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Xperia生みの親が助言 オンキヨー音楽スマホの挑戦

佐野正弘のモバイル最前線

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NIKKEI STYLE

音響機器メーカーのオンキヨー&パイオニアイノベーションズが、2017年1月26日に同社初となるスマートフォン(スマホ)「GRANBEAT」の発売を発表した。ハイエンドの音響機器を提供するメーカーだけあって、GRANBEATは本格的なデジタルオーディオプレーヤーをそのままスマホにするという、従来にはない発想で作られた。なぜこのようなスマホが生まれたのだろうか。

売れ筋のスマホとは全く異なるサイズとデザイン

これまでにもハイレゾ音源の再生に対応し、音響技術に力を入れるなどして高い音質を売りにしたスマホはいくつか存在したが、それらはあくまで、スマホという枠組みの中で音響技術を強化したにすぎない。だがGRANBEATは、あえて言うならば最近増えているハイレゾ対応の高性能なポータブルタイプのデジタルオーディオプレーヤー(DAP)に、スマホの機能を搭載したものとなっているのだ。

実際、GRANBEATは外観からして、スマホとしての持ちやすさなどはあまり考慮されておらず"ごつい"デザインだ。スペックを見ても、厚さ11.9mmと、アップルの「iPhone 7」の厚さ(7.1mm)と比べかなり分厚いし、重量に至っては234gと、やはりiPhone 7(138g)と比べ100g近く重い。デザインも角ばったスクエアなもので、最近のスマホでトレンドとなっている、角に丸みを帯び手にフィットするデザインとは全く異なる。

オーディオ関連機能は充実している。例えばGRANBEATには、2.5mmのバランス出力と3.5mmのアンバランス出力、2つのヘッドホン端子が備わっており、バランス出力端子に接続した場合は、パワフルで臨場感のあるサウンドが楽しめる「BTL駆動」や、安定したサウンドを実現する「ACG駆動」などが利用できる。また、ワイヤレスでもハイレゾ相当の品質で楽曲再生が可能な「aptX HD」に対応しており、Bluetoothヘッドホンを使った場合でも高品質なサウンドを楽しめる。

さらに左側面にはボリューム調節用のダイヤル、右側面には楽曲の再生やスキップなどができるボタン、そして誤操作を防ぐホールドスイッチを用意。一般的なスマホとは大きく異なり、音楽再生に特化したインターフェースを備えている。ハード面だけでなく、内蔵の音楽プレーヤーアプリもGRANBEAT専用のものが用意されており、ハイレゾ音源の再生ができるのはもちろん、細かなカスタマイズができるイコライザーを搭載し、楽曲やアーティスト、さらには音の嗜好に応じたチューニングも可能だという。

音質重視でノイズを徹底排除した基板設計

GRANBEATの音にこだわる姿勢は、内部構造にも表れている。音質を高めるため、ハイエンドオーディオに用いられる音響チップを搭載したというスマホはこれまでにもいくつか存在した。だがGRANBEATは良質な音を実現するため、設計自体そのものが従来のスマホとは大きく異なっているのだ。

特に最近のスマホは、バッテリー容量を増やしながらも薄型・軽量に仕上げることを重視していることから、スマホを制御する基板が占める面積は、非常に小さくなっている。さらにその中でサウンド関連のパーツが占める面積は豆粒以下で、基板から発するノイズの影響を受けやすい。どうしても音質が犠牲になってしまうという。

それに対し、GRANBEATはノイズを徹底的に排除するため、コンポーネントオーディオと同じ発想で開発している。具体的には、Androidや通信を制御するための基板とは別に、オーディオ専用の基板を用意し、2つの基板を離して配置しているのだ。これによってスマホの制御部分から発生するノイズの影響を受けないようにし、さらにオーディオ基板側にも独自の技術を投入することで、ノイズを極限まで抑えた。

スマホである以上、通信時の電波によるノイズで、音に影響が出てしまうという問題がある。そこでGRANBEATではさらに、オンキヨーが特許を出願しているという、独自のシールド技術を採用。このシールドで基板を覆うことにより、通信機能がオンでもオフでも変わらないオーディオ性能を実現できたとしている。

ちなみに通常、スマホで一番大きな部品はバッテリー。GRANBEATのバッテリー容量は、3000mAhと大きめではあるが、最近のスマホの傾向からすると、とても大きいというほどではない。GRANBEATのサイズが大きいのは、ノイズを徹底的に排除するなどオーディオ機能にこだわった設計思想が、大きく影響している。

ストレージにもこだわり

では、スマホとしてのGRANBEATの性能は、どのようなものなのだろうか。ディスプレーは5.0インチ、チップセットにはミドルハイクラスの性能を持つSnapdragon 650(MSM8956)を採用。メモリーは3GB、背面のカメラは16メガピクセルと、十分な性能を備えたスタンダードな内容となっている。

一方で、GRANBEATならではのこだわりが見られるのがストレージだ。GRANBEATは標準で128GBのストレージを搭載しており、さらに256GBの容量に対応したmicroSDスロットも用意していることから、それらを全て使用すれば384GBの容量を確保できる。ハイレゾ音源はデータ容量も大きいだけに、ストレージをいかに重視しているかが分かる。

さらにもう一つ、特徴的なのは3G・4GのデュアルSIM・デュアルスタンバイ(DSDS)に対応していること。DSDSに対応していると、2枚のSIMを挿入し、回線の待ち受けが同時にできるほか、一方のSIMを通話、一方のSIMをデータ通信用にと、使い分けることも可能になる。通話には定額通話ができる大手キャリアのSIM、データ通信には料金が安いMVNOのSIMを挿入して利用し、通信費を安く上げることも可能だ。

3G・4GのDSDSは最近のSIMフリースマホのトレンドといえるもので、オンキヨーがスマホ初参入ながら、しっかりトレンドを押さえてきたことには驚きがある。しかもDSDS対応スマホの多くが、片方のSIMスロットがmicroSDスロットを兼ねているため、2枚SIMを挿入するとmicroSDが使えなくなるのに対し、GRANBEATは独立したmicroSDスロットを用意し、DSDSと大容量を両立させている。GRANBEATがスマホとしての使い勝手にこだわっていることも、理解できるだろう。

ちなみにオンキヨー&パイオニアイノベーションズは、2015年よりAndroidを搭載したポータブルDAP「DP-X1」「DP-X1A」など開発しているが、携帯電話としての機能を備えたスマホの開発経験はない。そこでGRANBEATの開発に当たっては、「arrows」シリーズなどのスマホで知られる富士通コネクテッドテクノロジーズの協力を得ているとのこと。同社の協力が、スマホとしての性能の充実にも影響している。

誕生の裏に「Xperiaの生みの親」の助言あり

しかし一体なぜ、オーディオメーカーであるはずのオンキヨー&パイオニアイノベーションズが、スマホを開発するに至ったのだろうか。そこにはポータブルDAPの変化が大きく影響しているようだ。

代表取締役社長の宮城謙二氏によると、携帯型音楽プレーヤーは1980年代に登場したソニーの「ウォークマン」が市場を作り上げ、90年代に入りパソコンから音楽データを転送して音楽を聴く、いわゆる「MP3プレーヤー」が登場したことでデジタル化が進行したという。その後アップルの「iPod」や「iPhone」などが登場することで、ポータブルDAPの利便性はどんどん高まっていったが、利便性が高まるにつれ、その利便性実現のために音質が犠牲になっていったと、宮城氏は話す。

そこで同社では、利便性よりも音質にこだわり抜いたスマホを作りたいと考え、Androidを搭載したハイレゾ対応ポータブルDAPを開発し、そこからスマホへとステップアップしていったとのこと。だがポータブルDAPをスマホらしい形に落とし込んでいくのではなく、そのままスマホにしてしまうという大胆な製品が誕生したのには、ある人物の助言が大きく影響しているようだ。

その人物とは、現在楽天でMVNOによる通信サービス「楽天モバイル」の事業に携わっている、楽天モバイル事業 チーフプロダクトオフィサーの黒住吉郎氏である。黒住氏はかつてソニーモバイルコミュニケーションズで端末開発を統括しており、音楽プレーヤーを搭載した携帯電話「ウォークマンケータイ」や、現在も人気を博すスマホ「Xperia」シリーズなどを生み出した人物でもあるのだ。楽天モバイルは「GRANBEAT」をセットスマホの一つとして販売する。

その黒住氏は、昨年米国で実施されたIT・家電関連の総合見本市イベント「CES」でオンキヨー&パイオニアイノベーションズの関係者と知り合い、同社の担当者からポータブルDAPをベースとしたスマホを開発したいという相談を受けたとのこと。その時黒住氏は、「音楽を中心にするという軸だけは絶対に外してはいけない。そうでなければ魅力は半減し、買ってもらえなくなる」と助言したのだそうだ。

オンキヨー&パイオニアイノベーションズはスマホメーカーとしては新参者である。成熟したスマホ市場の中で、多少音質がよい普通のスマホを提供したとしても、市場の中に埋もれてしまう可能性が高い。ならばいっそ、従来のスマホとは全く異なるアプローチをとってでも、音質を徹底して追求するオンキヨーブランドのファンに向けたスマホを提供した方が、市場の評価を得やすいのは確かだ。

だが黒住氏は、初めてハイレゾ音源に対応したスマホ「Xperia Z2」を開発した際、発売当初にハイレゾ機能の全てを本体に盛り込むことができなかった経験を持つという。それだけに助言には、マーケット動向や戦略面に加え、黒住氏のスマホと音に対する思い入れの強さも、影響しているといえそうだ。

ここまで何度も触れている通り、GRANBEATは一般的なスマホとは全く異なるコンセプトで作られたものであるし、楽天モバイルでの販売価格も一括払いで84800円と決して安くはなく、実際に興味を持つ層は相当限られるだろう。だがスマホの没個性化が進む中、非常に特徴的なスマホを、あえて市場に送り出すというチャレンジは高く評価できるし、そうしたスマホを提供できるのも、キャリアの影響を受けることなく、メーカーが自由にビジネスできるSIMフリースマホならではだといえる。

大胆なチャレンジにはリスクも伴うが、今後もGRANBEATのように、あえて"尖(とが)った"スマホにチャレンジするメーカーが多く現れ、市場に新しい風をもたらしてくれることを期待したい。

佐野正弘(さの・まさひろ)
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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