輸入車首位のメルセデス 「3冠」狙う地道戦略
メルセデス・ベンツ日本は先ごろ、東京・六本木にあるメルセデス・ベンツ コネクションで2016年の総括と2017年の事業方針を発表した。
SUVイヤーは成功
世界的には販売台数が初の200万台を超え、6年連続で過去最高を記録。日本でも4年連続で過去最高を更新し、「ドイツの技術者であるカール・ベンツが自動車を生み出してから130周年、そして、日本法人創設30周年の節目の年にふさわしい結果を残せた」(同社上野金太郎社長)という。
日本でのメルセデス・ベンツ車の販売台数は前年比3.4%増となる6万7378台で、2年連続輸入車1位となり、同社として世界で5番目の市場に成長したという。この好調を支えたのが新車効果で、「SUVイヤー」と銘打ち積極的に投入した結果、SUVは販売台数全体の20%を超えた。クーペやカブリオレといった特別なモデルの強化は販売台数への貢献度は高くはないものの、ブランドのイメージを高める存在として大切な役割を持つという。さらに看板商品の一つである「Eクラス」のフルモデルチェンジが、販売台数の伸びに大きく貢献したようだ。
また2015年10月にフルモデルチェンジした「スマート」は前年比350%増の4508台を販売。2015年はモデル末期で販売台数が限られていたこともあるが、フルモデルチェンジした2人乗りの「fortwo」に加え、新たに投入された4人乗りの「forfour」で新たな顧客を獲得できた効果が大きい。同社広報部によれば、fortwoとforfourの販売比率はおよそ半々だったという。
2月22日には「GLCクーペ」発表
では前年度越えを2017年の目標に掲げる同社の戦略はどうなっているのか。
上野社長によると、2017年のポイントは3点あるという。
(1)現在のメルセデス・ベンツとスマートを合わせた7万台を、安定的に販売できる体制づくり
(2)新ショールームを例年の2倍にあたる約30店舗オープン(改装・移転を含む)
(3)オールニューモデルを含め、5車種以上の新型車を投入
新型車の第一弾として、2017年2月22日にはミドルサイズプレミアムSUV「GLC」の派生モデル「GLCクーペ」を発表する予定だという。このほか、Eクラスの派生モデル「Eクラスクーペ」や新技術を投入したモデルの年内発売を計画。また、2017年はメルセデス・ベンツの高性能モデル「メルセデスAMG」の50周年記念イヤーであることから、メルセデスAMGシリーズの新モデルを発表するなどAMGの展開、活動を強化する予定だという。
何をするかについてはまだ公表されていないが、今年1月にオープンしたばかりのメルセデスAMGだけを売る世界初の「メルセデスAMG東京世田谷」も、この記念イヤーに大きな役割をはたすだろう。なお既にこの店舗では数台の注文があったというから驚きだ。
スマート専売拠点を京都にオープン
スマートでも昨年越えを目指し、世界で展開中の「スマートシティプロジェクト」を日本にも導入。日本初となるスマート専売店を年央に京都にオープンする予定だ。単なる販売拠点としてだけでなく、京都府と連携した地域密着型の取り組みも行う計画があるという。
このほか顧客満足度を高めるためのサービスを強化。車に詳しいスタッフを全拠点に配置するなどしてアフターセールス事業に注力することは、顧客満足度アップには欠かせないと考えているようだ。
2017年も攻めの姿勢を崩さないように見えるメルセデス・ベンツは、エントリーとして298万円の「Aクラス」から幅広く用意しているが、販売の中心はやはり「Cクラス」以上の高額なモデルだ。それだけにいたずらに数を追うことよりも基盤整備と安定した販売台数を確保し続けるために、戦略を強くアピールするのだろう。
現在、日本には68万台を超えるメルセデス・ベンツが走っており、これらのアフターサービスも大切なビジネスと考え、2016年よりタイヤビジネスにも参入。メンテナンス部品やオリジナルアクセササリー、タイヤなどを含めたアフターセールス事業は、前年比9%増の成長を見せる。一方で現在、主要モデルは新世代のものが国内でもそろった状態で、2017年は大きなけん引役となりそうな新型車の導入はないと思われる。そう考えると現状維持は決して楽ではないだけに、輸入車ナンバーワン三冠が取れるのか、気になるところだ。
(ライター 大音安弘)
[日経トレンディネット 2017年2月8日付の記事を再構成]
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