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いい運用者は手数料の低さにこだわる(窪田真之) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

 

2017/2/14

投資信託によって手数料はさまざまだ

「いいファンドマネジャーは運用にかかる手数料やコストを徹底的に低くすることにこだわる」

 あるセミナーで講演後、個人投資家の方から以下の質問をいただきました。「ブラジルに投資する投資信託を持っているのですが、まだ持っていていいですか?」。私が「どのようなファンドですか? 株ですか、債券ですか、通貨選択型ですか?」とお聞きすると、「よくわからないけど、ブラジルに投資するファンドです」とお答えになりました。

 私は回復基調にあるブラジルの経済状況や投資にはリスクとチャンスが共存していることを説明し、「手数料の高いファンドなら、長期投資に向かないのでいったん売って、手数料の低いファンドに乗り換えた方がいいですよ」と申し上げました。

 その上で「信託報酬、つまり、毎年ファンドから引き落とされる手数料は何%ですか?」とお聞きしました。これに対し、個人投資家の方は少し困った顔をして「手数料がいくらか見たことがない。どこでわかるのですか?」とおっしゃったのです。

■手数料も商品内容も知らない人も

 日本には手数料率がきわめて高いファンドが多数あり、それが毎月分配型の人気ファンドになることもあります。高い手数料と知った上で投資しているのなら、それもありだとは思いますが、手数料はもとより、商品内容さえ知らないで投資している人が多いことに驚きます。

 今の時代、金融機関は投信を販売するとき、目論見書を使って商品内容を説明しなければいけません。手数料も目論見書のわかりやすいところに大きな文字で表示しなければならないルールになっています。しかし、説明を受けても十分理解しなかったり、忘れてしまったりする人が多いようです。

 自分の大切なお金を運用するのに、これは一体どうしたことでしょう? 特に、多くの人が手数料について無関心なのは不思議でなりません。

 私は25年間、年金や投資信託のファンドマネジャーをやっていました。そのときいつも残念に思っていたのは、私が運用していた投信の手数料がとても高かったことです。個人のような少額投資では約3%の販売手数料がかかる上に、1年間で約1.6%の信託報酬が差し引かれていました。

 つまり、個人投資家の方は初年度には4.6%もの手数料が差し引かれていたのでした。私はベンチマークである東証株価指数を大幅に上回るリターンを出していましたが、その成果のかなりの部分が手数料に消えて、投資家まで届かなかったことが残念でした。

 私が日本株のファンドを運用する際に気をつけていたことがあります。いい銘柄を見つけて、いいタイミングで売買するように努力するのはもちろんですが、売買にかかるコストを低く抑えることも徹底していました。

 大型株の売買ではバスケット売買(20~30の銘柄の売買をまとめて発注すること)で、3社以上の証券会社から取引条件を示してもらい、最も安いレートをオファーしてきたところに発注していました。通常なら、実質的な手数料率は0.15~0.25%くらいに抑えられました。

■運用リターンは結局、コストを差し引いたもの

 小型株を買うときは、自らの注文で株価を上昇させながら買う、あるいは株価を下落させながら売ることにならないように、対象銘柄の1日の売買高の原則10%以下しか発注しないようにしていました。投信のリターンは結局のところ、運用にかかるコスト(売買にかかる手数料および売買インパクト)を差し引いたものだからです。

 投資判断の精度を上げることと、ファンドから差し引かれる売買手数料を小さくすることは、どちらも同じように重要でした。私がファンドマネジャーをしていた25年間には、成績不振で辞めざるを得なくなった同業の人たちをたくさん見てきました。

 長くファンドマネジャーとして生き残った人の共通点が2つあります。ひとつは毎日、運用のことを考えるのが好きで、運用を楽しんでいる人。もうひとつは運用にかかる手数料やコストを徹底的に低くすることにこだわる人です。手数料に無関心の人に、いいファンドマネジャーはいませんでした。個人投資家の方は手数料にもっと関心を持つべきだと思います。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。

窪田 真之(くぼた・まさゆき) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行、91年ニューヨーク駐在。92年住銀投資顧問(当時)日本株ファンドマネジャー、99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年から所長兼務。大和住銀投信投資顧問では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。著書に「投資脳を鍛える!株の実戦トレーニング」(日本経済新聞出版社)など多数。

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