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北極の氷が消える? 2016年は未曾有の異常

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/2/25

ナショナルジオグラフィック日本版

ノルウェーのスバールバル諸島で、みずからが置かれた状況を考えているホッキョクグマ。ここ30年で、北極の氷は厚さ、範囲ともに減り続けている。(PHOTOGRAPH BY RALPH LEE HOPKINS, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 北極の冬は長く、太陽も昇らない。通常、気温はマイナス20℃を下回り、海は厚い氷に覆われる。だが、2016年の北極は異常だった。あと1カ月で真冬という11月中旬になって海氷が解け始め、5万平方キロほどの氷が失われた。この時期では未曾有の規模だ。さらに12月末には、北極点付近の気温が0℃近くまで上昇した。(参考記事:「北極海で過去最大の海氷融解、メカニズム明らかに」)

 「私が北極の気候観測を始めたのは1982年。大学院生になったばかりの頃でした」。米国コロラド州ボルダーにある国立氷雪データセンターの所長、マーク・セレズ氏はそう話す。「長いこと北極を観測してきましたが、こんなことは初めてです」

■北極の氷は消えるのか

 このような極端な状態は、私たちの未来にどのような影響があるのだろうか。温室効果ガスの排出によって、北極の氷はなくなってしまう運命にあるのだろうか。

 北極の氷の量が一番少なくなるのは、氷が解ける時期が終わりを告げる毎年9月だ。冬が始まれば再び氷の量は増加するが、セレズ氏によれば、9月時点の氷の量は10年ごとに約13%ずつ減少している。

 今回の気温上昇と季節外れの氷の融解は前例のないことかもしれない。しかし、予測できなかったことではない。地球温暖化が着実に進み、それに自然の変動が重なれば、このようなことも起きる可能性があると予想されていた。

 だが、これは北極の氷がなし崩し的に消えてしまうという予兆なのだろうか。気象学者たちは、地球温暖化によって北極の夏の氷が消え、二度と元に戻らなくなることを恐れていた。理論的には、北極を覆う氷の面積が少なくなれば、海洋に吸収される太陽の熱が多くなり、大気中に反射される熱は少なくなる。海が多量の熱を吸収すれば、氷が形成されなくなり、北極に氷のない夏が訪れる。つまり、北極は「臨界点」を迎えることになる。(参考記事:「北極点がヨーロッパ方向へ急移動と研究発表」)

■氷は抵抗する

「北極の海氷面積」9月の平均値。単位は100万平方マイル(約260万平方キロ)。(SOURCE: NATIONAL SNOW AND ICE DATA CENTER)

 だが、2011年に発表されたある論文がその議論に一石を投じることになった。執筆者は、ドイツのマックス・プランク気象研究所の4人の研究者たち。論文で、北極の氷には「臨界点はない」としている。彼らが行ったシミュレーションによれば、夏に氷がなくなっても、冬になると海洋に蓄えられていた熱が大量に失われるため、氷が急速に成長し、夏が終わるまで解けずに残るものもあるという。それを裏付ける観測データもある。2007年9月には、記録的に海氷が少なくなったものの、その後かなり持ち直している。

 論文の著者の1人であるディルク・ノッツ氏は、「北極の海氷は失われる傾向にあります。しかし、信じがたいかもしれませんが、海氷はそれに対して驚くべき抵抗を行っているのです」と話す。「たとえば、現在の北極には巨大な開水域があり、冷たい冬の大気に直接接しています。昨年の12月は記録的に高い気温でしたが、今は北極の大部分で気温が下がっています。そのため、開水域では海洋から大気中に熱が大量に放出されます。氷に覆われていた場合よりも、はるかに大量の熱が失われるのです。ここ数カ月で起きたような極端な事態が何回か起きたとしても、それを埋め合わせることができるくらい氷が急成長するのではないかと考えています」

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