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津田大介も乗りたい! ぶつからないロボ、近未来の足

2017/2/22

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター・fuRoが作ったパーソナルモビリティー「ILY-A(アイリーエー)」

 近未来の移動ツールとして注目されるパーソナルモビリティー。ロボティクス業界の第一人者・千葉工業大学「未来ロボット技術研究センター・fuRo」所長の古田貴之氏が作った「ILY-A(アイリーエー)」は、なんと4つのスタイルに変形するという。いったいどんなツールなのか――トランスフォーム好きな津田大介氏が、試乗してその可能性を探った。

■これからの日本でパーソナルモビリティーはますます重要に

 シートにまたがって座り、ハンドルを握って、指でゲーム機の丸いアナログスライドスティックのようなものを行きたい方向にスライドさせる――ILY-Aはそれだけで驚くほどスムーズに前進しはじめた。スティックを右や左に動かすとその通りに進む。指を離せば、すぐ止まる。自動車のブレーキ、アクセルといった操作よりずっとシンプルかつ直感的に動かせるし、自転車のペダルを踏む力もバランスをとる必要もない。しかも、自分の足で歩くより速く、疲れずに遠くまで行ける。これがパーソナルモビリティーの便利なところだ。

 最近、こうしたパーソナルモビリティーが注目されている。パーソナルモビリティーとは、1人乗りのコンパクトな移動支援ツールで、たとえば、セグウェイや、2016年12月に始まった羽田空港でのロボット実証実験に参加しているホンダのUNI-CUBβ(ユニカブ ベータ)やA.M.Y.クリエイティブのINMOTION R1EX(インモーション アールワンイーエックス)などが、それにあたる。

 こうした乗り物は、自動車離れした若者にとって魅力的だ。スマートな移動ツールとして気軽に乗れるし、都市に似合う。駅とイベント会場間の移動や、観光地での貸し出しなどにも良さそうだ。さらに、小売店の注文の配達や、医療関係者や介護ヘルパーの地域の巡回、高齢化やさまざまな事情で自動車に乗れなくなった場合の移動手段などなど、利用シーンや新しいサービスがどんどん思いつく。ようするに、従来の乗り物では生まれなかったサービスや、生活を変化させるイノベーションが起きる大きな可能性を秘めている――ただし、それは公道で乗れればの話だ。

新しい移動ツールであるパーソナルモビリティーの可能性を探りたい津田大介氏

 これらのパーソナルモビリティーは何年も国土交通省を中心に車両規制緩和や法整備が検討されているのだが、まだ公道を自由に走ることは許可されていない。イベントや茨城県筑波研究学園都市内のつくばモビリティロボット実験特区や、愛知県豊田市、臨海副都心などで実証実験が行われているが、乗れるエリアは限定されている。

 さらに、自動車といえば誰もが4つのタイヤのついたクルマの形を思い浮かべ、子どもが絵を描いてもそんなに差はない、でも、まだ、パーソナルモビリティーと聞いてすぐに思い浮かべるスタンダードなデザインがない。スケートボードタイプや立ち乗り型、座れる電動車イス、そして軽自動車よりさらに小型の自動車型まで、乗り方も利用目的もさまざまだし、機能も発展途上だからだ。

 そんな中、千葉工業大学の「未来ロボット技術研究センター・fuRo」所長の古田貴之氏がパーソナルモビリティーを作った話を聞いた。古田氏は、独立行政法人科学技術振興機構(北野共生システムプロジェクト)で、ロボット研究チームのリーダーを長らく務めたあと、千葉工業大学に移籍してロボット開発研究を続けてきたロボティクス業界の第一人者。古代生物から未来の乗り物を模索するハルキゲニアプロジェクトや、福島第1原子力発電所内の探査を行った原発対応版Quince(クインス)の開発などでも知られているが、彼が率いるfuRoが研究開発して作ったツールが、すごくロボット的な“移動する機械”と聞いて興味を持った。

未来ロボット技術研究センター・fuRo所長の古田貴之氏
古田貴之(ふるた・たかゆき)氏
未来ロボット技術研究センター・fuRo所長。1968年、東京都生まれ。少年時代に脊髄の難病にかかるが奇跡の復活をとげ、96年青山学院大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士後期課程中途退学後、同大学理工学部機械工学科助手。2000年、博士(工学)取得。同年、(独)科学技術振興機構のロボット開発グループリーダーとしてヒューマノイドロボットの開発に従事。03年6月より現職。

 古田氏は、もともとご本人が車イスに乗っていたこともあり、全方位移動型電動車イスなども手掛けるなど、ハンディキャップがある人の移動手段に対するこだわりがある。その古田氏が、2015年3月に自動車部品メーカーのアイシン精機と産学協同で作り上げたのが、トランスフォーム(可変)するパーソナル三輪モビリティーの「ILY-A(アイリーエー)」。一目見て、乗ってみたいと思った。

 なにしろ、過疎化が進む地方ではこれからどんどんこうした移動手段のニーズが高まるだろうし、現在も高齢者が出歩くためのツールの需要が高まっている。ILY-Aみたいなパーソナルモビリティーがあれば、もっとアクティブに動けるようになるし、人々のいろいろなコミュニティーが変化するはずだ。もちろん“移動する機械”だけで変わるわけではないだろうけれど、そうした近い将来を想像させるツールの第一号なのではないか。パーソナルモビリティーのスタンダードになるかも、という期待を胸に、千葉工業大学を訪れた。

2015年3月にプレス発表されたILY-A。4つのスタイルに変形し、携帯性にもすぐれ、「知能化安全技術」「操縦支援機能」「知能化自己診断監視機能」を搭載したパーソナルモビリティー

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