ほれっぽく、恋人ができても飽きそう…
脚本家、中園ミホ
ほれっぽい性格に悩んでいます。カフェのイケメン店員や優しい同級生をすぐ好きになりますが、飽きるのも早く、いつも片思い止まりです。「いいな」と思う人ができても、付き合ってすぐ飽きたら申し訳ないと思い、恋人ができたことがありません。こんな私でも恋愛ができますか。(兵庫県・20代・女性)
なるほど、その感覚、わかります。のんびりお茶をしていると周りの風景が気になるもの。イケメン店員がいれば、女性の多くは気になるのではないかしら。同級生がやさしくしてくれればうれしいし、「いいな」と感じるのも自然。でも、それが「ほれっぽい」ということかといえば、ちがうと思いますよ。
恋人ができたことがないという相談者さん。いいなと思っても飽きるのが心配。だから、相手の心や肌に触れることなく、頭の中で物語を終わらせてしまっている。それは片思いでも恋愛でもない。あなたが飽きるのは、その人との仮想恋愛でしかありません。
「ほれっぽい性格」というくらいだから、きっとあなたは恋愛にあこがれている。でも、心の準備ができていないのでしょう。そう気づいているからこそ「私でも恋愛できますか」と心配しているのですよね。
心配は無用です。ためらうのは、むしろ健全。恋愛は実に恐ろしいものだからです。恋しい気持ちにかられ、その人を始終思い、触れたいと願う。恋愛は自分の命より大切な存在ができるということなのです。それゆえ、人は恋しい人のために常識や倫理を破ってしまうことがある。愛しい人を守るため、自分の命を投げ出すことさえある。本で読んだり、映画で見たりしたでしょう。恋愛は無数の悲劇として描かれてきました。
だからといって恐れず、勇気を出して飛び込んでほしいのです。恋愛の真実は結末ではなく、出会った2人が心を通わせ、もっと深く関わらずにいられなくなる過程にあるからです。
昨年大ヒットしたTVドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」はご覧になりましたか? 家事手伝いの女性が雇い主となりゆきで契約結婚し、しだいに本物の恋愛感情が育っていくという物語。現実にはあり得ないと思うかもしれませんが、似たようなきっかけは、あなたの身近にも転がっていますよ。カフェのイケメン店員に話しかけられたらどうしますか。あなたが声をかけてもいいのですよ。得意の想像力を発揮してください。
結論を言えば、あなたはいずれ本物の恋に落ちる時が必ず来ます。どんなにつらい思いをしても、苦しくても、恋愛はしないよりした方がいい。大失恋をきっかけに脚本家になった私の持論です。ある人に出会う前と後で、それまでの自分の価値観がすっかり変わってしまうことがある。だからこそ、命をかけて恋愛をする意味があると思うのですが、いかがでしょう。
[NIKKEIプラス1 2017年2月18日付]
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