに最も強くかんだ時の20%以上、通常の食事で噛んだ時の2倍以上の圧力が歯にかかると言われている。そのため、歯の硬度が低下する中年以上になると、歯ぎしりのために歯根が割れてしまうこともある。

■実は歯ぎしりは子供に多い

 王貞治氏も現役時代は速球を撃ち返すために歯を食いしばるせいで、奥歯がボロボロだったそうだが、似たような苦行を毎晩のように経験している人がいるのだ。歯が割れるまでいかなくても、歯ぎしりのために顎に負担がかかり、顎関節が痛む、鳴る、頭痛や肩こりがひどい、などの症状に悩む人は少なくない。

 意外に感じるかもしれないが、実は歯ぎしりは子供に多い。上下の前歯が生えてくる生後10カ月くらいから歯ぎしりが始まり、乳幼児ではなんと約半数でみられる。可愛い乳歯なのでさしあたり「キュッキュッ」ってな感じであろうか。成長とともに減って、小学生では10~20%程度、成人で5%程度、高齢者で2%程度にみられる。こう考えると歯ぎしりも若さのバロメーターのように思えるから不思議である。

 歯ぎしりはこんなにもポピュラーな症状だが、原因はよく分かっていない。口腔内炎症などの刺激や不正咬合(かみ合わせの悪さ)などが誘因になるとも言われてきたが、最近の調査では関連性が疑われている。

 睡眠ポリグラフ試験を行うと、何らかの原因で睡眠段階が浅くなるタイミング(覚醒反応)で歯ぎしりが出ることが多い。そのため歯ぎしりの原因のひとつとして覚醒反応を増加させるストレスが疑われている。ストレスを感じていると睡眠中でも寝返りや物音など些細な刺激で覚醒しやすくなるため覚醒反応が増加する。その結果、大脳の覚醒レベルが上がった時に下顎を司る運動ニューロンが活性化するなどの仮説が提唱されているが、なぜよりによって下顎がターゲットになったのか? などの疑問も含めてそれ以上の神経メカニズムは明らかになっていない。

 心理テストの結果などからも、ストレスを感じやすい人に歯ぎしりが多いのは間違いないようだ。イライラや不安が高じると日中の歯がみとともに、夜中の歯ぎしりも悪化する人がいる。実際、河北学部長も「したいことをし、言いたいことを言っている割には屈託の多い人」とのことで、傍若無人、唯我独尊のように見えて、思いのほかナイーブな性格らしい。歯がみ、歯ぎしりが出るのもむべなるかな。

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